衆院憲法審査会に臨む枝野幸男会長(中央)=4月24日、国会内 衆院憲法審査会の議論が少数与党下で活発化している。憲法改正に前向きな改憲勢力が先の衆院選で3分の2を下回り、反対・慎重勢力の警戒感が後退。「論憲」をアピールしたい立憲民主党が審査会の主導権を握ったことも開催頻度を押し上げている。ただ、自民、立民両党の主張は平行線をたどり、意見集約への機運は高まっていない。
「憲法の議論をしていかねばならない」。石破茂首相(自民総裁)は4月23日の党首討論で、日本維新の会の前原誠司共同代表から「憲法改正が一番大事」と迫られ、こう述べるにとどめた。
審査会の源流の憲法調査会が2000年に設置されて以降、国会では与野党対立のあおりで憲法論議が行われない時期も少なくなかった。
しかし、今国会に入ると、与野党は2月、25年度予算の衆院通過後に審査会をスタートさせ、原則毎週開催することで合意。「選挙困難事態」「参院の緊急集会」「フェイクニュース対策」など毎回のテーマをカレンダーに落とし込み、これに沿って議論を進めている。
毎週開催は「サルのやること」との批判がかつて立民から飛び出したことを考えれば、既に開催5回を数える今国会の審査会の進め方は異例だ。
背景にあるのは衆院の勢力変化だ。自民、公明両党に維新や国民民主党を加えた改憲勢力は12年以降、改憲発議に必要な衆院の3分の2を確保し続けてきたが、昨年の衆院選で割り込んだ。これを受け、改憲反対・慎重勢力に「改憲強行はなくなった」と安心感が広がったことが大きい。
さらに衆院憲法審査会長ポストを自民から奪った立民が中道路線をアピールしようと、「論憲」姿勢を強めていることも影響している。審査会長に就いた枝野幸男元代表は折に触れ、「議論は積極的に進めたい」と繰り返している。
もっとも、改憲論議は進展しているとは言い難い。改憲項目として自民が重視するのは自衛隊明記や緊急事態条項創設など。これに対し、立民は衆院解散の制約や臨時国会の召集期限明記について議論を深めるべきだとの主張で、立場が全く異なる。立民は改憲を巡るCM規制も主張している。
昨年の衆院選前、改憲勢力内では「いよいよ改憲原案づくりの段階」という声が強まったが、局面が変わった審査会の現状に「いつになったら改憲案取りまとめに進むのか」(自民の古屋圭司元国家公安委員長)と不満も漏れる。ただ、「国民の今の関心は経済対策」(自民若手)との見方も強く、改憲勢力の勢いはしぼみつつあるのが現状だ。