「格下」発言にがっかり。石破政権は国益を守れるのか?トランプ関税交渉の“危うい現状”と橋本龍太郎に学ぶ交渉術

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2025年05月20日 09:00  日刊SPA!

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写真/時事通信社
5月14日、米国は対中追加関税を145%から30%へと引き下げた。中国に押し切られた形か。背景にあるのは、習近平政権が第1次トランプ政権時から進めた“脱米国”だ。6年間で“米国以外”への輸出を1兆ドル以上増やし、食料の対米輸入比率を大幅に引き下げてきた。
また、英エコノミスト誌は、トランプ関税は米国の自損行為となり、中国に経済改革と地政学的進展の機会を与えたと論じている。トランプの保護主義や同盟軽視は中国に機会を与え、米国のアジア同盟国に対する信頼性を低下させるというわけだ。

日本は5月中に3度目の日米交渉を行う予定だが、果たして、国益にかなうものとなるのか。ノンフィクションライターの石戸論氏が、トランプ関税に対する日本がとるべき道と姿勢について提言する(以下、石戸氏の寄稿)。

◆対中関税引き下げで混乱は一旦収息へ?

 トランプ大統領が「解放記念日」と名づけた衝撃的な関税政策を発表してから1か月半、ようやくマーケットは落ち着きを取り戻してきた。特に有益だったのは、双方で高関税を掛け合ってきた米中が関税引き下げに合意したというニュースだ。まだ不透明さは残るが、誰も得しない緊張は収息の兆しが見えてきた。私も含めて新NISAで資産運用をしている人にとっても、一安心できる一報だろう。

 トランプ関税を「没落記念日」と称したのは世界的経済誌『エコノミスト』だったが、実に的確な表現だ。世界の自由貿易システムを擁護せよと主張する同誌は、論理的に失政を指摘しており、米国でも多くの学者が関税引き上げの打撃を予測していた。トランプ政権にどんな戦略があったかは定かではないが、高関税が招くのは米国内のインフレであり、結果苦しむのは国民であることに変わりはない。

◆日本は橋龍方式で臨め

 日米関税交渉の妥結は見えていないが、今の時点で自動車や鉄鋼など、日本に対するすべての追加関税の見直しを求めていく方針を捨てる必要はない。米国側は「すべての追加関税」を対象にした交渉には応じないとしているが、まだ妥協のタイミングではないということだ。トランプ関税は米国内の自動車産業にとってもメリットが少ない。今後も関税率の調整など場当たり的な対処はしてくるだろうが、自国産業に予期せぬダメージが今後も出てくる可能性は残り続ける。

 日本が今の段階で安易な妥協や譲歩をすることは、自分たちの手で繁栄を支えてきた自由貿易体制に打撃を与えるようなものだ。その意味では交渉役の赤澤亮正経済再生担当大臣が自らをトランプ氏より「格下」と称したのにはがっかりさせられた。理想を言えば、1990年代の日米自動車交渉を主導した故橋本龍太郎元首相(当時は通産大臣)が米国との決裂も辞さない姿勢で踏み込んだ交渉を続けたことを思い起こしてほしいものだが……。石破政権は外交交渉で国益を守れるのか。まだ危うさが先行している。

このニュースに関するつぶやき

  • 日本には米国債という切り札がある。これを大量売りすればアメリカはかなり大きなダメージとなる。それをチラつかせながら、中共排除して行け。
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