「私が親なら絶対反対」重度障害を持つ男性と結婚した“嫁”がアンチの声に負けず発信し続けるワケ

13

2025年05月24日 08:00  週刊女性PRIME

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

週刊女性PRIME

今年の4月に撮影したフォトウエディング(本人提供)

「夫は先天性の難病による重度の身体障害者です。筋力が徐々に衰えていく、脊髄性筋萎縮症(SMA)という難病を生まれながら抱えています。今では、右手の人さし指と親指が数センチ、左手の人さし指がちょっと曲がるくらいで、ほかの筋肉はほとんど動きません。食事や排泄など24時間、ヘルパーさんに介助してもらいながら、車いすで生活しています」

 と話すのは、愛知県在住で訪問看護師として働くゆかさん(34)。夫である松元拓也さん(36)と2年前に結婚し、インスタでは「重度障がい者の嫁」というアカウント名で、夫婦のありのままの日常を発信している。

小児期に難病を発症。指先しか動かせない

 脊髄性筋萎縮症は、年齢を問わず発症するが、乳児から小児期では約10万人に1〜2人の割合で罹患する。日本における患者数の推計は1400人ほどといわれており、症状の重症度や発症時期によって5つのタイプに分類される。

「赤ちゃんのうちから高度な医療ケアを必要とする場合は、最も重篤な0型や1型タイプに分類されます。夫は、1歳ごろ異変が出始め2型と診断されました。

 新生児が受ける先天性疾患を探す検査で、今では早期発見ができるようになり、2017年に特効薬ともいえる新薬が日本で認可されたことで、幼少期に見つかれば普通に歩いたり、座ったりできるようになることも。夫の場合、半年に一度病気の進行を抑えるため、新薬を投与しています」(ゆかさん、以下同)

 小児期に診断を受けたとき“20歳まで生きられない”と言われ、今では全身の筋肉が萎縮してしまった拓也さんだが、医療の進歩により進行を食い止め生活しているのだ。

 そんな2人は訪問看護の利用者と看護師として出会った。

「夫は食べ物を飲み込んだり痰を吐き出したりするのに必要な筋力も弱まっていて、肺炎などの合併症を防ぐためにも痰を吸引するといった医療的行為が必要。定期的に自宅での訪問看護を利用していて、そこで出会ったんです」

バツイチ同士で再婚

 拓也さんは文字どおりゆかさんに“一目惚れ”したそう。

「後から話を聞くと、とにかくかわいくて、顔がタイプだったと(笑)。夫はハンディキャップがありながらもPCの操作ができれば健常者と同じように働けると、自らIT関連の会社を経営していて。看護をしながら話を聞くうちに、とても尊敬したんです。彼はとても聞き上手なのもあり、たくさん話していくうちに、自然と仲も深まっていきました」

 ただ、当時ゆかさんは転職したての不安定な時期。

「もともと大学病院の小児科ナースとして働いていましたが、モラハラ気質だった元夫との離婚を決意して、まだ小さい一人娘を働きながら育てるために時間の融通が利く訪問看護師になろうと転職して。今の夫を看護し始めたときは、まだ職場にも慣れていないタイミングで……」

 思いを胸に秘めていた拓也さんだが、やがてゆかさんが離婚したと知るとすぐに交際を申し込んだ。

 実は拓也さんもバツイチ。3年間交際した女性と結婚したものの、24時間毎日介助が必要な生活を受け入れてもらえず、同居して1か月で離婚。「もう、結婚はいいかな」と思っていた矢先、ゆかさんが現れたのだ。

「正直、障害のある方と付き合うなんて考えたこともなかったし、不安がなかったと言ったら嘘になります。ただ、その不安すらも吹き飛ばしてくれるほどの、ポジティブさが彼にはありました。自分を雇用してくれる会社がないならつくればいいと、社長として奮闘しているその姿にすごく感動したし、何より一緒にいて楽しかったので、お付き合いしましょうと」

 交際中は、ヘルパーさんとゆかさんの娘を含めた“4人デート”が定番。外食に出かけたり、プラネタリウムを楽しんだり。普通の幸せをゆっくり育んできた。

「いつも優しくて、穏やかで、娘もすぐに懐いたんです。それが結婚の決め手でした」

障害者に理解のある世の中にしたい

 現在、拓也さんの会社では訪問介護と訪問看護事業も運営。IT事業の知見を生かしながら、福祉を必要とする利用者と介助者をマッチングさせる「ふくはぴ愛知」というサイトをスタートさせた。

「私は夫の会社の訪問看護師事業の管理者をしていて、現場に出向く看護師としても働いています」

 最初はその訪問看護事業のPRをするためにインスタを始めたが、次第にコメント欄で「なぜ身体が痩せているの?」「ごはんはどうしてるの?」といった日常への関心が高まったことを受け、今年1月に夫婦アカウントを開設した。投稿には、応援だけでなく心ない声も届く。

「〈世話をさせるために結婚したんだろ〉〈私が親なら絶対反対する〉〈嫁がかわいそう〉〈多額の保険金をかけてるんだろ〉といったコメントがくることもあります」

 ゆかさんはそれすらも受け止めて、すべてのコメントに丁寧に返信している。

「重度障害者の生活を知らないからこそ書き込まれたコメントだと思うんです。例えば、夫の介助は基本ヘルパーさんがしてくれるので、コメントにあるようなお世話を押しつけられたことはありません。両親も結婚に賛成してくれて、夫と一緒に出かけることもしょっちゅう。

 苦労してるでしょ?と聞かれることもあるけど、後悔なんて一度もありません。これからも、障害のある人がどんな暮らしをしているのか知ってもらうためのきっかけとして、発信を続けていきたい。私は365日優しい夫が大好き。これからも、公私共に支え合うパートナーでいたいです」

ゆかさん 訪問看護師。訪問看護ステーション「ぶらうんらっと」の管理者。難病の脊髄性筋萎縮症(SMA)の松元拓也さんと2023年に結婚し、今年の1月からインスタグラム(@yuka.taku2023)で夫婦の日常を投稿している。

このニュースに関するつぶやき

  • 健常者で愛の無い夫と、障碍者だけど愛の溢れる夫どっちが幸せか?そんな事を想像してみるのも良いんじゃないかな。
    • イイネ!5
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(11件)

前日のランキングへ

ニュース設定