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化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件で、警視庁公安部と東京地検の違法捜査を認定した東京高裁判決(5月28日)について、東京都と国は11日、最高裁への上告を断念すると大川原側に伝えた。11日が上告期限だった。被告の東京都と国に計約1億6600万円の賠償を命じた判決が確定する。
公安部は経済産業省の輸出規制省令について国際基準と異なる独自の解釈で捜査を進め、大川原化工機の噴霧乾燥器が規制品に該当するとして社長ら3人を2020年3月に外為法違反容疑で逮捕し、地検は逮捕容疑のまま起訴した。
訴訟では、省令解釈が妥当だったかや、噴霧乾燥器が規制品に該当するかを判断する温度実験が適切だったかが主に争われた。
1審・東京地裁判決(2023年12月)は公安部の独自解釈を妥当としたが、高裁判決は「法令の解釈が不確かな場合は縮小解釈すべきなのに公安部は拡大解釈をした」と指摘。経産省が当初、公安部の解釈に否定的だったことも踏まえ、「独自解釈は合理性を欠き、犯罪の容疑の成立に係る判断に基本的な問題があった」と1審よりも踏み込んだ認定をした。
さらに、大川原側から温度実験の不備が指摘されていたのに、公安部と地検は再実験を怠ったと認定。通常要求される捜査をしていれば、噴霧乾燥器が輸出の規制品に該当しない証拠を得ることができたとし、1審に続き逮捕・起訴を違法と結論付けた。
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また、元取締役に対する公安部警部補の取り調べも、省令の解釈をあえて誤解させるような偽計的な手法が用いられたとして違法と認定した。【安元久美子、木下翔太郎、北村秀徳】
大川原化工機冤罪事件
化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長ら3人が2020年3月に外為法違反(不正輸出)で逮捕・起訴され、約1年4カ月後の初公判4日前に起訴が取り消された。社長らの勾留は約11カ月に及び、その間に胃がんが見つかった元顧問は被告の立場のまま死亡した。大川原側は21年9月に逮捕・起訴は違法だったとして東京都と国に賠償を求めて提訴。25年5月の東京高裁判決は、約2億5000万円の請求に対し1審とほぼ同額の計1億6600万円の賠償を都と国に命じた。
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