
19日、自民党は国民に一律2万円を給付するなどとする、参院選に向けた公約を発表しました。自治体からは負担増を懸念する声があがっています。過去には記入ミスのチェックを職員が手作業で対応する自治体もありました。常態化する給付金にどう対応すればいいのでしょうか?
【写真で見る】「早く振り込め」「きょう振り込まれなかったら死んでしまう」給付金のたびに多くの電話が…
マイナカードで“2万円給付”に疑問の声も石破茂総理
「今、物価高に苦しんでおられる方々に対する対応としては、私は給付金の方がはるかに効果的であると」
自民党が参院選の公約に盛り込んだ“現金給付”。国民一人あたり一律で2万円を給付し、子どもや住民税非課税世帯の大人には、さらに2万円を上乗せするとしています。
石破総理
「これは決して少なくはない。より早期に実施が可能となります。消費税減税には、それなりの時間がかかる」
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石破総理は消費税減税より、早期に実施できるとスピード感を強調しますが、街では…
会社員(40代)
「給付の方が魅力的ではある。減税と言われてもあんまり感じないんじゃないか」
公務員(20代)
「一時的だと思うので、それであれば消費税の方がいいのかな。(2万円は)そんなに大きい額でもないのかな」
一方、自治体からは、疑問の声が上がっています。
大阪府 吉村洋文知事
「自治体の職員からすると、プラスアルファの事務が結構大変。大きな労力と人件費をかけてまでやるんですかと」
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現金給付をめぐっては、過去に混乱も。2020年、一律で10万円が配られた際には…
記者
「職員の方が10万円給付の申請後の確認作業を行っています」
オンライン申請の記入ミスなどが相次ぎ、職員が手作業で対応した自治体もありました。
その後も、子育て支援や、低所得世帯への臨時給付など、現金の給付は、繰り返し行われてきました。
茨城・つくば市 五十嵐立青市長
「(2020年の時は)月に(時間外労働で)100時間を超える職員が10名以上出ているような状況。電話対応の窓口、これも自治体なんですよね。給付金のたびに非常に多くの電話がかかっていますし。『早く振り込め』『きょう振り込まれなかったら死んでしまう』とか。心理的な負担も多くありました」
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自民党は今回、マイナンバーに紐づいた「公金受取口座」を活用することで速やかな給付を行いたいとしています。
しかし、「公金受取口座」を紐づけていない人も多く、会計検査院の前院長、田中弥生さんは、こう課題を指摘します。
東京大学客員教授 田中弥生氏(前会計検査院長)
「国民のマイナンバーカードに対する、ネガティブな感情というのを全て拭いきれているかというと、そこはちょっとクエスチョンなんですよね。そんな中で自分の口座番号をどこまで提示するのか。デジタル化というのは全員が提出しなければ。やっぱりマニュアル作業というのは生じる」
小川彩佳キャスター:
改めて、自民党が公約に掲げる給付ですが、子供は2万円が加算されます。例えば子供2人の4人家族では合わせて12万円ということになります。物価高の最中ですから、大変な中「ありがたい」という方もいらっしゃるかとは思いますけれども、中室さんはどう思われますか。
教育経済学者 中室牧子さん:
忘れてはいけない話として、実は既に政府は物価高対策っていうのをやっています。住民税非課税世帯に1世帯3万円、子供がいればプラスで2万円という、そういう給付金もやっていますし、加えて補正予算で、電気ガス食料品等の価格高騰重点支援として、6000億円の予算をつけているんです。
このお金は、実は今まだ地方自治体でプロセス中で、国民の手元に届いていないんです。そういう物価高対策をやりながら、それがまだプロセス中なのに、また2万円という話をしていると。私はこれがどうしても腑に落ちないというか、前の話が終わってないのに、また新しい話が出てくるんですかということなんだと思います。
なので、やはりこの給付を行うっていうことであれば、しっかり説明をする必要がある。どのような目的でどのような効果が見込まれるのかということを、きちんと説明していただきたいなというふうには思います。
藤森祥平キャスター:
実感としては負担がどんどん増えていくといった印象があるので、少しでも負担を軽くしてほしいという思いはあります。
一方で忘れてはいけないのが、例えば給付金のこれまでを見てみますと、2020年に10万円の給付が行われた以降も、給付が一時的というかもう常態化されているという点もありまして、会計検査院・前院長の田中弥生さんは「それぞれ配る条件が違う。その度に各自治体がシステム改修をしなければならない」と、つくば市の五十嵐市長がおっしゃったような心理的な負担の声も上がっている。これには耳を傾けなければいけません。
教育経済学者 中室牧子さん:
2022年の特別定額給付金、10万円が全国民に配られましたけれども、このとき13兆円のお金が使われ、間接経費としてこれ(給付金)を配るためにかかった費用というのが大体1400億円から1500億円ぐらいというふうに言われているので、お金を配るためにもお金がかかるという状態になっているんだと思います。
この先のことを考えると、実は人口が減少し、生産年齢人口といわれる人たちが次の25年で20%ぐらい減るという推計もあります。
これはありとあらゆる職場で働く人が4分の1ぐらい減るということで、これは地方自治体も例外ではないということを考えると、こういう事務にものすごい人手をかけてやるということになると、ひょっとするとすごい時間がかかってしまうかもしれないということも思いますので、私はマイナンバーを使って、公金口座を紐付けて、自治体にかかる費用や時間を削減していくということは非常に重要なことだというふうに思っています。
藤森キャスター:
会計検査院の前院長の東京大学教授・田中弥生さんは、「それぞれ配る条件が違う。そのたびに各自治体がシステム改修をしなければならない」と話しています。
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<プロフィール>
中室 牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」
※動画内で紹介したアンケートは20日午前8時で終了しました。