トランプ米大統領=7日、ワシントン(EPA時事) トランプ米大統領は相互関税の上乗せ分の適用を従来の7月9日から8月1日に延期した。これを受け、日本政府内からは一連の関税措置見直しを求める交渉を延長に持ち込んだとの評価も聞かれる。だが、約3カ月にわたり閣僚級交渉を重ねてきたものの、具体的な成果が上がっていないのは事実。日本への相互関税は従来の24%から25%に引き上げられ、最大の焦点となる自動車追加関税の見直しでは手詰まり感が広がっている。
閣僚級による日米の関税交渉は4月以降に本格化。当初は6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせた首脳会談での合意を目指したが、溝は埋められず、その後は7月9日を「節目」と位置付けて交渉を進めてきた。
交渉を担う赤沢亮正経済再生担当相はこの間、計7回も訪米。日本の対米投資の実績を訴えるとともに、米国車に関する非関税措置見直しや造船分野の協力、大豆・トウモロコシの輸入拡大などを打診し、関税措置見直しへ歩み寄りを求めた。
だが、トランプ氏は最近も日本によるコメや自動車の輸入に不満を表明。政府内では、赤沢氏が信頼関係を築いたと強調するラトニック商務長官からトランプ氏に、「何の報告も上がっていないのではないか」(政府関係者)と、閣僚級で積み上げてきた交渉手法をいぶかしむ声も漏れる。
新たな期限となる8月1日に向けては、20日投開票の参院選後には「交渉のスピードが増す」(第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミスト)とされる。トランプ氏は新たな相互関税率を示した書簡で、米国への市場開放などによっては「調整を考える」と述べており、交渉の余地がありそうだ。
ただ、自動車追加関税を含む分野別関税は区別して扱っており、交渉のハードルは高そうだ。米メディアは今月、米側が5月下旬に日本車の米国への輸出台数の制限を検討する可能性があると伝えたと報じた。だが、1980年代に自主規制を受け入れたことで国際競争力をそがれた経験がある日本側からは「のめるわけがない」との声も上がる。
米政府は大型減税で目減りする財源の穴埋めに関税収入を当て込んでおり、一連の追加関税の撤廃は非現実的。日本側は今後、トランプ氏の関心を探りながら、引き下げ幅を見定める難しい交渉を迫られそうだ。