
体や心の疲れをとる睡眠ですが、眠りが浅かったり質が悪かったりすると、しっかり眠った気がしませんよね。
管理栄養士の筆者が、睡眠の質が高まる可能性がある、栄養素や食材についてご紹介します。
■睡眠の質が下がる原因
生活習慣の乱れやストレスは、睡眠の質を下げる要因になり得ます。
人間の体には「体内時計」があり、1日のリズムが作られているのですが、不規則な生活をしていると体内時計が乱れます。
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その結果、睡眠のリズムが乱れて、睡眠の質が低下してしまう可能性があるのです。
また、ストレスが溜まると交感神経が刺激されるのですが、交感神経が刺激されると「ノンレム睡眠」という、脳や体の疲労回復に大切な睡眠が減ってしまいます。
睡眠をとったつもりでも眠りが浅く、疲れがとれにくくなってしまうでしょう。
満足な睡眠がとれていないと、日中の仕事や家事のパフォーマンスが下がるだけではなく、実は肥満のリスクが高まるなど、美容や健康面にも悪影響をもたらします。
寝室の環境を整えたり、運動を習慣化したりすることでも睡眠の質を高められますが、毎日の食事からもアプローチしていくのが理想です。
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具体的に、どのような栄養素や食材が睡眠の質向上に役立つのか見ていきましょう。
■睡眠の質を高める栄養素&食材3つ
(1)トリプトファン:チーズ
トリプトファンは「メラトニン」の生成に関与している、アミノ酸の一種です。
体内で、トリプトファンからメラトニンに合成されます。
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メラトニンには、睡眠と覚醒のリズムを整える働きや、体内時計を正常に保つ働きがあるため、トリプトファンを摂取することが、質の良い睡眠につながる可能性があります。
含まれる食材とおすすめの食べ方
トリプトファンは乳製品に多く含まれています。
チーズやヨーグルトなどは手軽に食べられるため、睡眠の質向上にぜひ役立ててみてください。
トリプトファンは、糖質の摂取によって脳への取り込みが効率的になることが分かっているため、チーズ+バナナ、チーズ+はちみつなどの組み合わせを意識して食べましょう。
(2)GABA(ギャバ):トマト
GABAはアミノ酸の一種です。
GABAは、副交感神経を優位にすることでストレスの影響を抑え、リラックス効果をもたらすといわれています。
ストレスは睡眠の大敵ですので、GABAの摂取は質の良い睡眠に役立つでしょう。
睡眠の質が悪い原因がストレスである場合は、特に意識してGABAを摂取してみるのもひとつの方法です。
含まれる食材とおすすめの食べ方
GABAを手軽に摂取できる食材として、トマトが挙げられます。そのほかにも、発酵食品や発芽玄米などにも多く含まれています。
GABAはアミノ酸ですので、アミノ酸の代謝に関与する「ビタミンB6」を含む食品と一緒に摂取するのがおすすめです。
ビタミンB6は、ナッツ類やバナナ、カツオなどの食品に多いため、サラダにしたりカツオのたたきの付け合わせにしたりしていただきましょう。
(3)グリシン:エビ
グリシンはアミノ酸の一種で、血管を拡張させて体温を上昇させることで体の中心温度を下げ、スムーズな入眠を促す働きがあります。
入眠しやすくなるだけではなく、質の良い睡眠、すなわちノンレム睡眠の時間が増えることも報告されています。
さらにグリシンには美肌効果もあるのだそう。
グリシンは、肌の弾力に関わるコラーゲンを構成しているため、十分な摂取で睡眠の質向上のみならず、美肌効果も得られる可能性がありますよ。
含まれる食材とおすすめの食べ方
グリシンはエビやカニなどに多く含まれています。
グリシンはアミノ酸の一種ですので、GABAと同様、ビタミンB6と一緒に摂取すると効果的に体内で利用されます。
ビタミンB6は赤パプリカやアボカドなどの食品に多いため、エビと赤パプリカ・アボカドのサラダなどのメニューがおすすめですよ。
今回ご紹介した食品は、いずれも簡単に購入できるものばかりですので、睡眠について悩んでいる人や、より睡眠の質を高めたい人はぜひ試してみてくださいね。
(フリーランス管理栄養士 今井尚美)