
ぶどうグランプリ2025の総合大賞に、新品種「サンシャインレッド」が選ばれました。「まるで子育て」と言われるほどの、知られざる品種開発の裏側を取材しました。
【写真を見る】蜂蜜のような甘さ、バラのような香り…次世代エースのぶどうがずらり
■次世代のエースぶどうを発掘「ぶどうグランプリ2025」
日本最大の産直通販サイト「食べチョク」が開催した「ぶどうグランプリ2025」。全国の生産者から68のぶどうが出品され、味や梱包の見た目などを審査し、大賞が決定されます。その狙いは…
食べチョク 秋元里奈代表「シャインマスカットは非常に美味しいが、最近は高温だったり、気象環境が変わっているし、生産量が増えると価格が落ちてしまうので、次のトレンドが見つかるような場になっていくといいなと思っています」
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種がなく皮ごと食べられると人気のシャインマスカットですが、2021年をピークに、価格は少しずつ低下。消費者にとっては嬉しいのですが、農家にとっては頭を抱える事態に。
■「パッツンパッツン」ぶどうのシロップを食べている気分になるぶどう
次世代のエースぶどうを発掘すべく行われた品評会で、まず気になったぶどうは…
出水麻衣キャスター「(粒が)一つ一つ大きい、実もパッツンパッツンです。甘くて、ぶどうのシロップを食べているような気分になります」
長野県須坂市の牧農園が出品した『クイーンルージュ』です。
こちらの農園では現在15種類を販売しているということです。
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牧農園 牧壮一さん「新しい品種、珍しい品種ってまだ世の中で全然認知されていない品種も多いんです。長野県のこれからのぶどうの発展のためにも、ぶどうグランプリに優勝したいです」
■バラのような芳醇な香りの「サンシャインレッド」
さらに、山梨県山梨市のぶどう農園が出品したぶどうは…
カンティーナ ヒロ 広瀬武彦代表取締役「サンシャインレッド。本来だと真っ赤になるが、まだ試行錯誤している状態」
とはいうものの…
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出水キャスター「華やか!お花のようなバラとか、ぶどうとは思えない芳醇な香りが口に広がりました」
粒が大きくなるまでは乳白色の保護フィルムをかぶせ、その後、濃い赤にするため日光が当たる透明な保護フィルムに変更し、照り返しを強めるシートを設置するなど、手間暇がかかるそうですが…
カンティーナ ヒロ 広瀬武彦代表取締役「妥協は一切するつもりはない。自分の納得するものが、いつかはできるだろう。それがいつになるかはわからない」
■次世代エースぶどうは「シャインマスカットより甘い」
出水キャスター:
全国のぶどう生産者を対象とした“生産者のための”品評会「ぶどうグランプリ2025」で、ツジファームの「サンシャインレッド(7200円/2房)」が総合大賞に選ばれました。
「サンシャインレッド」はシャインマスカットを親に山梨県が10年以上かけて開発し、2022年に新たに品種登録された次世代品種の1つです。味は「シャインマスカットより甘い」ということです。
辻ファームの辻正清代表によると「山梨ではサンシャインレッドがシャインマスカットに代わってどんどん生産されている」といい、人気が高まっているというのです。
井上貴博キャスター:
生産量が増えて供給が増えれば値段は少し落ち着いていくのかもしれませんね。
■蜂蜜のような甘さのぶどうも
出水キャスター:
他にも品評会では様々な品種のぶどうが出品されていました。
【ぶどうグランプリ そのほかの品種】
「クイーンニーナ(2000〜3000円)」
酸味が弱く甘味を感じられる
「マスカ・サーティーン(1500〜2500円)」
果肉が柔らかくなめらかな食味
「富士の輝(4000〜5000円)」
“ブラックシャインマスカット”蜂蜜のような甘さ
スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
ひとつひとつの食べ比べセットが欲しくなりますね。
山形純菜キャスター:
昔のぶどうは皮を取ったり、種もあるので、面倒くさくて種を飲み込んでしまったことがあります。でも今は皮ごと食べられるぶどうもあって進化しているなと思いました。
■シャインマスカット 品種登録までに18年
出水キャスター:
ぶどうは100種類以上もの品種があり、その数は毎年増えているそうです。
ただ品種改良はとても大変な作業で、それは“まるで子育て”だということです。
シャインマスカットの場合は品種登録までに18年かかりました。
シャインマスカットは1988年から開発がスタート。「安芸津21号」と「白南」という2種類のぶどうをかけ合わせ、約10年くらいかけて115の個体を作り出し、その中の一つ、「安芸津23号」を選抜しました。
その後、1999年から全国で栽培特性試験を実施。様々な方に栽培してもらい、費用がどのくらいかかるか、他の品種と差別化できているか、安定的に作れるかなどの実証実験を行い、2006年にようやく種苗法に基づき「シャインマスカット」として正式に品種登録されたのです。
生産者の方々に新しい品種を作る大変さを聞きました。
カンティーナヒロ 広瀬武彦代表取締役「サンシャインレッドは色づき始めたら透明な袋に付け替えたり、色づき管理が大変」
志村葡萄研究所 志村晃生社長「農家目線の作りやすさ、消費者目線の食べやすさ・美味しさが必要」
井上キャスター:
気が遠くなるような研究や開発、細かい作業が続くのですね。日本は高温多湿なので病気についても考慮しないといけないし、最近はさらに気温が上がっているので、また(栽培方法などを)変えなければいけない、その繰り返しなんですね。
出水キャスター:
ほかにも害獣や、虫の被害といったものも考えていかなければなりませんからね。
スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
思うようにいかないことも多いということで、まさに子育てと一緒ですね。
■希少品種栽培「シャインマスカット一本では価格競争に陥る」
出水キャスター:
ほかにも希少価値の高いぶどうがあります。
【5種類の希少品種を栽培している長野県「牧農園」】
<ぶどうグランプリ2025に出品>
・真沙果(3000〜4000円)
「まさかこんなぶどうが」という驚きから命名
・クイーンルージュ(2500〜4000円)
甘くて皮が薄い。パリッと食感
・姫果(3000〜4000円)
世界で3人しか栽培していない。
甘味が強く、サクサク食感。芳醇な香り
牧農園の牧 壮一さんは「シャインマスカット一本ではどんどん価格競争に陥る。ちょっと違う路線で利益をとっていきたい」といいます。
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〈プロフィール〉
田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶応義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMia(イミア)」主宰