自民党本部の入り口横に置かれた、自民党総裁選5候補の意気込みが書かれたボード=9月23日、東京都千代田区(代表撮影) 自民党総裁選(4日投開票)で、選択的夫婦別姓制度を巡る議論が低調だ。主要争点となった前回から一転。今回は、旗振り役だった小泉進次郎農林水産相を含め、5候補とも党内融和を優先し、早期導入に慎重な姿勢で足並みをそろえた。
小泉氏は昨年の総裁選で、選択的別姓の導入を看板政策に掲げ、関連法案を1年以内に提出すると「公約」。党内から「強行すれば党が割れる」(ベテラン)などの懸念が相次ぎ、最終的に失速する一因となった。今回は、賛成のスタンスこそ維持したものの、早々に「国民の理解や与野党のコンセンサスへの努力がさらに必要だ」とトーンダウン。導入反対の党内保守派を意識したのは明らかだ。
導入に慎重な高市早苗前経済安全保障担当相、小林鷹之元経済安保担当相、林芳正官房長官は、改姓による不便解消のため「旧姓の通称使用拡大」を主張。林氏は前回、「(選択的別姓は)個人的にはあってもいい」と語っていたが、世論調査の結果を理由に姿勢を改めた。
茂木敏充元幹事長は是非を明確にしていないが、「家族の絆」や戸籍制度の重要性に言及。「結論を急ぐのではなく、しっかり合意形成を図ることが大切だ」と訴える。
選択的別姓を巡っては、女性や若い世代で期待する傾向が強い。女性活躍の観点から経済界も早期導入を要望。こうした状況を踏まえ、昨年の総裁選では小泉氏のほか、石破茂首相や河野太郎前デジタル相らが前向きな姿勢を示し、活発な論戦が交わされた。
先の通常国会では、自民、公明両党が少数与党となる中、立憲民主、国民民主両党がそれぞれ選択的別姓の導入法案、日本維新の会が旧姓使用の法制化法案を提出。衆院で28年ぶりに審議入りしたが、3法案とも採決には至らなかった。この間、自民は党内の意見集約もできず、存在感を欠いた。
7月の参院選では、参政党など導入反対を掲げる新興の保守政党が躍進。自民内には「失った保守層を取り戻さなければならない」(中堅)との危機感が強い。小泉氏の陣営関係者は「今の国政の情勢では実現できない。別姓問題は戦略的に棚上げする」と言い切った。