
本物の拳銃と同じく実弾を撃つことができる「違法なおもちゃ拳銃」が全国各地で確認されています。その入手ルートは“ある身近な場所”でした。
■実弾撃てる「おもちゃ拳銃」所持で摘発も 約1万6000丁流通、回収は約3400丁に留まる
高柳光希キャスター:
見た目はおもちゃなのに本物と同じ性能を持つ「おもちゃの拳銃」が全国で流通しています。
全長約12cmの手のひらサイズ、プラスチック製でパッケージには「リアルギミックミニリボルバー」と記載されています。中国製で、国内では約1万6000丁が流通しています。
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そして驚くのが、流通する大半はゲームセンターのクレーンゲームの景品になっているということです。警察も回収を進めています。
警察庁HPより
「この拳銃を輸入・所持・販売等することは違法です。お持ちの方は、速やかに回収期間までに最寄りの警察署まで届け出てください」
回収期間は2025年12月31日となっています。流通した約1万6000丁のうち、2025年8月末時点で約3400丁が回収されていますが、回収が難航している理由にはどういうことが考えられるのでしょうか?
TBS報道局社会部 寺島尚彦記者:
理由は2つ考えられます。
一点目は、クレーンゲームでは入手時に本人確認が不要なので、所有者の特定が非常に困難だということ。もう一点は、見た目はおもちゃなので、子どもが使っていても気付かないといったことが回収を困難にさせている理由だと思います。
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高柳キャスター:
おもちゃの拳銃とはいえ実弾が撃てるため、持っているだけで銃刀法に抵触して知らぬ間に摘発対象になることもありえます。
1丁所持している場合は、1年以上10年以下の拘禁刑ですが、2つ以上所持だと罰則が変わり1年以上15年以下の拘禁刑になる可能性もあります。
■違法の「おもちゃ拳銃」見分けるポイントは?
高柳キャスター:
モデルガンのような違法ではないものもあるわけですが、違法になってしまうものとの違いやポイントはどこなのでしょうか。
寺島尚彦記者:
ポイントは3つあります。
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(1)「銃口」から「弾倉」までが貫通している
(2)「弾倉」に弾を込めることができる
(3)ハンマーの役割を果たす「撃鉄」が「撃針」を打撃して、弾が飛ぶ
このような構造になっているものが違法とされています。
井上貴博キャスター:
今の技術だと3Dプリンターなどで作ることもできるんだろうなと想像しますが、あくまでもクレーンゲームの景品となっていると疑いようがないというか。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
甘く見てしまいますよね。私もおもちゃ会社の社長をやっていたので、こういうニュースを聞くと非常に残念です。
本来、おもちゃは設計から材料等まで厳しく見ていますが、我々が一番重点を置いているのは、どうやって子供が使うのか。単なるごっこ遊びなのか。このように弾を撃つ場合は、その弾が目に当たったらどうなるのか。うちの場合は非常に柔らかい素材で作るといった工夫をしていました。
このニュースの一番怖いところは、銃刀法違反になる可能性が高いということ。しかも刑が結構重い。なので、ニュースを聞いたらできるだけ早く最寄りの警察や交番に届けるのが一番だと思います。
この会社は使用シーンを考えていなかったか、あるいは法律を知らなかったのか。非常に怖いニュースですよね。
出水麻衣キャスター:
例えば、身近で見たことがある人がいたとして、それを警察署まで持ち歩くとしたら、それも銃刀法違反になるのかなどと考えて足がすくんでしまう人もいるかと思います。どのように届け出るのが安心でしょうか。
寺島尚彦記者:
届け出ようとしていた人が、警察署に行く間に職務質問を受けてしまった場合は、しっかりと誠実に理由を述べることで摘発は防げると思います。
心配な方は、事前に警察署に電話をして名前を伝えた上で届け出るようにしていただければ安心かと思います。
■初確認は2022年、18都道府県で36人が摘発される 課題は「水際対策」強化
高柳キャスター:
警察が回収を呼びかけている「おもちゃ拳銃」は17種類です。
最初に「おもちゃの拳銃」が確認されたのは2022年6月でした。
そこから警視庁が国内外のネット通販などのサイバーパトロールを行った結果、これだけの数が見つかっているわけですが、母数はまだはっきりと確認されていないということです。
その中で、これまでに約1000丁が回収されており、今年6月末時点で18都道府県で既に36人が摘発されています。
これから規制・回収していく上でどのような課題が考えられるでしょうか?
寺島尚彦記者:
課題は「水際対策」です。この17種類については、警察庁から税関に国内流通しないように依頼をしています。
中国当局に対しても、2023年9月と2024年8月の2回、ICPOという国際刑事警察機構を通じて情報を提供した上で、日本への輸出を防ぐための適切な処置を講じてほしいと依頼しています。
新しいものが出てきてしまった場合はイタチごっこのようになってしまうため、このような点が課題とされています。
井上キャスター:
中国製ということですが、これだけ精巧に作るとある程度のコストがかかると思うんです。
それを日本に輸出して、ある程度の値段で売るんだったらまだしも、「クレーンゲームの景品にする」というのはどういう意図なのか。コストの回収はできなさそうですし、何なんだろうと思うのですが、そのあたりは分かっていないのですか?
寺島尚彦記者:
そこは捜査当局としても、まだ判明していないと思います。ただ、少なくともおもちゃとして入ってきてしまうものに対しては、しっかりと水際対策をとっていくということだと思います。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
コストというよりは、クレーンゲームだと魅力がある商品があればゲットしたくなってどんどんマシンにお金を入れてしまう。1個が安いから、高いからという話ではなくて、魅力があるかどうかだと思います。
出水キャスター:
刺激のあるおもちゃという意味で、すり抜けて入ってきてしまってるという現状ですね。
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<プロフィール>
ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者 1963年オランダ生まれ
現パナソニック・アース製薬の社外取締役など
寺島尚彦
TBS報道局社会部 警察庁担当
2児の父
家訓は「自分の身は自分で守る」