首相官邸に入る高市早苗首相=19日午前、東京・永田町 19日決定の2026年度与党税制改正大綱には、高市早苗首相の意向が強く反映された。長年、議論を仕切ってきた自民党税制調査会は、主導権を奪われて埋没。財源確保策は先送りが目立つものの、高い内閣支持率を誇る首相に対し、党内は沈黙している。
首相は所得税の課税最低ライン「年収の壁」について、国民民主党の主張した178万円への引き上げを決断。自国の税調会長間で決着がつかず、最後は首相に委ねられた。
自民幹部によると、麻生太郎副総裁と国民民主の榛葉賀津也幹事長が18日に詰めの協議を行い、首相の「政治決断」を演出した。ただ、合意を優先するためか、税収減への対応は不透明なまま。両党の合意文書にも財源は盛り込まれなかった。
首相はまた、車購入時にかかる自動車税と軽自動車税の「環境性能割」の廃止を判断。約1900億円の税収減となるが、この穴埋め策も先送りされた。
自民税調の議論は、これまで「インナー」と呼ばれる幹部が主導。その多くを財政規律派が占めていた。
首相はこれを一変させた。税調会長に起用した小野寺五典氏は、インナー経験がない「税の素人」(周辺)。松島みどり首相補佐官、西村康稔元経済産業相ら新幹部の顔触れも、経済成長を重視する「高市カラー」が色濃くにじむ。
党内には「税収確保などの議論が必要だ」との声もあるが、広がりを欠いている。
今後、懸案となりそうなのが膨らむ防衛費だ。財源確保のため、27年1月からの所得税増税は決まったが、高市政権はさらなる防衛力強化を掲げている。
来年末までに安全保障関連3文書を改定する方針。防衛費について、国内総生産(GDP)比2%超の数値目標を盛り込む方向で検討しており、この財源確保が焦点となる。
首相を支える旧安倍派などでは、増税に否定的な意見が多い。首相は今後、国民負担軽減と財源確保のバランスに苦心しそうだ。