ノーベル賞授賞式を前に記念講演する京都大の北川進特別教授(写真左)と大阪大の坂口志文特任教授=2025年12月、ストックホルム 10年ぶりとなる日本人研究者の「ダブル受賞」に沸いた2025年のノーベル賞授賞式。生理学・医学賞の大阪大・坂口志文特任教授(74)と化学賞の京都大・北川進特別教授(74)は、スウェーデン国王からそれぞれメダルと賞状を受け取ると、「人生の中で特別な日」(坂口さん)などと喜んだ。祝賀ムードに包まれたストックホルムでさまざまな行事に臨んだ2人だが、「受賞で騒いで終わりでは成り立たない」とも述べ、基礎研究への支援拡充を繰り返し訴えた。
授賞式前の公式記者会見では、海外メディアからそれぞれの研究実績だけでなく、基礎研究に対する国の支援に関する質問が飛んだ。坂口さんは「今回の受賞をきっかけに、社会全体が医学や医療研究の重要性を認識してくれることを願っている」と答え、北川さんも「基礎研究が成果を挙げ、活用されるには25年ほどかかる。長期の資金が必要だ」と訴えた。
坂口さんが発見した過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」も、北川さんが開発した極小の穴が無数にあいた「金属有機構造体(MOF)」も当初は学会の常識から外れた内容で、他の研究者からは異端視された。それでも2人は信念を貫いて長年にわたり地道に研究を続け、それぞれがん治療や地球温暖化対策などへの応用が期待される研究成果につなげた。
日本では近年、短期的な成果が重要視される傾向にあり、基礎研究力は低下の一途をたどっているとされる。主要国の科学技術活動を分析した「科学技術指標2025」によると、23年の研究開発費は日本の20.4兆円に対し、世界トップの米国が91.0兆円、中国も87.4兆円で、その差は拡大した。
また、自然科学分野で引用数が多く注目度の高い「上位10%」の論文数(21〜23年の平均)で日本は13位。20年前の4位から下落傾向に歯止めがかからず、過去最低の水準となった。
授賞式の翌日、日本大使館で開かれた記者会見でも坂口さんは「日本では基礎研究に対する支援の厚みが昔と比べて弱くなっている」と指摘。北川さんは「今の研究者がノーベル賞候補者になり得るのか。私たちが受賞して騒いで終わりでは(日本の科学技術は)成り立たない」と述べ、国や社会による息の長い支援が重要だと強調した。

ノーベル賞授賞式から一夜明け、授与されたメダルを持つ化学賞の京都大・北川進特別教授(左)と生理学・医学賞の大阪大・坂口志文特任教授=2025年12月、ストックホルム