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厚生労働省は、2016年にがんと診断された患者の経過を追跡した「全国がん登録 5年生存率報告」を公表した。この調査は「がん登録等の推進に関する法律」に基づき、国内全ての病院と指定診療所から収集された罹患、治療、予後のデータを分析したものだ。
集計結果によると、15歳以上における部位別の5年純生存率は、部位によって大きな差が見られた。前立腺(92.1%)や女性乳房(88.0%)は高い生存率を示し、子宮頸部(71.8%)、大腸(67.8%)、胃(64.0%)がそれに続く。一方、肺は37.7%、肝と肝内胆管は33.4%にとどまり、膵臓に至っては11.8%と厳しい状況にあることが浮き彫りとなった。
年齢階級別の分析では、多くの部位で加齢とともに生存率が低下する傾向が見られるが、前立腺がんのように若年層の方が生存率が低いといった特異なパターンを持つ部位も存在する。また、小児がん(15歳未満)全体の5年生存率は82.4%と比較的高いが、網膜芽腫が97.6%、リンパ腫、リンパ網内系腫瘍が95.7%と高い生存率を示している一方、中枢神経系、その他頭蓋内、脊髄腫瘍は60.8%と低く、分類によって差が見られた。
男女別では、男性の5年生存率が比較的高い(70-100%)部位は、前立腺と甲状腺、皮膚、乳房、喉頭だった。女性では5年生存率が比較的高い部位(70-100%)は、甲状腺と皮膚、乳房、子宮体部、喉頭、子宮頸部に。両性別ともに生存率が比較的低い(0-29%)部位は、胆のう・胆管、膵臓となった。
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病態の進展度別に見た生存率では、早期の限局段階で診断された胃がんの生存率が90.8%であるのに対し、遠隔転移まで進行した段階では6.0%にまで低下する。この傾向は多くの部位で共通しており、早期発見・早期治療の重要性を改めて裏付ける結果となっている。
都道府県別の集計では、全国平均の5年後生存割合が52.8%であるのに対し、最も高い県(香川県)の55.2%から、最も低い県(宮崎県・岩手県・福島県)の49.2%まで、最大で6.0ポイントの開きがみられた。
今回の報告では、がん以外の死因による影響を除外した「純生存率」が採用されている。これは、他死因のリスクが高い高齢層が先に脱落することで生存率が過大評価される問題を回避するための手法。ただし、症例数が少ない部位や年齢階級、特定の都道府県においては、統計的なばらつきが生じやすく信頼区間が広くなるため、数値の解釈には注意が必要だ。
一方、そもそもがんの発症自体を防ぐ一次予防の重要性も、最近Nature Medicine誌で発表された論文「Global and regional cancer burden attributable to modifiable risk factors to inform prevention」で改めて強調されている。
この研究によると、2022年における世界の新規がん患者1870万人のうち、約37.8%に当たる710万人の発症が、生活習慣をはじめとする予防可能なリスク要因に起因していると推計された。
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具体的には、喫煙や飲酒、高BMI、運動不足、感染症、大気汚染など30のリスク要因を分析した結果、最大の要因は喫煙(15.1%)であり、次いで感染症(10.2%)、アルコール消費(3.2%)と続いた。特に、肺がんと胃がん、子宮頸がんの3部位は、こうした予防可能ながんの約半数を占めているという。
※Innovative Tech:2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
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