WBC力負けの侍ジャパン 大谷翔平の存在が錯覚を起こさせた/小谷正勝氏病床から語る

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2026年04月14日 05:00  日刊スポーツ

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3月14日、日本対ベネズエラ ベネズエラに敗れ整列する日本代表選手たち

多くの名投手を育てた小谷正勝氏(81)が、病床から球界を語りました。名伯楽からの貴重なメッセージをお楽しみください。


   ◇   ◇   ◇


昨年の夏以降、がんが体のあちこちに転移し、長くお世話になった病院を出た。静かな個室の施設に移って原稿を書いている。


病は気から、という。不思議なもので、病院にいた最後の方と比べて、明らかに体の具合が良くなっている。わいてこなかった食欲、比して気力が戻り、体を起こすこともできるようになった。こうして野球について考える時間も取れている。


ただ、執筆に入ろうとiPadを開こうとすると、パーキンソン病の影響から指先の力が足りなくて、思うようにいかない。キーボード操作も同じで、狙ったキーの左右を押してしまうことが多い。だから、同じ行数を書くのに、これまでの何倍もかかる。それでも「野球について考え、書きたい」という心の灯が消えない限り、手を止めたくない。長い前置きになったが、どうか散文をお許し願いたい。


WBCの敗退から感じたこと。ベネズエラのような、持って生まれた体をさらに鍛えてきたような強国を相手に、日本はどう戦うのがいいのだろうか。


投打とも完全に力負けした。韓国、台湾あるいは中国といったアジア諸国には、この先も優位に戦えるだろう。しかし、世界を相手にした場合は結局、スモールベースボールに回帰する他ないのでは、と結論づけた。


大谷翔平の存在が錯覚を起こさせている嫌いがある。彼は不世出の存在であり特例。倣ってパワーに傾倒するのは危険だ。三冠王3度の落合博満はかつて「ホームランは、狙わなくては打てない」と言った。超一流の域では「ヒットの延長がホームラン」という概念は成立しない(逆=ホームランの打ち損じがヒットは成立する)。結局、体力を突き詰めても、極限では「日本人の限界」に当たる。


大会を終えて、スモール回帰の論調は少数派だろう。現役を引退した直後、希望を通してもらう形で1年だけ務めたスカウト時代の経験に根拠を求めた。自分の目で「プロとアマの体力差は、どのくらいあるのか」を確かめたかった。


当時の投手陣といえば、先発4人プラスαに中継ぎ5人をフル回転させる運用が基本だった。先発の中4日、リリーフの回またぎや連投は当たり前。訓練が可能にさせたのだが、逆に言えば、訓練に耐える体力を備えた選手だけが、一線を張れる。そう思っていた。


実際、無理が利きそうな選手とそうでない選手の線引きは、明らかに存在した。素材を見抜き、プロへの入り口を開くスカウトは、チーム編成の極めて重要な責任を担っていると位置付けた方がいい。


プロの世界に入ってからは、本人と監督、コーチの間で「自分がどのようなタイプの選手か」について話し合い、意見の食い違いがない状態でスキルを磨きたい。


若い投手が「自分のピッチングをしたい」と言うことは多い。「自慢はストレートで、空振り三振を取れることが強み」と言うケースも多い。どちらも育った環境下での話であり、己を客観視できているか、疑問に思う。この点、冷静に見えている選手は伸びるし、適切に指摘できる指導者は優れている、ということになる。


話は横道にそれたが、例えば今の阪神のように、各球団の目利きが高いレベルでそろってくれば、スモール回帰という自分の仮説も変わってくるかもしれない。選手と指導者の関係がもっと円滑になれば、入団後に大きく伸びる選手が増え、パワーで対抗できるようになるかもしれない。つまり、今の日本球界には、根っこの部分に目を向けるべき改善点がまだまだあるということだ。(日刊スポーツ客員評論家)

このニュースに関するつぶやき

  • 単純に前回大会以上に有力選手が出ただけで、こうなる日本のレベルってだけだおな。しかもまだ有力選手で保険関連で不出場は多々いるおǭにしても「iPadを開く」という表現を、ぽれは初めて目にしたお。
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