画像提供:マイナビニュース電通グループのdentsu Japanは5月26日、メディア向けオンライン説明会を開催し、「LGBTQ+調査2026」の結果を公表した。全国の20〜59歳、4万6658人を対象に実施した調査で、LGBTQ+当事者層の割合は10.6%となり、2023年調査の9.7%から微増した。
この調査では、当事者層だけでなく、非当事者層の意識や行動についても分析。学校教育や企業研修、同性婚への意識、日常生活での困難など、多角的なテーマが取り上げられた。
また、調査結果をもとにしたデジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」も無償公開された。非当事者が理解しているつもりと感じていることと、当事者が実際に感じている現実とのギャップを可視化する内容となっている。
LGBTQ+認知は広がる一方、属性ごとの理解には差
説明会では、まず調査の基本データが紹介された。
LGBTQ+という言葉について「性的マイノリティの総称のひとつだと知っている」と回答した人は76.7%に上った。
一方で、属性ごとの認知には差があり、「ゲイ」「レズビアン」は9割以上が認知しているのに対し、「ノンバイナリー」「クエスチョニング」「アセクシャル・アロマンティック」などについては、「言葉も意味も知っている」と回答した割合が15%を下回り、認知率が低い傾向が見られた。
電通 第3マーケティング局の岸本かほり氏は、「LGBTQ+という総称は広く知られるようになってきた一方、その中に含まれる多様な性のあり方への理解は、まだ十分とは言えない状況と考えています」と説明した。
「学校で教えるべき」8割超 一方で“教わった経験"は1割未満
教育に関する設問では、意識と実体験の差も見られた。
「学校教育でLGBTQ+をはじめとする性の多様性について教えるべき」と回答した人は81.7%に上った。一方で、「学校教育の中で教わった経験がある」と回答した人は9.8%にとどまり、意識と実体験の間に大きなギャップがあることが明らかとなった。
また、当事者層に対し「住みやすい街になるために取り組んでほしいこと」を尋ねた設問では、「学校での教育」が18.0%で最多となった。
自由回答では、「教科書の“異性を好きになった際"という表現に、否定されたような気持ちになった」「制服やトイレ、会話など、生活すべてで常に偽り続けなければならなかった」といった声も紹介された。
LGBTQ+研修経験で行動にも差
続いて、企業での研修に関する分析も紹介された。
LGBTQ+に関する研修を受けた経験がある人は、未受講者と比較して、「正しく理解したいと思う」といった意識面で10ポイント以上高い結果となった。
さらに、「差別的な言動があった際に、話題を変えたり注意する」といった実際の行動面でも、8〜10ポイント以上高い結果が出たという。
岸本氏は「研修の経験が、当事者の存在や悩みを日頃から意識したり、また実際の行動につながるなど、大変ポジティブな結果と考えています」と説明した。
また、「店員がLGBTQ+研修を受け、言葉づかいやサービス提供に配慮がある店を利用したい」と答えた人は全体で63.5%。特徴的なのは、当事者層の58.6%よりも非当事者層が64.1%と、ポイントが高かった点だ。
岸本氏は、「LGBTQ+に対しての研修を行っている企業は、社会の変化に対応できる、社員が働きやすそうなど、ポジティブな印象を非当事者に対しても与えることがわかります」と説明した。
同性婚への賛成は67.0%
法律に関する設問では、「同性婚の法制化に賛成」と回答した人は67.0%となった。
また、非当事者層の82.6%が「同性婚が認められても自身の生活には影響がない」と回答。同性婚の法制化については、支持する回答が多数を占めていることがわかったという。
当事者と非当事者の認識のズレを描いた「わかったつもりとほんとのところ」
説明会後半では、調査結果をもとに制作されたデジタルブック「わかったつもりとほんとのところ」についても一部テーマを抜粋して紹介された。
このデジタルブックでは、恋愛・結婚、働き方、住まい、子ども・教育、医療・防災、老後といった、日常のさまざまな場面をテーマに、周囲の「わかったつもり」の声と、当事者の「ほんとのところ」の声が並べて掲載されている。
紹介されたテーマの一例は以下の通り。
【恋愛・結婚】
(わかったつもり)「結婚できなくてもパートナーシップ制度があるから十分だと思う」:46.4%
(ほんとのところ)「将来、パートナーの看取りや葬儀、お金や家の問題がどうなるのか不安」「同性婚が不可能であるというのは、存在を否定されているのと同義だと思う」
【働き方】
(わかったつもり)「職場でカミングアウトしたいのであればすればいいと思う」:69.2%
(ほんとのところ)「理解してもらえない不安があり、職場ではカミングアウトしていない」「職場で結婚したという話をしているが、“奥さん"という前提で話を振られることに苦しさを感じる」
【老後】
(わかったつもり)「高齢者にはLGBTQ+当事者は他の世代と比べて少ないと思う」:50.1%
(ほんとのところ)「50代以上のゲイの友人も多く、少ないとは思えない」「シニア層はそもそもセクシュアリティについての話題との関連性が想起されにくいので、社会の理解度は確かにかなり低いと思う」
こうした比較から、制度や認知が広がる一方で、当事者が日常生活や将来に対して抱える不安や周囲との認識の違いなども浮かび上がった。
電通 第3マーケティング局の大島佳果氏は、「LGBTQ+への認知や関心が広がる一方で、当事者にしか見えない部分や、まだ充分に知られていない現実が存在しているということが見えてきたと感じます。この企画が身の回りの出来事や言葉について、少し立ち止まって考えるきっかけになればと思い、デジタルブックを作成させていただきました」と語った。
このデジタルブックでは、上記の他にもさまざまな「わかったつもり」と「ほんとのところ」が掲載されている。
認知や理解が広がりつつある一方で、当事者が日常の中で感じている違和感や不安は、まだ十分に可視化されていない部分も多い。
今回の調査とデジタルブックは、当事者と非当事者の認識の違いを可視化する取り組みとして、理解を深めるきっかけとなりそうだ。(小野口 輝紀)