さぴおさん 飽食の時代、寿司・焼肉・カレー・スイーツなど、あらゆるものが好きな時に食べられる日本。そんな状況にあって、徹底的に同じものを食べる人も存在する。年間800杯のペースでラーメンを食べている男性、さぴおさん(35歳・@nanairo_za)もその一人。
「ラーメンに人生を捧げている」といっても過言ではない彼は、どのような生活を送っているのだろうか。また、麺類といえば、カロリー・脂質・塩分も気になるところだが、体調や体型の変化はないのか? 本人の口から語ってもらおう。
◆年間800杯、最高記録は1日14杯
ラーメンの食べ歩きを趣味とする人や、専門家の場合は1日1杯以上はラーメンを食べているケースも散見される。それでも年間およそ400杯という計算になる。
「ラーメンは昨日食べたし、今日は違うものにしよう」と考えるような一般層にしてみれば、それでも驚くべき食生活だが、さぴおさんはその上をいく。
「年間だいたい800杯は食べますね。最高で1か月に145杯、1日で14杯を食べたこともあります」
以前は「普通に好き」だった彼が、ラーメンを特別な存在だと感じるようになったのは、2017年頃のことだという。
「前職がアニメ制作で、ものすごく夜型の生活をしていたんですよ。夜中にお腹が空いた時に、気軽に入れるのがラーメン屋。徐々にラーメンの地域性や文化にも興味を持ち始めて一気にのめり込みましたね」
さらに、食べたラーメンのレビューをマニアなら誰もが知る「ラーメンデータベース」に書き込むようになり、沼の深みにハマっていったという。
◆「まだ食べていないラーメン」があると…
規格外の勢いでラーメンを食べ続けるさぴおさん。その背景にあるのは、これまで他の何にも執着したことがないという彼が持つ、ラーメンへの飽くなき好奇心だ。
「世の中に、まだ食べてないラーメンがあることを考えると、いてもたってもいられなくなります。長年、ラーメンを食べてこられた方なら遠征に行っても、1日に5〜7杯くらいに収められると思うんですが、僕はその土地にあるラーメンをできる限り食べたくなります。だから、1日に最高で14杯を食べたのも大阪遠征のときですね」
1日14杯ともなれば、フードファイターにも近いような数字だが、元来大食いという訳ではないという。
「だから、ラーメンが喉元までせり上るほどお腹は満腹でした。それでも、食べたことのないラーメンを食べたいという欲望が勝ってましたね。もはや、本能ではなく執念ですね」
数字が目標ではなく、未知なるラーメンへの探究心ゆえの杯数だったわけだ。とはいえ、ラーメンは「太る食事」というイメージも強い。ここまでラーメンを食べるようになり、さぴおさんの体にはどのくらいの変化があったのか。
「もともと、172センチ/72キロくらいだったんですが、体重は9年で35キロぐらい増えちゃいましたね。今は、これだけラーメンを食べまくっている事実を裏付ける説得力あるボディです(笑)。だから、大阪遠征の時なんかも、たくさん歩くので股ずれがすごくて、パンツを血まみれにしながら食べ歩いていました」
◆健康診断の数値は?
体重には大きな変化があったわけだが、そうなると必然的に心配になるのは健康面。
「実は、健康診断の結果は悪くないんですよ。血糖値や肝機能、コレステロールなどの数値は、今のところ正常です。血圧だけ、正常より少し高いですが、生活指導が入るようなレベルではない程度といったところです」
これだけラーメンを食べて健康診断の数値が正常というのは、かなり驚きだ。とはいえ、年齢を重ねれば数字が一気に悪化するリスクを秘めていることは間違いない。
もちろん、さぴおさんもその点は承知の上。ラーメンを食べながらも他の食事に気を使う部分がある。
「外食だと、ラーメン以外だとしてもどうしても糖質が多くなりますよね。だから、自炊を極力増やして、その際は炭水化物・糖質を取らずにおかずのみにしています。サラダ・まぐろアボカド・魚料理が多いですね」
◆これだけ食べても飽きないワケ
さぴおさんを、ここまで惹きつけるラーメンの魅力は、味だけがもたらすものではない。彼は、「ラーメンは体験」だと語る。
「ネットで調べたり、画像を見ただけじゃわからない部分が多いんですよ。例えば、群馬の『森田屋支店 太田店』というお店に行った時、ラーメンの美味しさはもちろんですが、店主と奥様の夫婦漫才みたいなやりとりを見られた時は楽しいですね。しかも、『ラーメン二郎』くらいボリュームがあるんですが、80歳くらいに見えるおばあちゃんも食べに来ていて、地元にも愛されていることがわかるのも、すごく楽しいです」
SNSで写真や動画が簡単に見られる現代、多くのお出かけが「ネットで見た景色を確認しにいく」になっていないだろうか。しかし、さぴおさんいわく、ラーメンは地方ごとの文化なので「そこでしか体験できない発見」があるのだという。
それを求め、仕事の休みの度に遠征をするように。取材時も遠征スケジュールを次のように話した。
「明日から新潟に1泊、再来週は福島でその次が宮城。その先は、京都に行って翌週は徳島という予定にしています。魚介などが有名な街に行っても、ラーメンばっかりなので、美味しい名産が全然食べられませんけどね(笑)」
◆妻の実家への挨拶前に3杯を食べ歩き
推す対象を持っている人は、あらゆる旅行を推しのために行う。アイドルやバンド好きなら、地方ツアーに合わせて旅行計画を組む人も少なくない。
さぴおさんも、もちろん何度もラーメンを食べ歩くための旅行をしているが、ラーメンのためではない遠出さえも、ラーメンを詰め込んでしまったことがあるという。
これは、今の奥様と結婚する前、向こうの実家に挨拶をするために山口県のとある町を訪れたときのこと。
「都会ではないので、バスが来るのが1時間後ということがありました。その時、妻に『ここで待ってて』と言って、猛ダッシュして3軒巡りましたね。最後の1軒は、バスが来るまで残り15分で入店するようなタイミングだったので、1〜2分で食べきりました。しかも、バス停に戻る時に土砂降りの雨が降ってきて、ダッシュでヘトヘトになったうえ、雨でずぶ濡れになって、妻の前に現れました」
その後、無事に結婚。ラーメンへの情熱が結婚の障害になることはなかったようだ。もちろん、奥様の寛大さがあってこその現在であることは間違いない。
「妻も、僕の外食に付き合ってくれることは多いです。でも、以前に9食連続ラーメンに行こうとしたら、さすがに拒否されました(笑)」
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現在は、ホビーメーカーのIT事業部に勤めるさぴおさん。将来的には、「ウマ娘」ならぬ「ラーメン娘」のようなコンテンツを作りたいと野望を語る。
ラーメンを長く食べ続けるためにも、くれぐれも健康に気をつけながら、その愛を育んでいってほしい。
<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。