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KDDIは、固定回線の新サービス「auひかりプラス」の提供を9月17日に開始する。これまで、速度や料金以外にアップデートの少なかった光回線だが、auひかりプラスでは、新たに5G SAを組み合わせる新機能を採用。これによって即時開通が可能になったほか、災害、障害時のバックアップとしてもモバイル回線が活用される。音声通話も光回線ではなく、モバイル回線側で提供する仕組みだ。
auひかりプラスはプロバイダーでKDDIの「au one net」を選択できない代わりに、NTTの光コラボを使った光回線にも対応しており、ユーザーがシームレスにサービスを選択できる。こうした座組からは、固定回線の販路を広げるのと同時に、グループ間の重複を減らし、事業の効率化を図りたいKDDIの狙いも垣間見えた。
●光とモバイルをルーターで束ねる、魅力は開通の早さや冗長化にあり
auひかりプラスは、光回線とモバイル回線を束ねて提供するサービス。ユーザーにレンタルするルーターにモバイル通信対応のモジュールを載せており、どちらか一方で通信できる仕組みだ。光回線の利用に必要なルーターと、5G対応のホームルーターを1台に集約したようなデバイスといえる。モバイル対応の主なメリットは3つあるという。
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KDDIのパーソナル事業統括本部 事業戦略本部で事業推進部長を務める相原円氏は、1つ目の利点として、通常の固定回線は「開通までの時間が非常に長い」ことを挙げる。物理的に光回線を引き、工事も必要になるため、無線を使うモバイル回線とは違い、ルーターが自宅に届いてもすぐにサービスを受けられない。auひかりプラスでは、この点を解決している。
ユーザーの自宅に5Gと光回線の両方に対応した「ハイブリッドホームルーター」が届く。あとは「箱を開け、電源を入れればすぐに使える」(同)。光回線が開通するまでの間は、“つなぎ”としてモバイル回線を使うというわけだ。また、光回線が開通しても、Wi-Fiなどの設定を変える必要なく、そのまま使い続けることができる。
これまでも、光回線が開通するまでの間、「モバイルルーターをお貸ししてタイムラグを補う取り組みが個別に行われていた」(同)というが、これだと機器自体が変わってしまうため、短時間の間に再設定をしなければならない。また、電話も当初は利用できない。モバイル回線ですぐに使い始めて、そのまま継続可能な点は従来との大きな違いだ。
また、光回線開通後も、5Gのモバイル回線は解約されるのではなく、そのままの形でスタンバイする。これによって、「障害が起きてしまった際に、5Gに切り替えて使える仕組みを持っている」(同)という。何らかの形で光ファイバーが途切れてしまったり、プロバイダー側に問題が起きたりしても、モバイル回線で通信を継続できる格好だ。通信障害だけでなく、災害時の備えにもなる。
最近では、「宅内にホームIoTデバイスが広がっていたり、(リモートワークで)タブレットやPCが常時ぶら下がったりしている。常につながってほしいデバイスが増えている」(同)状況。「スマートロックはネット接続が前提だし、カメラも常にアクセスできるようにしておきたい。家のエアコンを外からコントロールするのも当たり前になっている」(同)。このような時に、回線の冗長化を図れるのは安心感が高い。
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提供当初は、回線の切り替えは手動になってしまうが、「もっと磨き込んでいくべきだと思っている」(同)といい、現在、新機能として自動切り替え機能を開発しているという。これが搭載されれば、光回線が途切れてしまった場合でも、ユーザーは意識せず、モバイル回線で通信を継続できるようになる。新機能はファームウェアのアップデートとして、年度末までに提供される。
●固定電話もVoLTEで、光コラボでもau回線で通話が可能に
先の2つとやや趣は異なるが、3つ目のメリットになるのが音声通話だ。auひかりプラスは、KDDIの自社回線を使ったauひかりだけでなく、NTT東日本、西日本が各プロバイダーなどに卸で回線を貸し出し、ユーザーにサービスを提供する「光コラボ」の回線にも対応する。また、モバイル回線単独での提供も行う。ユーザーの住居の環境に合わせて、回線を選べるようにするためで、大本の回線を意識する必要がない。
一方で、音声通話はいずれもモバイル回線で4GのVoLTEとして提供される。光コラボの回線には、NTT東西が「ひかり電話」を卸しており、auひかりプラスでも他社から移行した際には選択可能だというが、「メインの電話サービスはVoLTE」(同)になる。そのため、光コラボでは光回線がNTT東西、バックアップのモバイル回線と電話がKDDIという形になる。
このような仕様になっているのは、「自社固有の付加価値を提供できる」(同)からだ。auひかりプラスでは、電話サービスもパックになったオプションの「Wi-Fiパック」も用意されているが、ここには電話そのものだけでなく、迷惑電話発着信ブロックもつく。「怪しい番号からの電話は、データベースを使ったブラックリスト的なものでブロックする。発信についても怪しいものは止める」仕様だ。
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光コラボでひかり電話をそのまま提供するのは比較的簡単にできるが、これだと、KDDI側がサービスをコントロールするのが難しくなる。とはいえ、他社の固定回線で利用できる単体の電話サービスも提供していない。これに対し、VoLTEであればもともとモバイル回線向けで使っているため、そのノウハウやサービスも継承できる。電話をあえてモバイル回線経由にすることで、付加価値を出したというわけだ。
光回線とモバイル回線の両方を提供するとなると、料金が心配になってくるが、auひかりプラスは、料金も大きくは変えていない。10Gbpsの「auひかり ホーム10ギガ」は、ネット利用料がプロバイダー利用料込みで7128円。これに対し、ビッグローブの提供する「BIGLOBE光プラス by auひかりプラス」は、ホーム10ギガのネット利用料が6380円で提供される。
値下げのようにも見えるが、auひかりプラスでは、ハイブリッドホームルーターのレンタル料が含まれていないため、この料金が別途858円かかる。電話については、770円のWi-Fiパック料金に含まれており、全て契約すると8008円になる。さらに、auひかりではWi-Fiがレンタル対応だ。一方のauひかりは、電話利用料がauひかりプラスのWi-Fiパックと同じ770円のため、合計額は7898円。わずかに値上げされているものの、モバイル回線が使えて、かつWi-Fiまでこの値段に含まれると考えるとお得感がある。
また、auゴールドカードで料金を支払うと、料金に対して10%の還元を受けられる。auでんきとのセット割も用意されており、2つをまとめると、Wi-Fiパックが24カ月間330円、25カ月目以降も110円の割引が適用される。回線の冗長化ができ、かつ料金も大きくは変わらないというわけだ。
●固定の主力はauひかりプラスに、光コラボも生かした拡大路線か
ここでの比較にビッグローブのプランを持ち出したのは、auひかりプラスの料金がプロバイダーごとに異なるからだ。ここが、auひかりとの大きな違いといえる。また、auひかりでは、KDDIとユーザーが直接契約し、プロバイダーで「au one net」を選択できるが、auひかりプラスはBIGLOBE、So-net、@niftyが自社のサービスを組み込める。KDDIがau one netとセットにしたプランは用意されていない。
相原氏も、「au one netをやめてしまうわけではない」としながら、「グループの中でもプロバイダーがある」としてBIGLOBEの名前を挙げた。「BIGLOBEにサービスを寄せ、回線として取り込んできた光コラボや、バックボーンから先のビッグローブが作り込んできたものを生かせる」(同)ことを狙ったという。
その背景には、グループ内で競合しているサービスを整理するという目的もありそうだ。au one netとBIGLOBEはともにプロバイダーで、サービスの差別化もしづらい。グループ内で競合している形にもなるうえに、BIGLOBEは光コラボの「BIGLOBE光」も提供しており、契約数が多い。サービスエリアの広さという意味でも優位性がある。
また、auひかりプラスでは、NTT東西の光コラボも束ねて提供するため、KDDIにとっては、販売を全国区に広げることが可能になる。auひかりは、NTT東西の光コラボと比べてエリアが限定されるが、このサービスであればモバイル回線側では契約が取れる。KDDIの光が引かれていない地域でも、auのサービスとしてBIGLOBEやSo-net、@niftyの光コラボを提案できるからだ。
「全国シームレスに使えるプラットフォームになっている」(同)のは、これまでのauひかりとの大きな違いだ。自社のサービスとして光コラボを提供できず、展開エリアが限定されるのもau one netでauひかりプラスを提供しない理由の1つと見ていいだろう。裏を返すと、auひかりプラスはKDDIにとってもこれまで以上に訴求がしやすいサービスになっているといえる。
今後は「auひかりプラスをオススメすることを強めていく」(同)のは、そのためだ。auひかりプラスにはないVDSLしかない環境など、「局所的にはauひかりが適する場面はある」(同)が、固定回線の主力サービスはauひかりプラスという位置付けになる。
ただし、現時点では宅内をVDSLでつなぐタイプの回線は用意されておらず、古いマンションなどでは契約ができない。「10Gbpsが主流になっていく中で、VDSLで速度向上するのには限界がある」(同)と判断したからだという。こうした環境のユーザーには、従来通り、VDSLに対応したauひかりを案内していくことになるという。
一方で、VDSLだと光回線とモバイル回線の速度が逆転しているケースがある(auひかりはG.fast方式が使えれば下り最大664Mbpsまで速度を向上できるが、そうでない場合は100Mbpsにとどまる)。大きなファイルをダウンロードするときだけルーター側でモバイル回線に切り替えられれば、速度はカバーできる。また、一部のスマホが実装している、Wi-Fiとモバイル回線を束ねて速度を向上させるような機能があれば、VDSLの速度向上に貢献する可能性もある。
現状では、光回線とモバイルはどちらか一方を使う形になっており、2つの回線を同時に利用する機能は提供されていない。相原氏は、その理由を「遅延の差がまだまだあり、光回線に5Gを混ぜることで優れたユーザー体験を提供できない」からだと話す。とはいえ、まさに筆者がそうだが、VDSLを使っていると遅延よりも速度を取りたい場面がある。相原氏も「5Gの進化に伴って検討したい」(同)としていたが、今後の提供範囲拡大や機能の進化にも期待したい。
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