(左から)プライム・ビデオの大石圭介氏、ケリー・デイ氏、ゴラフ・ガンジー氏 (C)ORICON NewS inc. 動画配信サービス「Prime Video(プライム・ビデオ)」は、今後2年間で日本発のオリジナル作品へのコンテンツ投資を2倍以上に拡大する方針を発表した。3日に都内で開催された戦略発表会「Prime Video Presents 東京」では、実写ドラマや映画、アニメ、恋愛リアリティー、音楽ドキュメンタリーまで、Prime Originalおよび独占配信作品9作の最新情報が発表された。
【画像】戦略発表会で披露された9作品
発表会にも登壇したプライム・ビデオ ヴァイスプレジデント インターナショナル統括のケリー・デイ氏、同 ヴァイスプレジデント アジア・オセアニア統括のゴラフ・ガンジー氏、同ジャパンカントリーマネージャーの大石圭介氏に、投資拡大で何が変わるのか、日本発コンテンツにどのような可能性を見いだしているのかを聞いた。
■オリジナル作品のラインアップを強化
Prime Videoが日本でサービスを開始したのは2015年。デイ氏は、日本を「事業を展開する国の中でも最大規模の市場の一つ」と位置づける。
「買い付け作品など、ほかの作品が重要だった時期もありましたが、今後はオリジナル作品のラインアップを特に強化します。漫画や書籍など既存IPの映像化に加え、台本のない番組のオリジナルフォーマット、映画やドラマのオリジナルシリーズなども含まれます」
その理由について、「日本のお客様に、より深く楽しんでいただける余地は、まだ非常に大きい」と説明。世界への展開にも期待を寄せる。
「日本には、世界に向けてコンテンツを生み出し、届ける国として、これまで以上に大きな存在になれる可能性があります」
ガンジー氏は、オリジナル作品を生み出す日本市場への関心は一貫して高いと補足する。第三者機関の調査によると、2025年に日本で定額制動画配信サービスを通じてアニメを視聴した人のうち、約47%がPrime Videoを利用していたといい、「アニメを見る場所として、それほど多くのお客様に選んでいただいています」と手応えを語った。
大石氏も、『私の夫と結婚して』『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』『沈黙の艦隊』など、日本発のオリジナル作品が成果を上げてきたことを投資拡大の背景に挙げる。
「多様なお客様のニーズを満たすには、私たち自身がさらに多くのオリジナル作品を作る必要がある。それが、投資を拡大する大きな理由です」
新作ラインアップには、園山ゆきのの漫画を大西流星(なにわ男子)主演で実写化し、メイクアップアーティストを目指す元モデルの青春を描く『ブレス』(2027年春配信)、森七菜と蒔田彩珠がダブル主演を務め、身近な遊びを進化させた頭脳戦に挑む『地雷グリコ』(11月13日配信)が並ぶ。
交際経験のない男女10人が初めての恋人を探す『初めての恋人になってください』(2027年夏配信)や、国内外で支持を集めたアニメ『日本三國』の続編制作も決定した。
日渡早紀のSF少女漫画を広瀬アリス主演、三木孝浩監督で実写化する『ぼくの地球を守って』(2027年秋配信)、阪元裕吾監督が山田裕貴と山田杏奈を迎えたアクション映画『スーパーモブニンジャ』(同年2月19日配信)、大沢たかおが主演とプロデューサーを務めるシリーズ第3作『沈黙の艦隊 目覚めよ、ニューヨーク』(同年夏配信)も控える。
さらに、是枝裕和監督が総監督を務め、嵐の5大ドームツアーの舞台裏を追ったドキュメンタリーフィルム『5 - 嵐という時間 -』(12月15日配信)や、日向夏の人気小説『薬屋のひとりごと』を芦田愛菜主演で実写ドラマ化し、2028年に配信することも発表された。
■海外向けより、まず「日本の心に刺さる作品」
これらの作品は、初めから海外でのヒットを狙って選ばれたのか。大石氏は「まず考えているのは、日本のお客様にしっかり届く作品をどう作るかということです」と語る。
「最初から海外だけを狙うのではなく、まず日本のお客様の心に刺さる作品を作ろうとしています。その結果として、世界へ広がることはあると思います」
その一例が、日本の若者の“恋愛離れ”に着目した恋愛リアリティー番組『初めての恋人になってください』だ。初めての恋でうまく意思を伝えられないことや、友情、人間関係をどう築くかといった悩みは、海外の若者にも通じる。
「世界的なヒットを意図的に狙うというより、日本のお客様に届いた結果として、世界にも広がってくれればと思っています」(大石氏)
■日本での支持が世界へ広がる
日本で支持された作品が世界へ広がる環境は、すでに整いつつある。デイ氏は、動画配信サービスとSNSの普及によって、この10年で作品との出会い方が大きく変わったと分析する。
「以前は、アメリカが数多くのコンテンツを制作し、それを世界へ配給するという流れが中心でした。一方で、いまはある国で面白い作品が生まれれば、SNSを通じた口コミによって世界へ広がり、どこの国で作られたかを意識せずに見てもらえます」
字幕や吹き替えへの投資も、作品が国境を越える後押しになる。Prime Videoは現在、20を超える国でオリジナル作品を制作しており、インド作品や韓国ドラマ、日本のアニメなどが各国の視聴者を獲得している。
「いまでは、どこで生まれた物語にも世界的なヒットにつながる可能性があります」(デイ氏)
日本発では、『日本三國』がPrime Videoの非英語シリーズ世界ランキングで4週にわたって2位を記録。日本発のフォーマット『LOL: Last One Laughing』は、25の国と地域で現地制作され、各地でヒットしている。
■“日本らしさ”が世界で武器になる
デイ氏は、成長や恋愛といった「普遍的なテーマ」が、作品を世界へ広げる力になると説明する。一方で、世界の視聴者に合わせて均質な作品を作ればいいわけではない。
ガンジー氏が重視するのは、日本の視聴者にとっての「感情的な真実味」と、その地域ならではの「文化的な固有性」だ。「日本で暮らす人々の実感や経験を物語に映し出すことで、作品そのものを超えて文化に影響を与えられます。登場人物が何年にもわたって人々の心の中で生き続け、新しい文化的な共通言語になるような物語を作りたいと思っています」
大石氏も「いまの日本の人々や社会をきちんと映し、日本の人たちが考えていること、感じていること、その機微を捉えた作品を見たい」と期待する。
誰もが共感できるテーマを持ちながら、日本で暮らす人々の具体的な感情や経験を描く。その両方を備えることが、日本発作品の強みになるという。
■ここでしか見られない作品を増やす
日本のクリエイターに何を求めるのか。デイ氏が第一に挙げたのは「物語のオリジナリティ」だ。既存IPを映像化する場合にも、原作を尊重しながら独自の価値を生み出す発想と、明確なビジョンが欠かせないという。
人気ゲームを実写化したドラマ『フォールアウト』も、ジョナサン・ノーランのビジョンによって、原作に忠実でありながら、映像作品として単独でも成立する物語になったと評価する。
「情報やコンテンツがあふれる環境の中で存在感を示し、視聴者の心に深く届く、力強いオリジナルストーリーを求めています」(デイ氏)
大石氏は、日本のクリエイターに求める姿勢を、さらに端的な言葉で表した。
「クリエイターには、『自分だけがこの作品を作れる』という絶対的な確信を持って企画を持ち込んでほしいです。お客様に『ここへ来れば、ほかにはない作品が見られる』と感じていただくには、クリエイターが自分にしか作れないものを持っていることが成功の鍵になります」