「人間の感情は単純じゃない」金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』土井裕泰監督が明かす作品のテーマ 【ドラマTopics】

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2026年09月09日 17:06  TBS NEWS DIG

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金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』がついに最終話を迎える。とある事故がきっかけで、当たり前に続いていくと思っていた幸せな日常が、突如崩れ去ってしまった二組の夫婦の喪失から始まる“愛”と“秘密”を描く本作。

【写真で見る】金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』

作品について、脚本の生方美久さんは「共感や感動を目指した物語ではない」、出演者たちからは「価値観を揺さぶる作品」と語る。物語がどこへ向かうのか分からないまま、二組の夫婦に視聴者が引きつけられる理由は何なのか。

このドラマが描きたかったテーマや表現したかったこと、作品と音楽のつながりなど、演出を手がける上で重要なものを土井裕泰監督に聞いた。

視点を変えると日常がドラマになる

本作は、ミステリーやサスペンス、ラブストーリーや愛憎劇、どのジャンルにも分けられないことが大きな魅力となっている。世を揺るがす大事件や大きな組織が絡むわけでもなく、普通に生活している、いわゆる一般人といっていいキャラクターたちの行動について、考察が盛り上がるというのも、この作品ならではないだろうか。

劇的な出来事がなくても、一人一人の人生にはそれぞれのドラマがある。そのドラマが生まれる基本となるものは「自分以外の人が考えていることは分からない」ということだと土井監督は話す。

「家族でも夫婦でも、どんなに近い人であっても、すべてを理解し合えているわけではありません。言えないこと、言わないことをそれぞれ抱えながら、他者と付き合い、普段の生活を送っている」

たしかに人の心が分かる能力を持つエスパーでもない限り、隣にいる人が何を考えているのか完璧に分かる人はいないのではないだろう。土井監督は、「普段の生活の視点を変えてみると、普通の人生がサスペンスにもミステリーになる」と続ける。

「犯人が誰か、ラスボスが誰かといった事件でなくても、普段の生活で何かが起きたときに、『自分はこの人の何を知っていたんだろう』となりますよね。そんなところからドラマが生まれるということを、今作で改めて感じました」

本作で描かれた二組の幸せな夫婦にも互いに“言わないこと”があり、バス事故をきっかけに、理解していたと思っていた相手の知らない面が明らかになった。そこからドラマが動き出す。

「例えば恋愛ドラマでも、『相手のことをもっと知りたい』『私を分かってほしい』という思いが生まれて、それが物語の始まりになる。ジャンルに関わらず、 “他者とどうやって繋がっていくのか”ということが常にテーマなんだと思います」

蒼井優の芝居力で感じた「ドラマを作るとはこういうこと」

本作の撮影を振り返り、土井監督は印象的だったことを教えてくれた。

「普段思っていることや人間の中で起きていること。私たちが作っているものは、そういった、“名前のつけようのない何か”を目に見える形にして表現することじゃないか。今回蒼井優さんの芝居を見ていて、改めてそう強く感じました」

例えば第1話で、咲子(演:蒼井優さん)の夫の充(演:松山ケンイチさん)がバス事故に遭い、行方不明になったシーン。充の遺品を確認している咲子が、ものすごく悲しいのに笑ってしまう描写があった。

「喜怒哀楽、人の感情はそんなに単純じゃない。何か予期せぬ出来事に遭遇したときに自分でも理解できない何かがあふれ出てしまう。蒼井さんの芝居は、咲子という人間の中に“名前のつけようのない感情”が起きていることを、ありのまま見せてくれました。ドラマを作るとはこういうことなんだと改めて教えられたように思いました」

さらに土井監督は、本作について「あえてジャンルに属さないことを目指している感じがあった」と明かす。

「 “名前のつけようのない感情”だけではなく、ドラマ自体もサスペンスやラブストーリー、不倫ものというような、単純なジャンルにはくくれない。だからこそ、見方を押し付けず、いろいろな感じ方ができる作品になっていればいいなと思います」

作品における主題歌の重要性

90年代からテレビドラマの仕事を始めた土井監督にとって、主題歌がドラマのどこで、どのように流れるのかということは、「自然と体に刷り込まれているほど重要なものだった」という。物語のここぞという場面で、主題歌が流れると「きた!」と思う。そういうドラマの作り方が自身の中に「細胞レベルで組み込まれている」そうだ。

今作で主題歌を担当するのは、2001年4月期の日曜劇場『Love Story』以来、TBSドラマの主題歌を手がけるのは25年ぶりとなるスピッツ。新曲「見知らぬ糸」はドラマのために書き下ろされたものだ。

スピッツの草野マサムネさんは、「今まで観たことがない新しいタイプのストーリーだったのであえて『リンクし過ぎない』ように、でも結果的にそれによってドラマにもうひと味、彩りが加えられたらと思いながら作りました」とコメントしている。

最初に曲を聴いたときのことを尋ねると「ドラマの意図やトーンなどの制作サイドのオーダーを汲んだ上で、曲も詩の世界もスピッツならではのもの。草野さんのフィルターを通した解釈で物語の深部にアプローチしていて、『プロフェッショナルの仕事だ』と本当に感動しました」

最初に台本を読んだときから、第1話の最後の樹生(演:中島歩さん)のセリフ「あなたの夫、僕の妻と不倫してましたよ」をきっかけに主題歌が流れるのをずっとイメージしていたそうだ。

「編集で初めて映像に曲をつけたときに、本当にバチっとピースがハマったと思いました。最後に主題歌を入れたことで、この作品の目指す世界がクリアに、豊かになったという感じ。連ドラならではの良さをひさびさに体感しました」

本作には、土井監督の他にも数人の演出担当がいる。各回、それぞれが主題歌をどのタイミングで流すのか。「次どうなっちゃうの?」と、次へつながるように、それぞれがどこでどう使うかを考えている。

「それが連続ドラマの面白さでもあると思っていますし、今回みんな楽しんで作れているんじゃないかな」

気になる最終話「どういう見方をしてもいい」

テレビドラマ以外に、映画、配信プラットフォームなど、様々な形態で作品を作っている土井監督。地上波の連続ドラマならではの部分について聞いてみた。

「制作しながら、同時に放送もされていくので、リアルタイムで作っている緊張感はあります。視聴者の反応を聞きながらドラマを作るのは、地上波の連続ドラマならではのライブ感ですね」

そのライブ感ゆえに、こんな撮影中のエピソードも。充は第5話のラストまで咲子の前に姿を見せていなかった。しかし、撮影は放送する回よりも先の回を行なっているため、撮影現場では充を見られないように細心の注意を払っていたそうだ。「見られたらいけないと必死でした(笑)」

これまで、不倫疑惑や充の失踪、咲子の過去など、いくつもの展開を経て、そのたびに話題を呼んできた本作。土井監督は登場人物について、「ある意味、みんな完全ではない人たちだと思う」と話す。そんな彼らの結末はどこに向かうのか。

「人それぞれ、どういう見方をしてもいい、そんな幅を持ったドラマだと思います。彼らが最後に何を選びとっていくのか、自分だったらどんな選択をするのかを一緒に考えながら見ていただければ嬉しいです」

作り手として、ドラマで描きたいことや伝えたいテーマ、表現したいことはあっても、結局は受け取る側が自由に楽しんでくれたらいい。そんな思いが伝わってきた。

これ以上ないほどの現代を生きる人たちの人間ドラマ。他者とのつながりを考えさせられる。

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  • 驚きの連続だから最終回は考察しないで見ることに決めた。
    • イイネ!2
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