情報伝達高まると睡眠誘導=脳神経同士の接続部で発見―マウス実験で・東大と筑波大など
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2024年11月26日 07:31 時事通信社
脳の神経細胞同士が接続する「シナプス」と呼ばれる部分で、情報の伝達効率が高まって結び付きが強まると睡眠が誘導され、眠った後は結び付きが弱まることが、マウスの実験で明らかになった。東京大と筑波大、理化学研究所の研究チームが25日までに米科学誌サイエンスに発表した。
シナプスは目が覚めて活動中に得た情報を記憶、学習し、整理するのに重要な役割を果たしていると考えられている。睡眠が不足すると長く深い眠りによって量や質を保とうとする仕組みの解明が進めば、マウスと同じ哺乳類のヒトでも睡眠障害や不眠症の治療に役立つと期待される。
シナプスでは、情報を送信する側の神経細胞の軸索からグルタミン酸などの神経伝達物質が放出され、受信側の神経細胞の樹状突起に多数生えたとげのような「スパイン」で受け取られる。起床中の経験や学習により、神経伝達物質が活発に流れるようになると、スパインが大きくなって情報伝達効率が高まる。
東大の河西春郎特任教授らが、マウスの脳の前頭葉でスパインを一時的に大きくし、情報伝達効率を人為的に高める操作を行ったところ、睡眠が誘導され、深い眠りを示す脳波が強まった。目覚めた後は情報伝達効率が下がり、元に戻った。
睡眠の誘導と目覚めを巡っては、東大の上田泰己教授らが、樹状突起で働くたんぱく質にリン酸基と呼ばれる物質を付け加える「リン酸化」と、取り除く「脱リン酸化」の役割を解明したと発表している。マウス実験の結果、脱リン酸化を担う酵素の「PP1」と「カルシニューリン」が活性化すると睡眠が促され、リン酸化酵素の「PKA」が活性化すると目覚めることを発見した。
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