政府が、防衛装備品の輸出促進に注力している。国際競争力を向上させるため、年内に「防衛産業戦略」を策定する方針。市場拡大を通じて防衛産業の基盤強化を図りたい考えだ。「米国第一主義」を掲げるトランプ次期米大統領の復権後も視野に、官民一体で取り組みを加速させる。
新たな戦略は、装備品輸出に関する中長期的な目標を示すもの。防衛省や経済産業省などが連携し、産業界の意見も踏まえて取りまとめる。5年ごとの改定を想定する。
日本の防衛産業は自衛隊向けの需要が大半。「ガラパゴス化している」(防衛省関係者)とも指摘される。利益率の低さなどを背景に撤退する企業が相次ぎ、政府は2022年策定の防衛力整備計画で、装備品輸出を「防衛産業の成長性の確保にも効果的」と位置付け、支援に本腰を入れている。
政府が今後の主力事業と期待するのは英国、イタリアと進める次期戦闘機の共同開発だ。第三国への輸出を解禁するため、昨年3月に防衛装備移転三原則の運用指針を改定。25年度予算案に開発費として1087億円を計上した。
オーストラリア海軍の次期フリゲート艦導入を巡っても、共同開発の指名獲得でドイツと競合。日本側は、官民合同推進委員会を立ち上げて「もがみ」型護衛艦の売り込みを進めている。
一方、政府内にはトランプ氏の再登板で、防衛産業の育成方針が揺らぐことを懸念する向きもある。1期目の在任時に米国製装備品の大量購入を迫ってきた経緯があるためだ。防衛省関係者は「さまざまな注文を付けてくるかもしれない」と身構える。
防衛産業を巡っては、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化などを踏まえ、各国が国家戦略の策定など強化を進めている。