限定公開( 3 )
中島哲也監督(65)が21日、noteを開設した。その中で、2014年(平26)の監督作「渇き。」に出演した女優との間で性暴力シーンを巡るトラブルがあったと報じられたことに関し、コメントを発表した。今年1月1日に、打海文三氏の小説を構想15年を経て実写化する、同監督にとって18年「来る」以来7年ぶりの監督作「時には懺悔を」の製作と6月の公開を発表したが「渇き。」をめぐるトラブルに関し、同監督から説明、コメントが一切、出されておらず、対応を疑問視する声が上がっていた。
一部報道では、当該女優が脚本を読み性暴力シーンを了承しつつ、バストトップを露出する描写はNGという前提だったものの、不本意な形で当該シーンの撮影が行われたと指摘。編集でカットするとの説明がありながら、関係者が集まった試写ではそのまま上映され、その後も協議を重ねたが薄いぼかしがかかっただけだったため、同女優は自殺未遂を繰り返し、芸能界から去ったなどと報じられた。
「時には懺悔を」製作委員会も21日、文書を発表した。同作は、重度の障がいを抱える子どもを通して描く、親子の絆の物語。「この度、本作品の中島哲也監督に関する過去作品の報道の件に関しまして、同監督よりコメントが公表されました。当製作委員会では、本作品の製作にあたりまして、当該報道で指摘されている事案を慎重に確認し、製作を決定しておりますが、当該事案や本作品の内容等も踏まえたうえで、十分に協議し、以下の各取り組みを実施しておりますので、ご説明させていただきます」として、以下、説明した。
<1>出演者とのコミュニケーションについて
出演者と制作スタッフのコミュニケーション不足や意思疎通の行き違いなどを防ぐため、出演者と監督をはじめとする制作スタッフ間で適切に情報共有ができる体制を整えました。特に出演者の心身への配慮が必要となる身体的接触や、感情表現が大きいシーンを撮影する際には、インティマシーコーディネーターにもご参加いただき、出演者とスタッフの間の意思疎通の適正化、円滑化を図り、出演者やスタッフの身体的、精神的なケアに重点を置いて取り組みました。また、心理カウンセラーにも定期的に撮影現場にお越しいただき、出演者やスタッフが、直接カウンセリングを受けられる体制を整えるとともに、メールでも相談ができる環境を整えました。これにより、出演者やスタッフが、誰にも相談できない悩みを抱えたまま制作が進むことがないよう最大限配慮いたしました。
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<2>障がいをお持ちのお子さまへの配慮について
本作品は、重度の障がいがある子どもを通じて、家族の絆や、さまざまな立場にある周囲の大人の心情・心の動きを、リアルに表現する内容となっており、障がいのある子どもを含む多くのお子さまにご出演いただいています。そのためにまずは、何よりもお子さまの安全と健康を最優先に考え重度の障がいがある子どものケアに精通している専門家や、救急救命士の資格を持つスタッフが撮影現場に常駐することで、出演者の健康状態や心理状態を常に見守りながら撮影を進めました。また、小児医療・福祉分野の専門家をスタッフとして迎え、お互いを知り合うことを大切にし、障がいのある子どもとご家族の意思やお気持ちを尊重しながら、コミュニケーションをとりやすい関係づくりや、合理的配慮の視点から撮影に参加しやすい環境づくりに取り組みました。具体的なシーンの撮影にあたっては、ご家族と何度も話し合いを重ね、できる限り、お子さまの体調に配慮した撮影スケジュールや撮影方法を採用いたしました。また、撮影時には常にご家族にもお子さまのそばにいていただき、1シーン・1カットごとにご家族の方にご確認いただきながら、撮影を進めました。
<3>ハラスメント講習の実施
本作品の撮影前に、すべてのスタッフを対象としたハラスメント防止講習を行い、出演者やスタッフ同士のやりとりにおいてハラスメントが発生しないように徹底した注意喚起を図り、安心して撮影に取り組める現場づくりに努めました。
中島監督は、21日に開設したnoteの中で「私が『渇き。』において遭遇した不幸な出来事の大きな原因は、監督である私と出演者A子さんの間に正常なコミュニケーションが成立していなかったこと、私とA子さんの間にあまりにも多くのスタッフがおり、結果、監督である私の意図はA子さんに正しく伝わらず、またA子さんが役を演じる上での不安や不都合が監督の私にまでダイレクトに届いてこなかったということでした」と、A子さんとのコミュニケーション不全を認め、俳優との間に多くのスタッフがいるシステムが原因だとした。
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その上で「今思い出しても、とても情け無いことです。この問題は制作体制をなるべくシンプルなものに改善し、かつインティマシーコーディネーターに入ってもらい両者の立場を尊重し丁寧に伝え合うことで、完全とは言えぬまでも多くの部分が改善されたように思います」と、反省をし、製作システムを改善したと強調していた。
「時には懺悔を」製作委員会は「私たちは、制作現場におけるハラスメント等に関する問題を重く受け止め、すべての関係者が安心して制作に参加できる環境を守り続けるため、今後も日々改善に努めてまいります」と説明。「また、皆様の信頼を取り戻し、よりよい作品をお届けすることが、映画制作に携わる者としての責務であると考えております。今回の件で、多大なるご心配をおかけしました皆様に、深くお詫び申し上げます」と、映画の製作・公開の発表後、一部で疑問の声が上がったことなどに対し、謝罪した。
◆「時には懺悔を」中島監督が、およそ20年前に原作小説に出会い、映画化にこぎ着けた。主演の西島秀俊(53)と共演の満島ひかり(39)とは初タッグを組む。さらに黒木華(34)宮藤官九郎(54)柴咲コウ(43)塚本晋也(64)片岡鶴太郎(70)佐藤二朗(55)役所広司(68)と、日本映画界の名優が名を連ねた。西島は家族との不和を抱え、家族から目を背けながら生きる男・佐竹、満島は娘に捨てられた女・聡子、宮藤は子を生きる糧にした男・明野、黒木は産んだ子を愛せなかった女・民恵、佐藤は他者に関心を持てなかった男・米本、柴咲は子に全てをささげ尽くした女・由紀をそれぞれ演じた。
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