米国、ウクライナなどと共に日本の海上自衛隊員も参加した黒海での多国間演習「シーブリーズ」。機雷掃海訓練に重点が置かれた=2024年9月、ブルガリア・バルナ沖(米海軍提供) 海上自衛隊が昨秋、ブルガリア沖の黒海で行われた対機雷戦を重視した多国間演習に隊員10人を派遣し、ウクライナや米国と機雷掃海訓練を実施していたことが22日、米海軍や防衛省への取材で分かった。
ウクライナ南部とロシアに支配されたクリミア半島は黒海に面している。黒海は欧州と西アジアの間に位置しており、世界的な穀物輸出国であるウクライナのシーレーン(海上交通路)だが、2022年のロシア侵攻後、敷設されていた機雷が漂流して商船の安全が脅かされている。北大西洋条約機構(NATO)加盟国はウクライナの機雷掃海能力向上を目指しており、海自もノウハウを共有することで支援した形だ。
演習は「黒海の航行の自由」などを目的にした「シーブリーズ」。NATO加盟国も参加し、欧州で定期的に実施されている。海自は21年にオブザーバーとして初参加し、23年には実際に訓練を行う隊員1人を英国での演習に派遣。24年9月にブルガリア・バルナ沖の黒海で行われた対機雷戦の演習には10人を派遣し、米軍やウクライナ軍などと機雷の水中処分や潜水訓練を実施した。
防衛省は「演習参加は日本とウクライナの防衛交流進展の観点から意義深いと認識している。訓練を通してウクライナの機雷掃海技量も高まる」としている。
米海軍によると、ロシアの侵攻後、黒海では120個以上の浮遊機雷が見つかり、うち約8割がウクライナ近海だった。国連専門機関である国際海事機関(IMO)は「(浮遊機雷について)22年に加盟国に発出した注意喚起は維持されている」としており、影響の長期化も懸念される。英国やオランダはウクライナへの掃海艇供与を決めたが、地中海などから黒海につながるトルコの海峡は国際条約に基づき、ロシアの侵攻後は軍艦通過が認められず、引き渡しに至っていない。
海自の機雷掃海能力は高く、湾岸戦争後の1991年にはペルシャ湾に掃海艇部隊が派遣された。海自が国際貢献として行う機雷掃海は、憲法が禁止する武力行使にならないよう、完全な停戦とともに、遺棄機雷の認定や、沿岸国の同意といった条件を満たす必要がある。
政府・与党関係者は「厳しい安全保障環境を背景に日本とNATO、ウクライナの関係は深まっている。停戦が実現すれば自衛隊が参画可能な復興支援があるのか。欧州の動向も見ながらさまざまな選択肢を議論することになる」と話した。