船底に付着するフジツボ(電力中央研究所の野方靖行上席研究員提供) 北海道大の梅沢大樹准教授と電力中央研究所の野方靖行上席研究員らの研究チームは6日までに、フジツボが船底に付着するのを防ぐ新たな化合物を開発した。毒性が低いのが特長で、船の燃費を保ちつつ、海洋環境にも優しい船底塗料への応用が期待される。
フジツボは幼生のころは海中を浮遊し、成体になる際に船底や岩場などに群生して固着する性質がある。船底にフジツボが固着すると、水中での抵抗が大きくなるため、船の推進効率は低下する。最大4割燃費が悪化するとの研究もある。
このため、船底には通常、フジツボの付着を防ぐ「防汚剤」が塗布されるが、現在使用されているのは毒性によりフジツボを殺す「生物殺傷型」がほとんど。海洋環境への影響も懸念されていた。
梅沢氏らは、複数のアミノ酸がつながったペプチド(小型たんぱく質)の一種「ドラスタチン16」という化合物に着目。アメフラシがフジツボの付着を防ぐために出しているとみられる物質で、毒性は低いものの、合成するには複雑な過程が必要だった。
研究チームは、ドラスタチン16の構造の一部を合成。構成するアミノ酸を別の種類に置き換えるなどした結果、高い付着防止作用と毒性の低さを兼ね備え、比較的簡素な工程で合成できるペプチドの開発に成功した。
今後は塗料に配合した際の性能や、自然分解できるかなどを調べる。梅沢氏は「環境に悪いと言われている生物殺傷型の塗料を置き換えられれば」と話している。