大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の場面カット(C)NHK 大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(毎週日曜 後8:00 NHK総合ほか)。今回は、花の井<五代目瀬川>を演じる小芝風花にインタビュー。“伝説の花魁”という物語のキーマンに挑んだ心境を聞いた。
【別カット】美しい…花嫁姿の小芝風花 放送100年を迎える2025年の大河ドラマは、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、ときに“お上”に目をつけられても“面白さ”を追求し続けた人物“蔦重”こと、蔦屋重三郎(横浜)が主人公。親なし、金なし、画才なし……ないないづくしの“江戸のメディア王”として時代の寵児になった快楽児・蔦重は、文化隆盛の江戸時代中期に喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝を見出し、日本史史上最大の謎の一つ“東洲斎写楽”を世に送り出す。脚本は森下佳子氏が担当。江戸時代の版元で浮世絵師の喜多川歌麿や葛飾北斎を世に出したことで知られる蔦屋重三郎の生涯を描く。
小芝が演じる花の井<五代目瀬川>は、吉原の老舗女郎屋・松葉屋を代表する花魁。幼いころに親に売られ、蔦屋重三郎と共に吉原で育った幼なじみで、何でも話せる良き相談相手。蔦重を助け、時に助けられながら、共に育った吉原の再興に尽力する。やがて、とある理由から長らく途絶えていた伝説の花魁の名跡“瀬川”を継ぎ、その名を江戸市中にとどろかすこととなる…。五代目・瀬川は史実に残る“名妓”として知られ、1400両で落籍された出来事やその後の悲運な人生が戯作などで語り継がれることとなる。
改めて演じる瀬川の印象について小芝は「自分の思いや感情を押し殺して人のために、ひいては蔦重のために自分を犠牲にできることは、なかなか真似できることではない。切なくもあるけど、自分の境遇では蔦重と結ばれないという諦めもありながらも、それでも少しでも彼の夢がかなうようにサポートする。身を切る仕事ですけど、それでも瀬川という大きな看板を背負って立っているのは、すごくカッコいいなって思います」とリスペクトのまなざしを向ける。
自身との“共通点”を聞かれると「違いすぎて、比べるのが難しい。普段、色気があるタイプとは口が裂けてもいえないので(笑)」と笑顔で返答。共通点がないからこそ、瀬川という人間を深く研究したといい「ちょっとした仕草や目線というのは今までの役よりも細部にわたって意識しました」と明かす。
役作りに関しては、スタッフ陣のバックアップも大きかったようで「メイクさんも『風花ちゃんをどう大人っぽく、色っぽく作ったらいいんだろう』とすごく考えてくださって、所作指導の先生にも本当に細かく立ち方や所作を確認をさせていただきました」と感謝。全員の努力が結実し、瀬川役は大きな反響を呼んだ。小芝も「瀬川は、本当に複雑な感情を抱えている役なので、ちょっとした心の機微も伝わるよう意識しました」と語り、手応えをにじませた。
9日放送の第10回「『青楼美人』の見る夢は」は、瀬川の身請けが決まり、落ち込む蔦重。そんな中、親父たちから瀬川最後の花魁道中に合わせて出す、錦絵の制作を依頼される。調査に出た蔦重は、自分の本が市中の本屋から取り扱い禁止になり、捨てられていることを知る…というストーリーが展開された。
蔦重に別れを告げ、鳥山検校(市原隼人)のもとへ嫁いだ瀬川。記者から「瀬川の人生は幸せだったと思うか?」との問いを受けた小芝は「難しいですね…」と少し考えながらも「瀬川は自分の幸せよりも人の幸せを願える人。自分がしんどくても、辛くても、自分の望みが叶わなくても、最後まで蔦重が思い描いた世界になるために尽くせる人なので、きっと蔦重が無邪気に『本が売れた!』と笑っている姿や、そのまっすぐさを守るために生きてきた人なんだなとはすごく思いますね」と、その胸の内を代弁していた。