公正取引委員会=東京都千代田区 公正取引委員会は14日、原材料費などが高騰する中でも協議をせずに取引価格を据え置いているとして、電通と日本通運、コーナン商事の3社の社名を公表した。価格転嫁に後ろ向きだとして、取引先との協議を求めるなど改善を促す。適正な転嫁によって、受注側の賃上げ原資確保につなげたい考えだ。
公取委は2023年6月から24年5月までの取引を対象に個別調査を実施。任意の立ち入り調査や報告命令などを通じ、3社が「相当数の取引先」との間で協議をせず価格を据え置いていることを確認した。社名の公表は独禁法に基づく措置。
今回、違反行為を認定したわけではないが、人件費や原材料価格、エネルギー価格などのコスト上昇分について、明示的な協議をせずに従来通りの価格に据え置く行為は、独禁法上の「優越的地位の乱用」などに該当する可能性がある。公取委は取引適正化に向け、3社に対し改善状況について報告を求める。
企業名の公表は今回で3度目。公表数は22年に13社、24年が10社と減少傾向にある。担当者は「(企業数が減少し)価格転嫁は進んでいるが、取引段階が2次、3次とさかのぼるほど価格転嫁の状況は悪くなっている」と指摘した。
電通は「今回の公表を真摯(しんし)に受け止める」、日通は「再発防止を図るとともに取引先と良好なパートナーシップ関係を築いていく」とそれぞれコメントを出した。