園下将大・北海道大教授(左)の研究室を訪れ、国際宇宙ステーション(ISS)滞在中に担当する実験について聞く大西卓哉さん(右手前)=2024年8月(JAXA提供) 国際宇宙ステーション(ISS)の運用終了が2030年に予定される中、2度目の長期滞在に臨む大西卓哉さんは出発前、「ISSに行くのはこれが最後だと思っている。これまでに培った経験、知見、知識の集大成になる」と語った。
退役した米スペースシャトルで活動した若田光一さんらの世代と異なり、大西さんらはISS長期滞在を前提に選抜された「ISS世代」。国際的な月探査「アルテミス計画」が始動し、民間を中心にISS後の宇宙開発計画が議論されるなど過渡期にある中、「ユニークな実験環境であるISSを運用終了まで全力で使い続けるべきだ」と力を込めた。
9年前の前回滞在と異なるのは、日本実験棟「きぼう」などで行われる実験への力の入れ方だ。宇宙飛行士は通常、地上の研究者が考案した実験を手順書通りに行えばよいが、大西さんは世界各国を飛び回る訓練の合間に研究者の元を訪問。実験の目的や手順のコツなどを直接教わったといい、「実験について深く知ることができるだけでなく、モチベーションを高いレベルで維持するのにも役立つ」と手応えを口にした。
一緒にISSに向かう米ロの飛行士3人のうち、2人は初飛行。経験のある先輩としての役割も求められる。大西さんは「私たちの世代が中心になって引っ張っていくという自覚はある。学んだものを全部出していきたい」と話した。