トランプには負けないがデフレには勝てない中国 経済目標「5%前後」トランプ政権が圧力を強めるなか中国はどう経済の立て直しを図るのか【Bizスクエア】

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2025年03月19日 06:30  TBS NEWS DIG

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全人代が閉幕した中国。トランプ政権が圧力を強める中、経済成長の目標を5%前後とした。
トランプ大統領には負けないが、デフレには勝てないかもしれない。そうした中国の実態が見えてくる。

【画像でみる】全人代は「経済」一色 中国経済再生の道険し

中国経済再生の道険し 放置空き家は30億人分?

中国の国会に相当する「全人代」全国人民代表大会政府活動報告の冒頭。李強首相は、去年1年を振り返り、中国が直面している問題を指摘した。

李強首相:
(国内の状況を見ると)経済回復の基盤はまだまだ不安定で、有効需要が不足している。民衆の雇用と所得を増やす圧力に(我々は)直面している。

景気回復の大きな足かせとなっているのが、中国のGDP=国内総生産のおよそ3割を占めるといわれる不動産業の不況。

北京郊外の住宅地。ヨーロッパ風の戸建て住宅が並んでいるが…。かつては高級住宅地の面影が現在は荒れ果てて人が住んでいる気配がない。建設された180戸あまりは開発業者の資金難で販売がストップ。競売にかけられている。

このような建設途中や完成後に放置された空き家は中国の人口の2倍以上が住めるほどだといわれている。

中国国家統計局 賀鏗元副局長:
最も極端な説では、今ある空き家には30億人が住める。でも我々の人口は14億人しかいない。

不動産販売面積は2021年をピークに3年連続で下がり続け、去年2024年は21年から、約46%減っている。習近平政権が2020年に不動産バブルを抑えるため、融資を引き締める政策を実施したことから、開発業者の資金繰りが急速に悪化。物件の引き渡しが滞る恐れから消費者の買い控えも進んだ結果だ。

李強首相:
引き続き、不動産市場の下落や安定回復の推進に力を注ぐ。

地方政府が発行する債券を増発し、在庫住宅の買い上げなどに充てる一方、不良債権処理などのため、約10兆円を大手の国有銀行に資本注入し金融不安を抑えるねらいだ。そして今年政府が最優先で取り組むとした問題が「消費の押し上げと内需の拡大」。

「縮む消費」経済再生の道険し 飲食店倒産 1年間で300万店

中国のコンサルタント会社によると、去年1年間に国内で倒産した飲食店は約300万店にのぼり、過去最多を記録した。

北京郊外にある串焼き料理店。おととし夏にオープンしたが、客足が振るわず去年12月に閉店。リサイクル業者は「なかは肉でいっぱいだ」だという。「売れるのか?」と聞くと、「売れる。1000元(約2万円)くらいだ」という。

厨房機器などを運び出しているのは、倒産した飲食店を専門に扱うリサイクル業者。設備を安く買い取り、別の店に販売している。倒産した店のオーナーは「商売はずっと良くなかった。2年で200万元(約4000万円)弱の損失を出した」「今は不景気なので商売が難しい」

最近倒産する店には共通する特徴があると言う。6年前からリサイクル業を営む男性は「消費が落ち込んでいて、価格が高い店に対するニーズは明らかに減少している」という。

高級店の苦境。背景にあるのは市民の節約志向の高まり。さきほどのリサイクル業者は「100元(約2000円)以内に客単価を抑えても利益を出せる店が生き残っている」という。

飲食店の大量倒産は、高止まりを続ける若年失業率をさらに押し上げる可能性もある。
縮小する消費に危機感を露わにする政府は…

李強首相:
消費を押し上げるための特別行動を実施する。

政府は10年を超える超長期の特別国債のうち、約6兆円分を消費財の買い替え需要の補助金に充てる考えだ。

中国全人代は「経済」一色。指導部の危機感は最高潮

中国で年に1回の全人代が開かれて、李強首相の演説はかなり危機感があるものだった。李強首相の政府活動報告で使われた言葉のトップ5。一番多かったのが「発展」、そして「経済」「推進」ということで去年1位の「安全」「安定」はこの中には入っていない。

――だいぶ変わった。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
大体毎年「安全」を必ず強調されるが、それを強調する余裕すらなくて、トップ5が経済関連のキーワードになっている。

実質経済成長率5%程度の目標ということで前後ということで去年と同じにした。

――そうせざるを得ない事情があるということか。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
一番の原因は去年5%の目標を掲げて、今年1月になって去年実際に成長率5%だと発表してしまった。しかし去年は実際には5%には達していないと思う。しかし表向きでは統計で5%成長したと言ったので、目標通りの成長を実現しているとなると、「今年は?」と聞かれるとやはり5%前後で同じ目標を掲げざるを得ない。

そうしたやや無理な目標を掲げているから、当然のことながら政策を打たなければならないということになって、次のような経済対策の中身が出てくる。財政赤字の上限をGDPの4%前後に拡大する。また特別国債をおよそ10兆円分発行して、大手国有銀行に資本注入するということで、金融リスクに備える。さらに不動産不況への対策として、約89兆円のインフラ再建で土地や住宅を買い取るという。

――大きめの財政対策が出てきたが、評価はいかがか。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
さっき値も5%成長してなかったと言ったが、突っ込んで欲しかった。もし、目標通り5%も成長したとすれば、なぜこの大型の景気対策発表しなければいけないのかという話になる。成長ができなかったので、慌ててこういう大型の景気対策がでできた。ただこれは間違っているところがある。経済はご存知の通り2つあって1つは血流が遅くなっているから、それを流していかなければいけない。もう一つはコレステロールがたくさんあってそれを取り除くと今回の対策、どちらかというとコレステロール対策すなわちストックの課題を解決するための政策が出てきてはいるが、血流をスムーズにするための政策がほとんど盛り込まれていないから、経済は今年はさらに成長するかっていうと、なかなか難しい。

経済再生の道険し 不動産不況 デフレで脱却困難

――30億人分の空き家があるというのは本当か。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
共産党幹部が言うことは、全部正しいことだと思うし、本当かどうか何十億人分ということはない。

――ひと世帯3人としても10億戸の空き家があるということか。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
そう。14億人の人口のとこで、中国の話だから何でも大きい。一つは市場経済が、きちんと機能する前提というのは正しく情報が伝わることです。今の中国でなぜ市場経済や混乱してるかというと情報が正しく伝わってない30億戸あると言われていてもポリッシュメーカー、いわゆる中国共産党の執行部に十分に伝わってないと思う。それでどんどん市場がクラッシュする。

不動産不況の背景にあるのはやはり失業率。特に若年層の必要性が高いということがある。
就業率全体で見ると今年1月は5.2%だが、若年層だけで見ると16.1%という数字。

――良くなってきてるようにも見える。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
4本の折れ線のグラフだが、下の3本がほとんど横ばいで、こんなはずはない。雇用はいつ悪化したのかというと、きっかけはコロナ禍。3年間なぜ悪化したかというと、約400万社の中小零細企業が潰れた。去年300万店舗の飲食店が、閉店になった。飲食店は実は一番雇用の創出に貢献するのではないか。にも関わらずこのグラフが横ばいになっているというのは不自然だが、私が一番注目するのが若者の16歳〜24歳の失業率が16%と言っているが、実は北京大学の先生の推計では46%に達しているといわれている。

――ほぼ半分の人が失業しているということか。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
そうです。去年は1179万人の大学・大学院卒業生がいたが、実際に内定もらったのが、統計で48%。統計でも48%しか内定をもらっていないので、だから明らかに過小評価されている。過小評価されると正しい政策が打たれない。だからボタンの掛け違いがどんどんひどくなっていく一方だ。

――雇用が改善しないと、当然のことながら消費マインドは悪化する。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
消費を控えるから、消費性向が下がっていて、貯蓄性向上があがっている。でも不動産買うと売れないから、今誰も買わない。何を買っているかというと、金を買っている。だからニューヨークの金が1オンス3000ドルを超えた。というのは、背後に中国マネーが入っている。

――そうすると結果として起きていることは、デフレということか。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
もう歴然としたデフレ。ただし、執行部がわかってないので一般中国人のその消費マインドが固まってしまってそこからなかなか抜け出せない。

GDPで触れたのは赤の線で去年、一昨年とマイナス。青い線は全生産者物価からCPIを引くが実質生産者物価が2年続けて上がる。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
もう歴然としたデフレだが、デフレ対策は打たれていない。だからコレステロールを取り除こうとしてはいるが、血流が弱いままだ。

――耐久消費財の買い替えのための補助金ではきかないのか。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
あの政策は、どこが間違っているかというと、経済成長の前提というのは、需要と供給はちゃんと交点を作って均衡しなければいけないが、あの政策は家電メーカーや自動車メーカーといった生産者を助ける政策だ。消費者にはお金がないから、需要が生まれてこないので、ますますその工程が形成されにくいと思う。

――つまり今必要なことは減税であったり寄付金であったり、あるいは社会保障の拡充か。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
一番重要なのが低所得層の社会保障、それから彼らが買い物できるようなクーポンでも何でもいいので配布しなければいけない。ただ常に実現されにくい、もう一つの政治的な背景があるが、なぜかというと、選挙やってない国の政策は個人に傾斜しにくい。そうするとますます需要が生まれてこない。

――一方でストック対策の方はある程度打ったというが、すぐに効果は出るか?

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
効果というよりも、やらなければいけない話であって、例えばインフラ債。各地方政府、特に大都市は地下鉄をたくさんつくっている。なぜこれが必要かというと、地下鉄つくると必ずメンテナンスをやらないと脱線する。橋が落ちてくる。このインフラ債が重要。もう一つは不動産不況が長期化すると不良債権が出てくるから、それ早く引き当てなければいけない。ただ今回引き当てるのが、元金の方じゃなくて、利息の分を引き当ててあげるだけで、まだ問題の本格的な解決にはならない。

――つまり中国の今の不良債権の額からすると、10兆円ぐらいの資本注入では足りないと。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
全然、話にならない。

そうした中で、中国政府はAIやITにもう1度、目を向けようとしている。先月2月17日、習主席が馬雲(ジャック・マー)氏ら著名企業家らで開いた会合にディープシークの創業者梁(リャン)氏も参加していたということが話題になった。その中で李強首相はそのディープシークを念頭に、AI基盤モデルの広範囲な活用を支援するとした。

――経済が苦境なので、民間のIT経営者たちにもう1回協力してくれというサインか。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
サインであり、もう一つ重要なのが、一党独裁の政治だから、共産党への求心力=習近平政権の求心力を高めないといけないので、元々今年は「中国製造2025」完成の年のはずだが、製造業は十分に強くなってない。でもそのときに救世主として現れてきているのがChatGPTに並んだディープシーク。ただこれが政府の助けによってできたものではない。政府が今度、口出しして、手も出すとなると、ディープシークの活力を逆に殺してしまう可能性が高い。国が口出す金も出すとなると「終わりの始まり」が近いのかもしれない。そっとしておいた方がいいと思う。

――習近平政権はトランプ氏との貿易戦争はしのげるが、経済の立て直しは相当難題か。

東京財団政策研究所 主席研究員 柯隆氏:
一番の問題は中国国内の経済の問題をどう解決するか。ものすごく深い話だ。

(BS-TBS『Bizスクエア』 3月15日放送より)

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  • 中国の不動産なんて商売でなく投機寄りな事をやって居たからの自滅でしょ(呆れ)
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