世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の日本本部=2022年9月、東京都渋谷区 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る解散命令請求について、東京地裁(鈴木謙也裁判長)は25日、文部科学省の主張を認め、解散を命じる決定をした。教団信者による不当な献金勧誘行為などについて「類例のない膨大な規模の被害を生じさせた」と指摘。法令違反を理由とした解散命令は3例目で、幹部らが刑事責任を問われたオウム真理教などとは異なり、民法上の不法行為を根拠とした初のケースとなった。
旧統一教会は、決定を不服として東京高裁に即時抗告する方針。高裁で判断が維持されると命令の効力が発生し、教団は宗教法人格を失う。宗教活動を続けることは可能だが、礼拝施設などの財産を処分しなければならないほか、税制上の優遇措置を受けられなくなる。
宗教法人法は、法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる場合などには、裁判所が解散を命令できると定めている。
鈴木裁判長は、教団側への過料を巡る最高裁決定を引用し、民法上の不法行為が解散要件の「法令違反」に該当するとした。その上で、「教団信者による不法行為に当たる献金勧誘などは、約40年の長期間にわたり全国的に行われた」と指摘し、被害規模は1559人、計約204億円に上ると認定した。
教団は2009年に法令順守を強化する「コンプライアンス宣言」を出したが、その後も不法行為は続き、看過できない被害が生じていると判断。献金勧誘などの手法は悪質で、深刻な影響を長期間受けた人が相当数いることから、「著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる」とした。
さらに、献金勧誘などが教理の実践となったり、献金が宗教法人格を利用した税制上の優遇措置を受けていたりすることから、「法人格を与えたままにするのは極めて不適切で、解散が必要だ」と結論付けた。
教団を巡っては、22年7月の安倍晋三元首相銃撃事件で、母親が信者だった山上徹也被告(44)=殺人罪などで起訴=が教団への恨みが動機だと供述。高額献金などが改めて社会問題化し、自民党を中心に政治家との関係も明るみに出た。
文科省は23年10月に解散命令を請求した。地裁は非公開の審問を4回開き、現役信者や元信者を証人尋問するなどして審理を進めていた。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令に関する決定文を受け取るため、東京地裁に向かう教団側代理人の福本修也弁護士(左)=25日午後、東京都千代田区

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令に関する決定文を受け取り、東京地裁を後にする教団側代理人の福本修也弁護士(左端)=25日午後、東京都千代田区