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文部科学省による世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令請求で、東京地裁は25日、教団の解散を命令する決定を出した。鈴木謙也裁判長は教団信者が全国で違法な献金勧誘を繰り返していたことを挙げ、「被害は類例のない膨大な規模で、途切れることなく続いている。解散のほかに適切、有効な手段は想定しがたい」と述べた。民法上の不法行為を理由にした解散命令は初めて。
地裁は決定で、教団信者が1980年代以降、困難な事情を抱える人たちに、「怨恨(えんこん)を持つ霊の因縁」が原因だと伝えて多額の献金勧誘を全国規模で行っていたと指摘。献金者や家族らの生活の維持に重大な支障が生じたとした。
2009年までの被害金額は教団の賠償責任を認めた判決32件の約17億円に加え、和解や裁判外の示談でも176億円超と認定。教団が違法な勧誘行為防止のためのコンプライアンス宣言を出した09年以降は減少したものの、約10億円の被害が認められたとし、合算すると約40年間で約1560人が計約204億円の被害を受けたと算出した。
教団側は「問題は完全に解消した」と訴えていたが、決定は、信者による被害が途切れることなく続いているのに、教団は組織体質や信者の行動の在り方を大きく変える根本的な対策を講じていないと批判した。
これらを踏まえれば、献金勧誘は総じて悪質で、結果も重大だと評価できるとし、宗教法人法に規定された「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」との解散命令要件に該当すると認めた。
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決定は、憲法が保障する「信教の自由」を踏まえた見解も示した。信教の自由の重要性に照らせば、解散命令は「必要でやむを得ない」措置であることが必要だとした。その上で、宗教法人は宗教活動の便宜を図るために法人格を与えられているのに、教団は宗教活動の過程で甚大な被害を生じさせ、さらには違法な献金勧誘によって収入を得て税制上の優遇も受けているとし、「法人格を与えたままにしておくことは極めて不適切。解散命令は必要かつやむを得ない」と結論づけた。
旧統一教会は「誠に遺憾。誤った法解釈に基づいて出された結果であると言わざるを得ず、承服できるものではない」としており、即時抗告する方針だ。【菅野蘭】
東京地裁決定骨子
・旧統一教会の信者は1980年代から全国的に不法行為に該当する献金勧誘を行い、類例のない膨大な規模の被害が生じていた
・2009年に教団がコンプライアンス宣言をした後も、被害は途切れることなく続いている
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・信者の献金勧誘は悪質で、結果は重大。法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為であり、解散は必要かつやむを得ない
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