
ホッキョクグマが日本国内の動物園で見られなくなる?? と心配されるほど飼育数が減り続け、2024年春には28頭になる中、横浜と仙台の動物園で赤ちゃんが誕生。無事に3頭が育っています。公式サイトが発信する動画などは注目を集め、かわいすぎる姿に公開を待ち望むコメントが連なりますが、動物園に取材すると、産まれることも育つことも難しい中、飼育担当者たちが母親の子育てを支え、忍耐と緊張の日々を重ねていることが分かりました。
【写真】生まれて間もないころの様子。「豆粒」みたいに小さいです!!!
神奈川県横浜市の「よこはま動物園ズーラシア」では2024年11月18日、赤ちゃん1頭が誕生。母親は「イッちゃん」(2013年生)、父親は「ゴーゴ」(2004年生)。宮城県の「仙台市八木山動物公園」では2024年12月20日、双子の赤ちゃんが誕生。母親は「ポーラ」(2004年生)、父親は「カイ」(同)です。
ズーラシアではこれまでもいくつものペアが繁殖を目指したものの叶わず、大阪の天王寺動物園で繁殖実績のある2頭が移動。2023年にもイッちゃんは2頭出産しましたが、赤ちゃんは数日で亡くなってしまいました。飼育担当の伊藤咲良(さくら)さんは今回、赤ちゃん誕生を確認した時の気持ちを「ほんの一瞬だけの喜び。その後すぐに、緊張と心配が押し寄せました」と話します。
生まれたてのホッキョクグマの赤ちゃんの推定体重は600gほど。毎日何十回も授乳し、少しずつ大きくなる様子を公式ブログや動画配信でこまめに報告しています。よちよちと歩き出し、親のエサに興味を持つようになり、室内プールではしゃぐ姿も。配信動画にはあえてキャプションをつけないという伊藤さん。「同じように見えるかもしれませんが、少しずつ変化しています。皆さんの感性で成長を感じ取ってほしいと思っています」との理由だそうです。
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赤ちゃんの性別は非公表。体重は4月4日31kgだったのが14日には37kgと、どんどん成長しています。現在は屋外展示場に出る訓練中で、赤ちゃんは、新しい環境や初めて見る遊具はすぐに自ら確認に向かうなど「好奇心旺盛な性格」といいます。
母親のイッちゃんは「赤ちゃんを守るために一貫して気配り目配りをしている」と伊藤さん。2度目の子育てですが「外の練習も始まったばかりでまだ安心はできません」と気を引き締めます。
「体も行動も日に日に成長めざましいので、そんな様子や、今限定の子どもならではの動き、イッちゃんの育児の様子をお楽しみいただきたいです」
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仙台市八木山動物公園のポーラとカイが繁殖を目指して同居を始めたのは2010年です。2019年に初めて出産しましたが、死産。2022年は2頭出産しましたが亡くなり、2023年に誕生した1頭は不慮の事故のため生後13日の命でした。
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今回が4度目の出産。公式ブログでは産室の監視カメラで出産を確認し、鳴き声を聞いた瞬間、「嬉しくて涙が出てきた」とつづられています。翌朝には授乳を確認。一安心したものの、「生育には3つの壁がある」として、「授乳が軌道に乗るまでの3日間の壁」「前回の出産時に超えられなかった2週間の壁」「生後1か月の壁」と表現しました。
その壁をひとつずつ乗り越えて双子が成長する中、ポーラへの給餌再開や、双子の初めての健康診断を実施。性別はオスとメスであることが分かりました。
室内にプールはないので、双子は水に慣れるためトロ舟にためた水に脚をつけるなどすることも。「水を怖がる様子はないですが、母親が警戒しています」と、飼育担当の大崎彩佳さん。生後4カ月ほどになる今でも「まだ安心はしていないですが、『1カ月の壁』を越えたとき少しホッとしました」と振り返ります。
「メスの方が活発で好奇心旺盛だと思います。母親やきょうだいにちょっかいを出したりしています。オスはおっとり、物怖じしない性格というか、動じないというのか…。最初の健康診断の時に毛の一部を剃った方がメスで、体重はどちらも15kgくらい。ポーラのエサも口にするようになりました」
日本で生まれた双子が無事育つのは、2012年に北海道で誕生したメス2頭以来です。性別が異なる双子がどんな風に育つのかにも関心が高まります。公開時期は今後の慣らし訓練次第のため未定ですが、5月下旬から6月を想定いるといいます。
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「その時期しか見られない双子、オスとメスの成長を楽しみにお待ちください」
(まいどなニュース特約・茶良野 くま子)