(左から)有村架純、鈴木亮平(撮影:松尾夏樹) (C)ORICON NewS inc. 2005年に第133回直木賞を受賞した朱川湊人の短編集『花まんま』が、約20年の時を経て映画化され、劇場公開中。物語の舞台は大阪の下町。早くに両親を亡くした兄妹が不思議な出来事に巻き込まれながら、それぞれの生き方と向き合っていく姿を描いている。兄・俊樹役の鈴木亮平、妹・フミ子役の有村架純、今作の兄妹役で初共演を果たした2人に、撮影を振り返ってもらった。
【動画】映画『花まんま』ブライダルメイキングムービー ――この映画の中のお二人が本当の兄妹のようで、とても自然体に見えました。
【鈴木】今回は自分に近い役だったので、力を抜いて自然体でいられた感覚は強かったです。
【有村】キャストもスタッフも関西出身の方が多くて、すごくフレンドリーな現場でした。だからこそ、自分らしくいられたのかなと思います。
――撮影を通じて、お互いに「この人すごい」と思った瞬間はありましたか?
【鈴木】自然体の中に芯の強さが感じられて、すごく魅力的でした。強くて、でもしなやかで。そういったバランスを持ち続けていられるのは本当にすごいことだと思います。
【有村】ありがとうございます。鈴木さんは、ネガティブなものを感じさせない方だと思いました。物事の捉え方や人への眼差しがとても穏やかで、まるで“大仏様”みたいな存在感があるんです(笑)。
【鈴木】大きいしね(笑)。
【有村】本当に、拝みたくなるような安心感があります。
【鈴木】ネガティブな面を見せたくないという気持ちは昔からあって。でも同時に、そういう一面がまったく出ない人って“人間味がない”とも思っていて、そのバランスは難しいです。ただ、役を通してならそういう感情も出せるんです。『孤狼の血LEVEL2』のような作品だと、そういう一面が自分の中から自然と出てきます。
【有村】そういう意味でも、私たちの仕事って本当にありがたいなと思います。自分の中にあるネガティブな感情や、悲しい記憶も、役を通じて昇華できる。過去の経験が演技に活かされると、「あれはこのためだったんだ」と前向きに思える瞬間があります。
【鈴木】本当にその通りで、僕自身もそういうことは多いです。感情を表現するには、自分自身がその感情をしっかり“感じる”必要があるので、極端な感情にも向き合わなければ成立しない仕事だと思います。憎しみや悲しみといった強い感情にも触れるので、自然とそれに向き合う術のようなものが、少しずつ身についてくる気がします。全部がうまくいくわけではないですが。お芝居をしていない期間が何ヶ月も続くと、逆に感情を発散できなくなってイライラしてしまうこともあります。
――俳優という職業ならではの感情との付き合い方ですね。ところで、本作のテーマには“死生観”も含まれていると感じましたが、お二人はどう捉えていますか?
【鈴木】まさに、この映画は“死生観”が大きなテーマの一つだと思っていました。俊樹は両親が亡くなった時のことをよく覚えていて、大切な人とある日突然会えなくなるかもしれないことを誰よりも実感している人間です。フミ子に別の家族ができることは俊樹にとっては大切な妹を失うような感覚でもあって。その葛藤と向き合い、最終的に受け入れていく物語は、俊樹自身の死生観が変化する過程でもあったと思います。
【有村】今、鈴木さんの話を聞いて、「兄やん目線ではそうだったんだ」と気づかされました。私はこの作品で“死生観”というテーマを深く考えることはなかったのですが、兄やんが背負ってくれていたから、深く考えずにいられたのかもしれません。
【鈴木】観る人の人生のステージによっても、受け取るものがまったく変わる映画だと思います。
【有村】私は、「自分のため」ではなく「誰かのため」という想いが、人を強くし、支えてくれる力にもなるということを教えてもらったように思います。フミ子は子どもの頃のある時期から「喜代美さんの分も生きなければ」と思うようになり、使命感のようなもの、それが彼女自身の人生の意味になっていったような気がします。家族や兄妹、そして大切な誰かを思いながら生きることのあたたかさを感じられる物語。気負わずに、気楽に観ていただけたらうれしいです。
【鈴木】そうですね。兄妹や親子、そして広い意味での“家族”が、お互いを深く思い合う――その奥深さを感じ取っていただけたらうれしいです。
■ストーリー
大阪の下町で暮らす二人きりの兄妹。兄・俊樹は、死んだ父と交わした「どんなことがあっても妹を守る」という約束を胸に、兄として妹のフミ子を守り続けてきた。妹の結婚が決まり、親代わりの兄としてはやっと肩の荷が下りるはずだったのだが、遠い昔に二人で封印したはずの、フミ子の〈秘密〉が今になって蘇り…。