マウスで見つかったリンパ球系の樹状細胞(赤い蛍光で識別)。この画像は脾臓(ひぞう)だが、肺や皮膚で多いと分かった(金山剛士・東京科学大准教授提供) 細菌やウイルスなどに対する最初の免疫反応を担う「樹状細胞」は、生み出される過程の違いによって骨髄系とリンパ球系があり、肺や皮膚ではリンパ球系の樹状細胞が大半を占めることがマウスの実験で分かった。東京科学大と金沢医科大の研究チームが7日までに米科学誌サイエンス・アドバンシズに発表した。
樹状細胞は細菌やウイルスを分解し、断片を別種の免疫細胞の「T細胞」に示して排除させる。骨髄にある造血幹細胞から骨髄系の前駆細胞を経て生み出されると考えられてきたが、造血幹細胞からリンパ球系の前駆細胞を経て生じる別の経路があると判明した。マウスと同じ哺乳類のヒトにも同様の仕組みがあるか、解明を目指す。
東京科学大の樗木俊聡教授は「リンパ球系の樹状細胞は、(細菌やウイルスなどの)抗原の濃度が低い場合は免疫反応を起こしにくい」と説明。肺や皮膚は恒常的に抗原に接しているため、リンパ球系の樹状細胞が多く配置され、適度な免疫反応を維持しているとの見方を示した。
一方で、抗原とみられる物質の濃度が高いと、本来は無害な物質に対してもアレルギー反応を誘導しやすく、「ヒトでリンパ球系の樹状細胞が確認されれば、ぜんそくや皮膚炎などを抑える新技術の開発が期待される」と話している。
同大の金山剛士准教授らは遺伝子改変マウスを使い、リンパ球系の前駆細胞だけにあるたんぱく質に赤色蛍光たんぱく質を結び付け、この前駆細胞が樹状細胞に変わっても赤く光って識別できるよう工夫。体の大部分は骨髄系の樹状細胞が大半を占めるが、肺と皮膚では逆にリンパ球系の樹状細胞が多いことを明らかにした。