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化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件で、警視庁公安部と東京地検の違法捜査を認定した東京高裁判決(5月28日)について、警視庁と地検は上告期限の11日、最高裁への上告を断念すると表明した。被告の東京都と国に計約1億6600万円の賠償を命じた判決が12日午前0時に確定した。
警視庁と地検は「ご負担をおかけしたことについて深くおわび申し上げたい」などとするコメントを出し、大川原正明社長(76)らに直接謝罪する意向を示した。
警視庁は鎌田徹郎副総監をトップにチームを作り、違法と確定した逮捕や取り調べなどの問題点を検証し、再発防止策をまとめる。最高検も山元裕史次長検事を責任者として、違法認定された起訴などについて検証する。いずれも結果を公表し、内容次第で関係者の処分を検討するという。
公安部は経済産業省の輸出規制省令について国際基準と異なる独自の解釈で捜査を進めた。大川原化工機の噴霧乾燥器が規制品に該当するとして社長ら3人を2020年3月に外為法違反容疑で逮捕し、地検は逮捕容疑のまま起訴した。
訴訟では、省令解釈が妥当だったかや、噴霧乾燥器が規制品に該当するかを判断する温度実験が適切だったかが主に争われた。
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1審・東京地裁判決(23年12月)は公安部の独自解釈を妥当としたが、高裁判決は「合理性を欠く」とし、「犯罪の容疑の成立に関する判断に基本的な問題があった」と1審よりも違法性の度合いを強めた。
さらに、大川原側から温度実験の不備が指摘されていたのに、公安部と地検は再実験を怠ったとした。元取締役に対する公安部警部補の取り調べも、省令の解釈をあえて誤解させるような偽計的な手法が用いられたとして違法と認定した。
警察庁は11日付で緻密かつ適正な捜査の徹底を求める通達を全国の警察に出した。「公安部門においても、法令と証拠に基づき捜査が行われなければならない」としている。
捜査の検証と謝罪を求め続けてきた大川原社長は記者会見し「支えてくれた人たちにわかるような謝罪をしてほしい」と述べた。警視庁と最高検は内部調査の形で検証を進める方針だが、「オープンな形で進めてほしい」と要望した。【木下翔太郎、北村秀徳、安元久美子】
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