生活保護減額訴訟の上告審判決後、笑顔で「勝訴」などと書かれた紙を掲げる原告ら=27日午後、東京都千代田区 国が2013〜15年に生活保護基準額を引き下げたのは違法だとして、受給者らが減額処分取り消しなどを求めた大阪、愛知の2件の訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は27日、国の対応を「違法」と判断し、処分を取り消した。受給者側勝訴が確定した。国への賠償請求は認めなかった。
裁判官5人中4人の多数意見。宇賀裁判長は賠償も認めるべきだなどとする反対意見を述べた。
最高裁が生活保護基準引き下げを違法と判断したのは初めて。
一連の訴訟は全国29都道府県の地裁に31件起こされ、判断が分かれていた。今回の統一判断が各地の訴訟に影響するのは確実で、いずれも原告側の主張を認める形で終結に向かうとみられる。当時の受給者数は200万人超で、今後、原告以外の受給者にも減額相当分を支給するかが焦点となりそうだ。
訴訟では、物価の下落を根拠とした生活保護基準引き下げ(デフレ調整)と、低所得世帯との格差を是正する措置(ゆがみ調整)の妥当性が争われた。
同小法廷はデフレ調整について「物価変動率のみを直接の指標として用いたことは専門的知見との整合性を欠く」と指摘。厚生労働省の専門部会による検討を経ておらず、厚労相の判断には裁量権の逸脱、乱用があったとして、違法だとした。
一方、専門部会による検証結果を生活保護基準に反映する際に、改定率を2分の1にとどめたゆがみ調整については「統計などの客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性がある」と判断した。
その上で、国家賠償請求については「厚労相が注意義務を尽くさず、漫然とデフレ調整をしたとは認められない」として退けた。

生活保護訴訟の上告審判決に臨む最高裁第3小法廷の裁判官や傍聴人ら=27日午後、東京都千代田区(代表撮影)