
各地で相次ぐクマによる人身被害について。死亡した人の数は過去最多となった2023年度に並びました。一体なぜ、これほど被害が増えているのでしょうか?
すでに昨年を上回り…急増するクマ被害高柳光希キャスター:
2025年度のクマによる人身被害の発生件数を見てみると、北海道・東北を中心に、東京・西日本でも被害が増えていることが分かります。
【クマによる人身被害】出典:環境省速報値
2023年度 219人(うち死者6人)
2024年度 85人(うち死者3人)
2025年度 109人(うち死者6人)
2024年度と比較してみると、▼85人(うち死者3人)に対して、2025年度は10月までに▼109人(うち死者6人)と、この半年間で既に2024年度を上回っています。
また、発生件数が過去最多であった2023年度の▼219人(うち死者6人)と比較すると、2025年度の死者数は、既に同数となっているわけです。
高柳キャスター:
クマによる人身被害は、今や山間だけではなく、市街地でも発生しています。原因として何が考えられるのか、そもそもクマの数自体が増えているということなのでしょうか。
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HBC「クマここ」運営 幾島奈央記者:
地域によっては、確かにクマが増えているという面もあります。ただ、山の中だけで起きている異変というわけでなく、原因が人間社会にあるということを意識していただきたいと思います。
クマは本来、人を恐れている動物です。なので、積極的に人を襲いたくて住宅地にやってきているわけではありません。
ではなぜ、住宅街に侵入してきているのかというところですが、「人間社会の変化」に要因があります。
例えば、人口減少です。昔は、山と住宅地の間に畑や家庭菜園があり、その手前でクマは人の気配を感じ取って、距離をとっていました。ただ人口減少が進み、畑が減り、人の気配も減っていったことで、山と住宅地の距離が近づいていきました。
また、川や空き地などによる緑の通り道が住宅地まで続いているという環境に変化しています。
こうした何十年もかけて変わってきた人間社会の変化によって、クマが入りやすい環境ができてしまっています。なので、「過去30年、うちの地域ではクマが出てないから大丈夫」と思っている方も、「まさか」とは言えない時代に変化したということを意識していただきたいと思います。
井上貴博キャスター:
最近では自治体や猟友会が連携して、クマにGPS付きの首輪をつけるなど個体調査をしていますが、クマとの距離感をどう保っていけばよいのでしょうか。
古坂大魔王さん:
昔は、緩衝地帯の地域を「里」と呼んで、里にクマが現れたとなっても、クマが一番怖がっているわけですから。クマは人間の場所だとはわからないので、クマが住宅街に侵入してくるのも、必然だったのかなと思います。
「クマが可哀想」とか「クマだけを怖がる」という風にせず、僕らは冷静に粛々と人命を優先して、クマが出現したら対処する。でも必要以上には狩らない。そういうバランスを自然界と保っていかないといけないと思います。
高柳キャスター:
北海道だけでなく、クマによる人身被害は全国各地に広がっています。大阪府周辺のツキノワグマの出没状況を見てみます。
2007年〜2011年の5年間、2020年〜2024年の5年間を比較すると、出没エリアの全体も広がっているだけでなく、出没件数も大きく増加しているのが見てとれるかと思います。
こういった状況に対して、これからどのように向き合っていく必要がありますか。
幾島記者:
必要以上に怖がるという状況では、安心して暮らしていけないと思います。多くの場合、クマについての知識が足りないから、怖がってしまうと考えます。知っていただいて、正しく恐れる。そして、クマの事故は防げることを意識していただきたいと思います。
先ほど、クマの出没の原因が人間社会にあるとお伝えしましたが、一方でそれは対策のカギも人間社会にあるということです。
クマ対策の選択肢はたくさんあります。その中でどれを選ぶのかというのは、地域のクマの事情と人の事情を掛け合わせて決めていく必要があります。
地域になぜクマが出没しているのか、まず調べることが大切です。例えば、ゴミなどに引き寄せられているということだったら、その原因を取り除く。畑に引き寄せられているようだというなら、電気柵という対策が考えられるかもしれません。緑の通り道が繋がっているなら、草刈りをするという対策があります。
さらに、地域の人の思いです。例えば、クマの事故は防ぎたいけれども、緑豊かな街の景観も大切にしたいという場合は、ここには緑を残して、通学路には出没しないよう草刈りをするなど、地域の事情に合わせて決めていく必要があります。
なので、どんな街に住み続けたいのか、そのためにどんなクマ対策を選ぶのか。自治体と住民が話し合って決めていく必要があると思っています。
高柳キャスター:
クマが増えているということに関して、2025年9月、法改正が行われました。今までは市街地で銃を発砲することはハンターであっても許されなかったのですが、条件付きで許される状況になっています。
「緊急銃猟」は条件が大きく分けて4つあります。
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▼クマなどが人間の日常生活圏に侵入していること
▼人の命や体の危害を防ぐため、緊急の措置が必要であること
▼銃の発砲以外での方法では、正確で早い捕獲が出来ないこと
▼地域住民に銃弾が到達する恐れがないこと
この4つの条件を満たした上で、警察などによる通行の制限、かつ自治体がハンターに対して緊急の委託をしていれば、市街地であってもハンターはクマを捕獲するために「緊急銃猟」ができるようになるということです。
井上キャスター:
クマの捕獲に関するニュースをみて、他の地域に対して「そんなに駆除するの可哀想じゃないか」と感じる人もいると思います。一方で、地域ごとに適切な対策方法がある以上、この問題は一律に考えてはいけませんね。
古坂さん:
クマの出没は瞬時の判断が必要なので、ハンターが訴えられるというようなことがないように、まずは人命を守ってほしいですね。
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<プロフィール>
幾島奈央
HBC「クマここ」運営
入社1年目から道内各地のクマ出没を取材
映画「クマと民主主義」を制作
古坂大魔王さん
お笑い芸人・プロデューサー
2児の父親として育児の様子を発信
SDGsを推進する活動も積極的に行う