ノコギリカメムシ、脚の器官解明=雌が糸状菌培養、卵に塗り寄生蜂防ぐ―新たな共生の仕組み・産総研など

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2025年10月17日 04:31  時事通信社

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ノコギリカメムシが産卵後、後ろ脚の器官から糸状菌をかき取って卵に塗る(写真上)と卵(写真下中央)が菌糸で覆われ、寄生蜂が近寄れない(産業技術総合研究所提供)
 ウリ科植物の汁を吸うノコギリカメムシは、雌が成長すると後ろ脚に楕円(だえん)形の器官ができ、そこから養分を分泌して糸状菌を培養することが分かった。雌は産卵後にこの菌を脚の爪でかき取って卵の表面に塗り、卵はやがて菌糸で覆われるため、寄生蜂から守られる。産業技術総合研究所と筑波大、森林総合研究所の研究チームが16日付の米科学誌サイエンスに発表した。

 この器官はコオロギの前脚で音を受けて振動する「鼓膜器官」に形が似ており、聴覚を担うとの学説もあったが、違っていた。産総研の深津武馬首席研究員は「これまで知られていなかった共生の仕組みであり、共生の起源や進化を考える上で興味深い」と話している。

 ノコギリカメムシは国内に生息し、キュウリやカボチャの畑で見られることもある。体は焦げ茶色で、腹の縁がのこぎりの刃のような形をしており、体長は1.5センチ程度。カメムシの専門家として知られた東京農業大の立川周二・元助教授が1970年代初め、雌が左右の後ろ脚にある器官から白い物質をかき取り、数珠つなぎに産んだ卵に塗ると、卵が白い糸で覆われる謎の現象を発見して学会発表していた。

 近年になって研究チームが解明に取り組んだ結果、白い物質は特定の数種類の糸状菌で、土壌などの周辺環境からこの器官に付着して増えることが判明。カメムシの卵は寄生蜂に卵を産みつけられて死んでしまうことが多いが、菌糸で覆われると寄生蜂が産卵できなくなることを観察や実験で確認した。

 この器官には約2000個の微小な穴がある。なぜ特定の糸状菌グループだけ培養できるのか、分泌液の成分などを分析する研究を続けている。近縁種も調べ、台湾に生息するマルノコギリカメムシの雌成虫には同じ器官があり、産卵後に糸状菌を塗ることが分かった。 

ノコギリカメムシの雌成虫(写真左)と後ろ脚にある器官(白い部分)。糸状菌を培養して卵に塗り、寄生蜂を防ぐことが分かった(産業技術総合研究所提供)
ノコギリカメムシの雌成虫(写真左)と後ろ脚にある器官(白い部分)。糸状菌を培養して卵に塗り、寄生蜂を防ぐことが分かった(産業技術総合研究所提供)

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