シンガー・ソングライター山下達郎(72)のデビュー50周年を記念して、1983年(昭58)から93年にかけて発売された、MOONレーベルのアルバム6作品が、アナログ盤とカセットで5月から再発売されている。シリーズ「TATSURO YAMASHITA MOON VINYL COLLECTION」の一環として、91年の「ARTISAN」が22日、LPとカセットで再発売された。
この再発盤の発売を記念して、収録曲「アトムの子」のミュージック・ビデオが新たに作成され、公開した。発売当初、ミュージック・ビデオは作成されなかったため「アトムの子」のミュージック・ビデオが制作されるのは、初の試みとなる。
「アトムの子」は、89年に死去した漫画家・手塚治虫さんへのトリビュート・ソング。手塚さんが、代表作の1つ「鉄腕アトム」に託した夢や志は時代を超えていつまでも生き続ける、と歌う、現在でもライブで演奏され続ける山下を代表する1曲だ。
今回のミュージック・ビデオは、クリエイティブスタジオYAR制作のもと、アートディレクションにYOSHIROTTEN、監督にテレビCMや広告、ミュージックビデオの制作を手がける黒柳勝喜氏を迎え制作された。
「当時、鉄腕アトムを見た大人や子供が想像したさまざまな未来、そして心に抱いたワクワク感、夢や未来への憧れを、現代にも共有できるような映像に」というコンセプトの下、全てをCGやアニメーションだけで制作せず、実写と合わせた。
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そのことで、楽曲の持つ「ノスタルジー」と「未来」を同時に表現したミュージック・ビデオに仕上がった。
山下は、TOKYO FMで19日に放送された「山下達郎 サンデー・ソングブック」で、特集「『アルチザン』アナログ盤・カセットテープ再発記念」を企画した。その中で「アトムの子」制作にまつわるエピソードを語った。
手塚さんを「日本の漫画のガリバー、最高峰の方」と評した上で、亡くなった際に「鉄腕アトム」の単行本を買った際に「アトムの子」を着想したと語った。
「私は『鉄腕アトム』の世代なので、単行本を買ったんですよね。読んでいくうちに、あまりに鮮明に覚えているんですよ、いろいろなコマとかセリフとか。そういう自分に驚いて、ふと『我々は、やっぱりアトムの子供だろう』…アトムの子という発想が生まれて。そこが、ちょうど『ARTISAN』最終段階のレコーディングだったんですけども、10日間で徹夜、徹夜で作って1曲目にいれ、『ARTISAN』の顔になりました」
「ARTISAN」は、91年6月18日に発売された山下の通算10作目のオリジナル・アルバム。「ARTISAN(アルチザン)」はフランス語で、日本語では職人を意味する。まさに、そのタイトル通り、音作りや演奏のほとんどを山下が1人でこなし、オリジナリティーあふれる自由な音世界を求めた、アルバムの名にふさわしい作品。「アトムの子」、「さよなら夏の日」、「ターナーの汽罐車」、「Endless Game」など山下の代表曲を多数収録した傑作アルバムだ。
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山下は「山下達郎 サンデー・ソングブック」19日放送回で「ARTISAN」というタイトルを付けた理由についても語っている。
「『ARTISAN』というアルバムのタイトルは、職人という意味で。アーティストというものじゃなくてアルチザン、芸術家じゃなくて職人だという。何で、こういうタイトルを付けたかというと、この時代、音楽業界でミュージシャンのことをアーティストと呼ぶような風潮が始まって。それが、すごく私は嫌で。自分はアーティストじゃない。僕達アーティスト、みたいなのが、すごく嫌いで。じゃあ、私はアーティストじゃなくて、アルチザンだという。もともと、芸術家とかそういうようなものよりも、市井の職人と言いましょうか、ひたずらこの道、何十年みたいな人の仕事に、ものすごく憧れた。私自身が祖父も織工だったりしますので、職人芸というものに、ものすごく憧れていたので、アルチザンという言葉に魅力を感じました。そういうタイトルにしました」
「TATSURO YAMASHITA MOON VINYL COLLECTION」は、5月発売の83年「MELODIES」は7位、6月発売の84年「BIG WAVE」9位、7月発売の86年「POCKET MUSIC」は10位と非常に好調だ。アナログ盤もカセットテープも全て完全生産限定盤となる。全6タイトル購入者には、応募抽選特典として豪華収納ケースが当たるキャンペーンも実施される。
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