日米のデータを初めて共同解析=「ニュートリノ振動」実験
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2025年10月23日 07:31 時事通信社

日本と米国でそれぞれ素粒子のニュートリノ実験を行っている二つの国際研究グループは、人工的に発生させたニュートリノが長距離を飛ぶ間に種類が変わる現象の測定データを持ち寄り、初めて共同で解析したと発表した。成果の論文は22日付の英科学誌ネイチャー電子版に掲載される。
ニュートリノは3種類あり、種類が変わる現象は「振動」と呼ばれる。ニュートリノがわずかな質量を持つ証拠となり、発見した梶田隆章・東京大卓越教授は2015年のノーベル物理学賞を受賞した。しかし、3種類の質量の数値は軽重の順番さえ分かっておらず、今回の共同解析で特定はできなかったが、より精密に解析できるようになったという。
ニュートリノ振動と質量は、宇宙誕生時に現在ある物質と同じだけ存在した「反物質」が消えた謎を解明する上で重要。原子核の陽子や中性子を構成する素粒子のクォークについては、物質と反物質が対称ではないことが小林誠・高エネルギー加速器研究機構特別栄誉教授と益川敏英・京都大名誉教授(21年死去)によって示され、08年のノーベル物理学賞を受賞した。両研究グループはニュートリノについても解明を目指している。
日本では茨城県にある大強度陽子加速器施設(J―PARC)で発生させたニュートリノを、295キロ離れた岐阜県のスーパーカミオカンデの検出器で測定。米国ではイリノイ州のフェルミ国立加速器研究所から発射したニュートリノを、810キロ離れたミネソタ州の検出器で測定している。種類の変わり方は、飛ぶ距離によって異なる。今回は日本の10年分、米国の6年分のデータを共同解析した。
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