
東北大学は12月1日、新種の有毒クラゲを発見したと発表した。宮城県の仙台湾で見つかったクラゲで、カツオノエボシ属の新種。伊達政宗の兜を飾る三日月にちなみ、学名「Physalia mikazuki」(ミカヅキノエボシ)と名付けられた。
世界中の熱帯から温帯の海域に広く分布する有毒クラゲとして「カツオノエボシ」が存在する。青く透明な浮き袋と長い毒触手を持ち、刺されると激痛が走り、患部が長時間腫れるため、危険生物として知られている。日本では、カツオノエボシ属「Physalia utriculus」が沖縄から相模湾にかけて分布しているが、東北地方では同族のクラゲが正式に記録されたことはなかった。
東北大学などの研究チームは2024年7月、仙台湾の蒲生海岸でカツオノエボシ属とみられる個体を採取。解析したところ、既知のカツオノエボシ属の種類とは異なる新種であることが分かった。この報告は、東北地方でカツオノエボシ属を発見した最初の記録となる。
また、Physalia utriculusの分布はミカヅキノエボシと重なることが判明。これは、これまでも沖縄から相模湾には2種のカツオノエボシ属が生息していたが、今回の発見まで誰も気が付かなかったことを示唆している。
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研究チームは、ミカヅキノエボシがどのように東北地方に漂流してきたのかをコンピュータシミュレーションで分析。最近の高い海面水温の異常によって黒潮が北上したことで、ミカヅキノエボシを仙台湾に運んだ可能性があることが明らかになった。
「解析の結果、近年黒潮が約2度(約100km)北上し、22〜24年の間に東北沿岸の海面水温が2〜4℃上昇していたことが分かった。これらの変化が、南方に生息するミカヅキノエボシを仙台湾へと運んだと考えられる。今回の発見は、近年の異常な海況変動によって新たにこの地域へ漂着した現象である可能性が高い」(研究チーム)
クラゲ類の出現や分布の変化は、生態系だけでなく、人の生活や安全にも影響を与える可能性がある。そのため研究チームは「今後も動向を注意深く見守る必要がある」と指摘している。
この研究成果は、海洋生物学の専門誌「Frontiers of Marine Science」に10月30日付で掲載された。
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