【インタビュー】YOSHIKIが見据える“アーティストの未来” 生成AI時代とリハビリの一年を振り返る

5

2025年12月17日 12:00  オリコンニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

オリコンニュース

YOSHIKI、2025年を振り返るインタビュー
 首の手術後のリハビリに励みながら、ロサンゼルスを拠点に世界のエンタメ業界の“地殻変動”を体感し、世界各国を飛び回った今年のYOSHIKI。生成AIとの共存、チャリティ活動、そして「驚きの発表」まで――数々のニュースを生み出した一年について、自身の言葉で振り返ってもらった。

【写真】サウジアラビアの古墳が真紅に染まる…YOSHIKIが開催した世界遺産での公演の様子

■何十年後も“アーティスト”という職業があるように

 インタビューの冒頭、今年を振り返ってほしいと伝えると、YOSHIKIは少し考えてから「やっぱりリハビリの1年でしたね」と切り出した。昨年、3度目の首を手術し、治療を続けながら作曲やさまざまなプロジェクトの締め切りに追われる日々。その一方で、視線は常に「エンターテイメント業界全体」に向けられていた。

 現在、年間の約8割はロサンゼルスで過ごしているというYOSHIKI。映画や音楽のビジネスが集中する“ハリウッドのど真ん中”に身を置くからこそ、ここ数年のエンタメ業界の変化を強く感じている。「映画業界、音楽業界含めて、地殻変動みたいなものがすごく伝わってくる」と話し、リハビリを続けながら、これから自分がどこへ向かうべきかを考え続けた1年だったという。

 その“大きな変動”のひとつが、生成AIだ。YOSHIKIは今年も、サンフランシスコで開かれた世界最大級のAIクラウドイベント『DREAMFORCE 2025』に参加し、スピーチを行った。「この数年で、AIを否定しきれないところまできたと感じています。じゃあ共存するにはどうすればいいか。音楽家の権利を守ること、つまり“今後もみんなが音楽を学びたい、そして作りたいと思える仕組み”をどう構築していくかを真剣に考えないといけない」と語る。

 YOSHIKIは「日本だとその発想はあまりないと聞いていますが、アメリカにはフェアユース(公正利用)という考え方があって、教育などに使われるものについては、一定の条件のもと著作権が控除されることもあります」と説明し、「生成AIをめぐる問題も、大きくはフェアユースとトランスフォーマティブユース(変容的利用)か、この2つの課題があるわけです」と続ける。「アメリカでは生成AIを作る企業と原盤権を持つレーベル、著作権を管理する音楽出版社などが“どこまでがフェアユースなのか、どこからがトランスフォーマティブユースなのか”を法廷で争っていますが、最近になってお互いが歩み寄りライセンス契約にいたる動きが出てきています」。

 そのうえで、自身の立場についてこう語る。「自分はAI業界とも繋がってますし、もちろん音楽業界にもいますし、映画業界およびファッション業界にも身を置いています。そう言った状況の中で、どの様に業界のエコシステムを守っていけるのかを常に考えています」。テクノロジーと音楽、映像が交わる接点に身を置くからこそ、「十年後、何十年後も“アーティスト”という職業がきちんとあって、そのアーティストが“曲を作りたい、演奏したい”と思える環境を、今の僕らが作っていかないといけない」と強調する。「流れに任せてしまうと、アーティストという職業自体がなくなってしまうんじゃないかという恐れも正直あります」と危機感を口にしながらも、AIと向き合いつつ音楽業界の未来に向かって動いていることを話した。

■YOSHIKIが寄付を行う際に“公表”をする理由

 YOSHIKIは今年も多くの国際的な賞や栄誉に名を連ねた。米『TIME』誌の「世界で最も影響力のある100人(TIME100)」に日本人ミュージシャンとして歴史上初めて選出されたほか、サウジアラビアのユネスコ世界遺産「ヘグラ遺跡」で日本人初となる公演も開催した。世界的な評価が集まる1年だったが、「達成感はまだ実感していない」と言い切る。「光栄なことがたくさんあったのは事実です。でも、ただ“次にどこに向かうんだ”ということのほうが、今の自分にとっては大きいです。音楽業界が今後どうなってしまうんだろうという感覚が常にあるんです」。

 多くの支援活動にも取り組んだ一年でもあった。子どもの頃に父を亡くしたことは、今も心の奥に大きな傷として残っていると言い「自分のアイデンティティがわからなくなってしまうときがある。なぜ生きているのかわからなくなることも」と率直に明かしながら、それでも前に進める理由のひとつとして、支援活動の存在を挙げる。「チャリティ活動は、自分の活動の活力のひとつになっています。こういった活動をしていないと自分は生きていけないほど、心に傷を負っているから」。

 その姿勢は、近年の取り組みからも見て取れる。昨年1月に発生した石川・能登半島地震に際しては5000万円を、日本赤十字社を通じて被災地支援として寄付した。

 同年4月の台湾地震では、台湾赤十字組織へ1000万円を寄付。今年1月には、米ロサンゼルスで発生した大規模な山火事の災害救援として、総額50万米ドル(約7700万円)を寄付している。

 直近では、11月に香港高層住宅火災の被災者支援、そしてタイおよびインドネシアの洪水被災者支援として、あわせて20万ドル(約3000万円)を寄付するなど、国や地域を越えた支援を現在も継続して行っている。

 YOSHIKIは、寄付を行う際に積極的に“公表”するように心がけている。その姿勢に対して「なぜ公表するのか」との疑問の声も寄せられるが、「公表することで支援の輪が広がる。自分1人の力は小さくても、賛同者が現れれば何倍、何十倍にもなる。それがひとつ。また、“誰がどこで助けを必要をしているか”が明確になることも重要だと思っています」と説明する。「批判の声はもちろん傷つく」とも打ち明けながら、「寄付を決断するたびに、ある種の覚悟を持って実施しています」と話した。

■YOSHIKIはおせちを食べるのか 来年は大きな発表も!?

 今年は、ミュージシャンの訃報や病気のニュースも相次いだが、自身の健康については「首のリハビリをかなり長く続けている」とし、メンタル面でも睡眠の専門医や精神科の医師にも相談しながら活動を続けていることを明かした。

 YOSHIKIは「自分は傷つきやすいし、壊れやすく、まわりからは不健康なイメージに見られていますが、今は健康志向ですね」と笑いながら、来年の展望にも触れた。「まだ形になっていないものも含めて、いい意味で3つぐらい重要な発表が控えています。どのタイミングで発表できるかはこれからですけど」。

 詳細は伏せつつも、「努力していけば、必ずどこかのタイミングでいいことが起こると信じているんです。自分に破天荒なイメージを持っている方も多いと思いますし、実際にそういう所もありますが、自分の中では、とことん音楽を愛し、とことん芸術に向き合い、とことん業界のことを考えているつもりです」と語り、大きな発表が今後控えていることを匂わせた。

 インタビューの最後に「おせち料理は食べますか?」と聞いてみると、「そういった時期に日本にいれば食べたいですね。日本食全般が大好きですから」と顔をほころばせる。「活動が一区切りついたら、日本で生活ができればと思っています。海外では常に“戦っている”感覚なので」と言うその表情には、遠く離れた故郷・日本への確かな愛着がにじんでいた。

このニュースに関するつぶやき

  • そこはさ、最後に「ファンのみんな、どう思う?」で締めくくらないと面白くないなー
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

ニュース設定