知床観光船「KAZU I(カズワン)」の沈没事故で、釧路地裁は運航会社「知床遊覧船」社長、桂田精一被告(62)を禁錮5年の実刑とした。判決は、事故当日に出航中止の指示を怠ったのは偶然の判断ミスではなく、「安全を軽視する平素からの態度が形となって表れた」と厳しく非難した。
桂田被告は経営トップでありながら、船の安全を統括する運航管理者も兼務。しかし、要件である「3年以上の実務経験」がないのに選任されるなど、同社のずさんな運航実態はこれまで相次ぎ発覚していた。
判決は、被告が同社の安全管理規定に反し、事務所を離れることが常態化していたと指摘。運航管理者に求められる出航判断には選任以降ほとんど関与せず、経験の浅い船長は同業他社に倣って判断せざるを得なかったとした。
被告は公判で、出航の可否や航路について船長と協議して決めたが、船長が独断で航路を変更したと説明していた。これについて判決は「運航に関する会話をしたこと自体も甚だ疑わしい」と一蹴。必要な従業員の数もそろっておらず、「十分な安全管理体制の確保を怠ったのは他ならぬ被告だ」と断じた。
判決は沈没の経緯として、船首甲板部のハッチのふたが完全に閉まらない不具合があり、大量の海水が流入したと認定した。被告は公判で、不具合を知らなかったと主張したが、「ハッチの機能不全を認識していなくても、過失責任を問うことは何ら不当とは言えない」と退けた。
法廷で反省や謝罪の弁を述べた被告に関し、「自己の責任の重さを真摯(しんし)に受け止めているようには見受けられず、表面的との評価を免れない」と厳しく批判した。