
最新のJNNの世論調査で高市内閣の支持率が前回調査から4.1ポイント下落し、65.9%となり去年10月の高市内閣発足以来、最も低い数字となった。日本初の女性総理が誕生して8か月。何が起こっているのだろうか。
発足から8か月後も高支持率維持は「過去3例」のみ内閣発足後、過去最低と言っても多くの内閣は発足直後の支持率が最も高く、その後徐々に下がっていくのが通例だ。2000年以降の内閣を見てみると、内閣発足から8か月が経過し、依然60%以上の高い支持率が維持できたのは小泉内閣、第2次安倍内閣、岸田内閣の3例しかない。
ほとんどの政権は8か月も経過すると、政策判断、人事、不規則発言、閣僚の不祥事などが原因で大きく支持率を落としている。その中でも第二次安倍内閣、岸田内閣は政権発足直後の支持率よりも8か月後のほうが高いという稀な内閣だ。高市内閣は発足直後と比べこの8か月でトータル15ポイントほど支持率が下落しているが、何か大きな失策があり支持率が急落するということもなく、依然65%以上の高い支持率を維持できていることは異例と言える。なお若年層ほど支持率が高く、高齢層ほど低くなるというこれまでの傾向も変わらない。
一方で、先月調査から4.1ポイント下落したことについて、ある高市内閣の現役閣僚は「中傷動画問題と国会が止まったことが影響したのではないか」と分析する。
総裁選挙や衆院選挙で高市総理の公設秘書が他陣営を誹謗中傷する動画の作成に関わったのではないかという週刊誌報道が国会で取り上げられた。高市総理は秘書の陳述書を理事会に提出することで「それをもって本件に関する詳細な問いへの答弁としたい」と野党に呼びかけたが、それがむしろ火に油を注ぎ、野党の委員会や本会議欠席へと繋がった。
これまでの中傷動画めぐる総理の対応について「納得できない」人は「あまり納得できない」と「全く納得できない」をあわせると51%で「納得できる」の43%を上回っている。
ただこの総理対応の評価については、年代別に分析すると傾向があり、内閣支持率同様に若い世代ほど総理対応に「納得する」人の割合が高く、年齢層が高くなるにつれて「納得する」人は減っていく。30歳未満だと「納得できない」割合は3割に満たないが、60歳以上で見ると、「納得できない」人は6割以上になる。
高市総理が言及した「秘書の陳述書」は11日現在、提出される見通しがたっていない。
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現役閣僚が分析する「支持率が下がった要因」のもう一つが「国会空転」だ。衆院議員の比例定数を45削減する法案と東京の首都機能を代替できる「副首都」の整備を推進するための法案について、与党側の職権で強権的に審議入りしたことに野党が反発した。6月29日以降、野党議員が委員会や本会議を欠席する中、時間だけが経過するいわゆる「空回し」が行われるなど国会は不正常な状態となった。(7日に参院、9日に衆院が正常化)
とくに議員定数削減法案については野党の反発は大きく、その大きな理由は「議員定数削減ではなく野党削減法案になっている」(6月30日国民民主・玉木代表)からだ。
実際、5月29日に発表された国勢調査の結果をもとにJNNが今年2月に行われた衆議院選挙の結果を当てはめる分析を行ったところ、比例45削減の場合、各政党の議席は以下のように変化する。
▼自民 67→57 (10減)
▼維新 16→11 (5減)
▼中道 42→31 (11減)
▼国民 20→12 (8減)
▼共産 4→3 (1減)
▼れいわ 1→0 (1減)
▼参政 15→9 (6減)
▼みらい 11→8 (3減)
自民党は、今年の衆院選で「名簿不足」を起こし、獲得議席が本来の票数よりも14少なくなっていたため、定数削減の影響を受けづらく、小幅な減少にとどまる。一方で、維新は比例の議席がおよそ3割減少するほか、国民と参政は4割減、れいわは議席を失う試算となった。与党側も議席を減らすことになるが、玉木氏が言及するようにそもそも議席数の少ない野党のほうが影響が大きいことがわかる。
今回のJNN世論調査ではこの「議員定数削減」法案については6割近くが賛成している。さらに野党の委員会欠席には7割以上が「理解できない」と回答しており、どちらかといえば野党にとって分が悪い結果となっている。この国会空転が高市内閣の支持率に影響したかどうかについては、限定的かも知れない。
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ただこの国会空転により、議論すべき政策がストップしてしまった影響は大きい。とりわけ消費税減税や給付付き税額控除の仕組みを議論する「社会保障国民会議」は当初、6月末に中間とりまとめを行うはずだったがその議論までも滞ってしまった。(7月13日に再開予定)
「1日国会が空転をすると3億円経費がかかる」(自民・村井英樹議運筆頭理事)ことも考えれば、1日たりとも無駄にはできないはずだ。7日、高市総理と維新・吉村代表は党首会談を行い、議員定数削減法案をいまの国会での成立を見送ることを確認した。野党側が要求する総理出席の集中審議も今国会中に行うことを約束し、国会は(土日を除き)9日ぶりに正常化することになったが、与党は秋の臨時国会に改めてこの法案を提出する見込みで、今回と同様に混乱する可能性がある。
9日、国会が正常化されたことで、政府・与党が最優先で成立を急いでいるのが皇族数を確保するための皇室典範改正案である。女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ案と旧宮家の男系男子を養子として皇族に迎える案が柱となっている。
とくに国民の賛否がわかれているのは後者で、この養子案について5月のJNN世論調査では「賛成」41%、「反対」35%だった。
さらに与野党の会議で議論にならなかったその養子に男子がうまれた場合、その子に皇位継承権をもたせるかどうかについては「現行の皇室典範の規定が適用される」(6月26日木原官房長官)として皇位継承資格を持つとの認識を示したことに一部の野党が“これまで議論しておらずだまし討ちだ”(立憲・水岡代表)などと反発している。
この養子の子の皇位継承について、最新の世論調査では「賛成」29%、「反対」22%、「どちらとも言えない」45%。さらに、今国会でこの皇室典範を改正すべきかどうかを聞いたところ、「賛成」24%、「反対」27%、「どちらとも言えない」46%と、いずれも半数近くが判断をきめかねていることがわかる。
残された課題はまだある。
女性皇族が結婚後も皇室に残ったとして、その夫や子どもの扱いはどうするのか。改正案では一般人のままとされていて、同じ家族の中で妻(母)は皇族で皇室の戸籍に当たる「皇統譜」への登録が継続され性はもたず、夫や子は一般人で戸籍に記載されるといういびつな状態となる。実生活上の不便さが生じる可能性があるため政府案では妻(母)は皇統譜からは離れず一般人と同じように住民基本台帳法を適用するとしたが、一部の野党は“これまで議論がなかった”と反発している。
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こうした状況下で皇室典範改正案は10日、衆院の議運委員会で3時間の審議で終了、その日のうちに衆院本会議で可決された。
憲法1条には天皇の地位は「国民の総意に基づく」と明記されているが、国民の理解が進まぬ中、今国会での成立の公算が大きくなっている。後世に禍根を残さぬよう、国民を置き去りにしない深い議論が必要である。
TBS政治部・世論調査デスク 室井祐作
【7月JNN世論調査の結果】
●高市内閣の支持率は65.9%(先月よりも4.1ポイント下落)。不支持率は30.8%(先月より3.4ポイント上昇)。
●政党支持率は、
自民 32.3%(3.2↓)
維新 3.2%(1.2↑)
国民 2.7%(1.2↓)
中道 4.5%(2.6↑)
立憲 1.4%(2.0↓)
参政 3.9%(0.3↑)
公明 0.9%(1.4↓)
みらい1.4%(0.4↑)
共産 2.2%(0.2↓)
れいわ0.5%(0.8↓)
保守 1.0%(0.1↓)
社民 0.2%(0.2↓)
その他0.2%(0.8↓)
支持なし41.8%(3.9↑)
●国民会議で自民党が提示した食料品の消費税を2027年4月から2年間、8%から1%に引き下げる案について「賛成」55%、「反対」35%
●与党が国会に提出した「比例45削減する」法案について「賛成」58%、「反対」22%
●皇室典範をいまの国会で改正することについて「賛成」24%、「反対」27%、「どちらとも言えない」46%
●旧宮家の男系男子が養子として皇族となった場合、その子に皇位継承資格を与えることに「賛成」29%、「反対」22%、「どちらとも言えない」45%
●高市総理の秘書の中傷動画報道をめぐり高市総理のこれまでの対応について「十分納得できる」9%、「ある程度納得できる」34%、「あまり納得できない」28%、「全く納得できない」23%
●与党の国会運営に反発した野党が委員会などを欠席していることについて「十分理解できる」5%、「ある程度理解できる」22%、「あまり理解できない」36%、「全く理解できない」35%
●選挙期間中の偽動画、誹謗中傷の拡散を防ぐために、法律で「収益化の停止」を「義務づけるべき」は60%、「義務づけるべきではない」は23%
【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。7月4日(土)、5日(日)に全国18歳以上の男女2959人〔固定822人、携帯2137人〕に調査を行い、そのうち35.0%にあたる1037人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話463人、携帯574人でした。インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。今後とも世論調査にご理解、ご協力おねがいします。

