ローソンが「高齢者半数」の街に出店 「ハッピーローソンタウン」3カ月で見えたこと

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2026年09月30日 11:11  ITmedia ビジネスオンライン

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高齢化が進む街にローソン、どうなった?

 ローソンは6月4日、「ハッピーローソンタウン」の1号店を大阪府池田市の伏尾台に開業した。3カ月余りがたち、売り上げは当初の計画を大きく上回っている。高齢化が進む街で、店はなぜ支持され、どう使われているのか。ローソン開発本部の氏本和敏部長に、成果と課題を聞いた。


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 ハッピーローソンタウンは、店舗を地域コミュニティーのハブ(拠点)とし、世代を超えた人のつながりを生むことで、街の再創生を目指すローソンのまちづくり構想だ。自治体や他企業と連携しながら、2030年に全国100カ所への展開を目標に掲げている。


 同店は、池田市とKDDIが連携して運営する24時間営業の店舗で、阪急デリカ(大阪府池田市)のベーカリーや総菜、野菜などの生鮮品、医薬品を含む約3900品目を取りそろえる。イートインスペースにあたる「コミュニティスペース」は小上がり席を含む64席を用意し、約100冊の絵本を自由に読めるコーナーも設けた。


 AIドローンや防災サイネージ、衛星通信の「Starlink」も常設し、有事には被害状況の把握や通信手段の確保に活用する。平時は、AIドローンが平日の午後3時ごろから約1時間、小学校の下校時間に合わせて自動で飛行し、上空から子どもたちを見守る。


 池田市の伏尾台は、1970年代に開発された丘の上にあるニュータウンだ。同市によると、人口は最盛期の約7000人から現在は4700人未満に減り、高齢化率は47%を超える。なぜ、ローソンはこの街に店を出したのか。


●なぜ「オールドニュータウン」なのか


 ハッピーローソンタウン構想は現在、オールドニュータウン(開発から年月がたち、住民の高齢化が進んだニュータウン)の再活性化を軸に据える。こうした地域は交通の便が悪く、買い物もしづらいほか、住民が集まる場所も減っている。当面は同じ課題を抱える団地や集合住宅、ニュータウンへの出店を進める考えだ。


 出店にあたっては、地域住民から困りごとを聞き取り、必要な機能を考える。池田伏尾台店では、開業の約1年前から住民との対話を重ねたという。


 どの地域でも、「地域課題への対応」「災害支援」「コミュニティー」の3つを重視する。その上で、交通が不便な地域にはコミュニティーバス、医療へのアクセスが悪い地域にはオンライン診療を導入するなど、地域ごとの課題に応じて機能を追加していく。


 ローソンでは「地域共生コンビニ」という出店形態も展開しており、スーパーが撤退した地域で、日々の買い物を支えている。地域の課題を解決するという理念は共通だが、ハッピーローソンタウンは買い物に加えて、防災やコミュニティーまで担う点が異なる。


 同社はハッピーローソンタウン構想を、CSR(企業の社会的責任)ではなく、CSV(社会課題の解決と事業の成長を両立させる考え方)に近いものと捉える。「事業性を担保しながら、地域の人が集まるハブになる。この両方を目指さなければいけない」と氏本氏は語る。採算面では、通常の店舗と同じ社内基準を満たすことが前提だ。


●売れる理由は「まとめ買い」と「買い足し」


 ローソンによると、売り上げは当初の計画を大きく上回って推移しているという。具体的な数値は非公表だが、日販(1店舗1日当たりの売上高)は、ローソンやナチュラルローソンの平均(62万5000円、8月時点)と大きくは変わらない水準だそうだ。


 野菜をまとめ買いする客も多く、客単価は通常店よりも高い。加えて、滞在中の買い足しも単価を押し上げているという。9月下旬の平日に筆者が訪れた際も、コミュニティスペースにいた女性客が会話の合間に売り場へ戻り、追加で買い物をしていた。


 週末と平日では、売り上げにも大きな差がある。住宅地の店でありながら、週末には地域外からも、近隣のローソンにはない生鮮品や阪急デリカのベーカリーを目当てに客が訪れている。開業当初は、こうした「道の駅」のような使われ方が目立った。話題性が落ち着いた現在は、地域住民の日常使いが中心になりつつある。


 客層は時間帯で入れ替わり、午前や平日の日中はシニア層や主婦層、夕方は下校途中の学生、休日はファミリー層が多い。全体では、高齢者の利用が多いという。


 売れ筋は生鮮品やベーカリー、ソフトクリームだ。クレーンゲームも想定以上に利用されており、放課後には子どもたちが集まる。


 ただ、生鮮品などの比率が高い分、弁当など通常のコンビニ商品の比率は他店より低く、その周知が課題だという。行政などの相談に応じる「Pontaよろず相談所」も、利用が一気に広がる性質のサービスではなく、まずは認知を広げながら、利用状況を検証している段階だ。


●売れ筋ほど「コンビニの仕組み」に乗らない


 好調の一方で、課題も見えてきた。最も大きいのは商品の調達だ。地域の困りごとに応え、スーパーに近い役割まで担おうとすると、通常のローソンの品ぞろえだけでは足りない。


 通常の商品は、AIによる発注や基準在庫に基づく仕組みによって店舗に届くが、生鮮品や地場の商品は「仕入れ」と呼ぶ個別の発注で調達する。業者への連絡はファクス、支払いもアナログで行っている。


 加えて、ローソンの看板を掲げる以上、本部は商品が自社の基準を満たしているか、一つずつ確認しなければならない。「これまでに築いた仕組みとは相反する部分がある。どう両立させるかが、今の大きな課題だ」と氏本氏は語る


 全国規模の仕組みはコンビニの強みだが、この店では客を呼ぶ品ぞろえほど、その強みを生かしにくい。生の肉や魚も、ローソン単独で扱う仕組みがないため、池田伏尾台店では冷凍の肉や魚で対応している。冷凍肉は、地域共生コンビニ「ローソン龍神村西店」(和歌山県田辺市)での実績を基に導入した。


 8月には、2号店となる「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」(東京都日野市)が開業。同店でも開業前に住民との対話に時間をかけたうえで、食品スーパーのコモディイイダ(東京都北区)と提携し、精肉を含む生鮮品をそろえた。今後も地域ごとに提携先と品ぞろえを検討していく。


 池田伏尾台店と日野高幡台店は、ローソンを複数店舗経営し、同社と付き合いの長い加盟店オーナーが運営している。住民との関わりや地域の取り組みにも本部と一体で臨む必要があり、店舗数を拡大するのは簡単ではないと氏本氏はみる。


●成功の物差しはこれから作る


 筆者が店を訪れた午後3時ごろ、店内のコミュニティスペースでは中高生のグループや仕事をする人や、会話を楽しむ女性らが過ごしていた。店で買ったアイスコーヒーを手に30分ほど過ごす間に、学校帰りの子どもたちが加わり、利用者はさらに増えた。


 コンビニに30分以上もいる客はまれだ。しかし、この店では宿題をする小中学生や、絵本を読んだり木のおもちゃで遊んだりする幼い子ども、お茶を飲みながら話し込む大人の姿が見られる。居心地がよく、時には寝る人もいたという。


 同社がこの空間を「イートイン」ではなく「コミュニティスペース」と呼ぶのも、そのためだ。食事を済ませたら早めに席を空けるのが通常のコンビニだが、この店では長く過ごしてもらうことをむしろ歓迎する。「食べたらすぐ出て行ってくださいという形では、人が集まらなくなる」と氏本氏は語る。


 人が集まる機会も積極的につくっている。これまで、ナイトシアターや健康講座などのイベントを開き、約300人が参加した。


 地域拠点としての価値を、売り上げ以外のどんな物差しで測るか。社内でこれから具体的に検討していく段階だという。「まちづくりの歴史は、ローソンの50年の中にはない。手探りの部分は課題であり、伸びしろでもある」(氏本氏)


 目指すのは、5年後に若者が帰ってきたくなる街だ。店の採算を保ちながら、近くにローソンがあるから若い家族も不便なく暮らせる、と思える街にしたいという。売り上げに占める若い世代の利用割合が増えることも、一つの指標になりうるとする。


 2030年に100カ所という目標に向けて、UR都市機構や自治体、団地を持つデベロッパーからの問い合わせも増えている。


 生鮮品から総菜、薬、絵本、クレーンゲームまでがそろい、子どもから高齢者まで世代を超えて人が集まる様子は、かつての商店街にも重なる。「タウン」の名が示すのは、こうした姿なのかもしれない。


(カワブチカズキ)



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