「印税が入ってきますよ」 悪質な「自費出版ビジネス」の被害者は救済されるか?

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2013年12月04日 15:50  弁護士ドットコム

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自分の書いた本を出版してみたい。そんな夢を持っている人は少なくないだろう。しかし、そうした夢につけこむような商法が問題となっている。


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「印税が入ってくるので、支払いにあてられます」などと語り、小説や詩集を自費出版するようしつこく勧誘したのは、特定商取引法違反(不実告知など)にあたる――このような理由で、出版社の日本文学館が9月中旬、消費者庁から新規勧誘などの業務停止命令を受けたのだ。



消費者庁の発表によると、同社はホームページや雑誌で呼びかけて、自作の小説や詩のコンテストを年間30回ほど開催。応募者に電話をかけ、自費出版や添削サービスの受講をしつこく勧誘していた。



ある応募者には「入賞しましたよ」と言いながら自費出版を勧めていた。応募者が「お金がないから」と断ろうとしても、お金が「戻ってきますから」とくり返し言って、出版のための費用として21万円を振り込ませた。だが、報道によれば、同様の勧誘を受けて出版した人の印税は、最高でも数万円にすぎなかったという。



実際にはたいして印税が入ってくる見込みがないのに、それを隠して、自費出版を勧めていたとすれば悪質だ。出版社を信じてお金を振り込んだ人は、返金してもらうことができるだろうか。また、自費出版をめぐるトラブルに巻き込まれないためには、どのような注意が必要なのだろうか。消費者トラブルにくわしい岡田崇弁護士に聞いた。



●「不実告知」があれば返金は認められる


「消費者庁の処分理由によると、本件の出版社は電話勧誘の際、印税が入ってくる見込みがないのに『お金が戻ってきますから』と消費者に対してウソをついています。



これは、特定商取引法上の『電話勧誘販売』で、サービスの提供を受ける人の判断に重大な影響を及ぼす内容について、不実のことを告げるのは『不実告知』なります。



『不実告知』があれば、自費出版や添削サービスの契約の申込みを取り消すことができ、代金を返金してもらうことができます(特定商取引法24条の2)」



●自費出版トラブルに巻き込まれないためには?


「自費出版をめぐるトラブルに巻き込まれないために、知っておいてほしい点は、『本が売れるとは限らない』という点です。



多額の宣伝費をかけた本でも、売れるとは限りません。自費出版の場合、購入可能な書店も限られており、宣伝費も乏しいことからすれば、売れる可能性は非常に低いのが現実です。



印税収入を得る目的で自費出版を行うと、出版費用すら賄えない可能性が高いことを理解しておく必要があります」



●電話を受けて有頂天にならないこと


プロが書いた、大手出版社の本でも赤字というケースは少なくない。自分の作品がそれらに勝てるという自信がある人は出版をすればいいと思うが……。岡田弁護士は次のように述べ、実際に出版を決める前に、冷静な計算が必要だと呼びかけていた。



「もちろん、自分の創作したものを形に残したいという目的で自費出版をするのであれば、構いません。



本件では、『入賞しましたよ』ということを言われて気持ちが動いたようですが、応募者側としては、このような電話があったときに有頂天になるのではなく、どのような費用負担が生じるのかを出版社に確認し、そのような費用負担をしてもなお、出版したいかどうかを充分に吟味するべきです」


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
岡田 崇(おかだ・たかし)弁護士
大阪弁護士会・消費者保護委員会委員(平成18年・19年度副委員長)、日本弁護士連合会・消費者問題対策委員会幹事、関西大学法科大学院実務家教員(消費者取引法)
事務所名:岡田崇法律事務所
事務所URL:http://www.okadalaw.jp



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  • 本当に売れると判断するならお金を出させるのではなくて、むしろ出版社の方が原稿料などの諸費用を出します。
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