アントニオ猪木氏のビンタによる「闘魂注入」 ファンがケガしたら罪に問われる?

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2013年12月24日 12:21  弁護士ドットコム

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北朝鮮への渡航などで何かと話題のアントニオ猪木参院議員だが、猪木氏には「闘魂注入」という有名なファンサービスがある。イベントなどで、希望するファンのほおにビンタを見舞うという内容だ。ファンにとっては、特別な意味があるようで、猪木氏にビンタされた人はみな、「ありがとうございます!」と感謝する。


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だが、プロレスラーの猪木氏によるビンタは、一般人にとってかなりの衝撃だろう。見ている側からすれば、「意図しないところに、誤って当たったらどうなるのだろうか」と心配になってくる。もし、闘魂注入によってファンがケガをしてしまったら、猪木氏はなんらかの罪に問われるのだろうか。小野智彦弁護士に聞いた。



●ビンタの「方法」と「程度」が問題となる


「まず、猪木氏によるビンタによって、ケガをしたということであれば、基本的には傷害罪に当たります」



小野弁護士はこう切り出した。



「傷害とは、人の生理的機能に障害を与えることをいうのが判例の立場ですので、猪木氏のビンタによって、鼻血が出たとか、青あざができたとか、吹っ飛んで尻餅をついたときに尾てい骨にひびが入ったとか、そういう場合なら『傷害』になります」



では、猪木氏は、傷害罪として罪に問われるのか?



「それは、そう簡単ではありません。『闘魂注入』は、ファンが望んで受けていることです。つまり、ビンタされることに、ファンが同意しているのです」



同意があれば、他人を叩いても違法性がないと言えるのだろうか?



「承諾に基づいてなされる行為自体が、その『方法』および『程度』において、社会的に相当な行為であれば、違法性はなくなる、というのが基本的な考え方になります。



猪木氏のビンタですが、気合いを入れてもらうためにビンタをしてもらうというのは、古来からある方法ですので、その『方法』においては社会的に相当といってもいいでしょう。問題は、『程度』ですね」



●本気のビンタなら危険な行為だが・・・


程度については、どのように考えればいいのだろうか。



「昔、極真空手の有段者が、ある女性を助けようとして、加害者に後ろ回し蹴りを喰らわして死亡させた事案で、『それは行き過ぎ』との判決がでたことがあります。



同様に、元プロレスラーである猪木氏が本気で張り手をしたら、おそらく普通の人はケガをするでしょう。もしかすると、人の生命に危険を及ぼすかも知れません。



しかし、猪木氏も『プロ』でしょうから、加減はしているものと思います。これまでそのような大きな事故がないということも、加減していることを裏付けていると言えます。したがって、猪木氏のビンタは、程度の面でも社会的な相当性があるといえるでしょう」



小野弁護士はこのように述べ、「ビンタが社会的相当性の範囲を越えない限り、ファンがごく軽いケガをした程度なら、猪木氏が、刑法上の傷害罪に問われることはないといえるでしょう」と結論づけていた。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
小野 智彦(おの・ともひこ)弁護士
浜松市出身。H11.4弁護士登録。オフィスは巣鴨。手品、フルート演奏、手相鑑定、カメラ等と多趣味。手品の種明し訴訟原告代理人、ギミックコイン刑事裁判弁護人、雷句誠氏の漫画原稿の美術的価値を求めて小学館を提訴、等の代理人を務めた。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。
事務所名:豊島法律事務所
事務所URL:http://homepage2.nifty.com/tomo-ono/lawyer/



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