最近人気の「定期借地権付き」マンションって何? 普通のマンションと何が違うの?

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2014年01月31日 19:20  弁護士ドットコム

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「都心に住みたい、だけど費用は抑えたい」。そんな消費者が増える中で、「定期借地権付きマンション」に注目が集まっている。一般分譲マンションと比べて、販売価格がかなり安い物件が多いからだ。


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昨年、大手企業が販売した東京都心の「定借付」の高級マンションも、すぐに完売した。通常なら億ションが建つような好立地のマンションも、「定借付」だと数千万も安く購入できるとあって、人気を呼んだようだ。



「定期借地権付き」のマンションは、普通のマンションに比べてどんな違いがあるのだろうか。不動産にくわしい瀬戸仲男弁護士に聞いた。



●一定期間(50年以上)で「解体」される


「定期借地権付きマンションと、普通の土地の所有権付きマンションとの違いは、土地を『所有』したいのか、それとも、土地を『利用』できればよいと考えるのか、ということです。



定期借地権付きマンションの特徴は、土地部分がマンションを買った人の所有にならず、単に借りているという状態になることです。



定期借地権は、存続期間が50年以上と長めに設定されますが、契約更新ができないなどの特徴があります」



契約更新が不可能ということになると、もしかして50年後には何も残らないということだろうか?



「そうですね。むしろ、50年後には建物(マンション)を解体し、土地を更地にして地主に返さなければなりません。その際には解体費用も必要となります。



そういった特徴があるので、マンションの資産価値は時間とともに下がります。特に、残余期間が短くなってきた際には、買い手が付かなくなる可能性もあるでしょう」



●ランニングコストはかかる


そんな条件が付いているマンションなのに、なぜ人気があるのだろうか?



「人気の理由は『価格が安い』ということです。一般の土地所有のマンションに比べて、30%〜40%程度安い価格設定です。即日完売の物件もあります。



土地を所有せずに借りるだけなので、初期投資が安くてすむのが、定期借地権付きマンションの最大のメリットです。



ただし、その一方で、土地の使用料である『地代』や、50年後にマンションを解体するための『解体積立金』などのランニングコストが、余分に発生します」



●見通しが立ちにくい側面も


50年というのはずいぶん先の話に思えるが……。購入したマンションの価値は、将来どんな風に推移するのだろうか?



「実は、『定期借地権』というルールが導入されたのは平成4年のため、50年が経過した定期借地権付きマンションはまだ存在しません。そのため、こうしたマンションの価値が年月とともにどんな風に変化するのか、先が予測しにくくなっています。



先ほど述べたとおり、定期借地権付きのマンションは利用できる期間に制限があり、資産価値も時間とともにどんどん減っていきます。



そうなると、30年を経過したころには、修理箇所が増えてくるにもかかわらず、わざわざ費用をかけて修理することに同意する居住者が減っていくかもしれません。



もし、修理されずに不便・不快なマンションになれば、しだいに空室が増えて、スラム化していく可能性も考えられます」



そうした事態を防ぐ手立ては、講じられていないのだろうか?



「スラム化しないための一つの方策としては、たとえば、定期借地権の一種である『建物譲渡特約付借地権』を利用するという手があります。



これは、特約がついていない一般の定期借地権に比べ、存続期間が30年以上と短く設定される代わりに、期間満了時に建物(マンション)を地主に買い取ってもらえるという借地権です。この建物譲渡特約付借地権の場合は、借地期間の満了時にマンションを解体しなくてよいですし、居住者が住み続けることを要求すれば、借家として住み続けることができます。



ただし、この特約は、最初の段階で地主が同意しなければ成立しません。また、何よりも、30年以上経過して高齢になったとき、つまり安定が必要なときに、所有者ではなく賃借人になってしまうという不安定さを受け入れなければなりません。この点は悩ましい問題です」



●「土地価格」のゆくえにもよる


初期投資が安い「ワケ」は、こうした点にあるようだ。瀬戸弁護士は、定期借地権付きのマンションを、どう評価しているのだろうか?



「私個人としては、あまりお勧めできません。



現在、安倍政権の下で『アベノミクス』と呼ばれる経済政策が進行中ですが、これが成功すれば、長きにわたったデフレから脱却してインフレに移行します。



インフレで土地価格が上昇すれば、土地所有権付きマンションの資産価値は上がり、地主から要求される『地代』も上昇します。そうすると、結局は土地所有権付きマンションの方がお買い得ということにもなりかねません。



マンション購入は、一生に一度の買物かもしれません。『安物買いの銭失い』の格言にもあるとおり、安いからといって飛びつくのではなく、将来のこともよく考えて、専門家に相談するなどしながら慎重に選択しましょう」


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
瀬戸 仲男(せと・なかお)弁護士
アルティ法律事務所代表弁護士。大学卒業後、不動産会社営業勤務。弁護士に転身後、不動産・建築その他様々な案件に精力的に取り組む。我が日本国の伝統・文化をこよなく愛する下町生まれの江戸っ子。
事務所名:アルティ法律事務所
事務所URL:http://www.arty-law.com/



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