「無罪の可能性は十分」 風営法違反に問われたダンスクラブ「NOON」の判決は?

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2014年03月29日 13:00  弁護士ドットコム

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DJが流す音楽に合わせて踊る「ダンスクラブ」が、風営法違反(無許可営業)で摘発されるケースが相次いだことを受け、「ダンス規制のあり方」を問う論争が巻き起こっている。国会でも規制について議論される中、注目が集まっているのが、大阪の老舗ダンスクラブ「NOON」をめぐる裁判だ。


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「SAVE THE NOON」訴訟と支援者たちが呼ぶ裁判では、「NOON」の元経営者の男性が、無許可で客にダンスをさせたとして、風営法違反(無許可営業)の罪に問われている。検察側は「8年間も違法営業を続けており悪質だ」として、懲役6カ月、罰金100万円を求刑した。



一方、弁護側は「ダンス営業規制は表現の自由等を侵害し、違憲無効である」「そもそも規制対象となるダンスはさせていない」などとして、無罪を主張している。



裁判は1月に結審し、あとは4月25日の判決を待つばかりという状況だ。弁護団長をつとめる西川研一弁護士に、裁判のポイントを振り返ってもらった。



●風営法のダンス営業規制は「憲法違反」


「今回の訴訟では、風営法上の『ダンス営業規制』が時代遅れであり、表現の自由や営業の自由、そして適正手続に反し、憲法違反であると主張しています」



摘発の根拠となっている風営法が「違憲」という主張だ。どうして、そう言えるのだろうか。西川弁護士の話は、ダンス営業規制が始まった終戦直後にさかのぼる。



「風営法としてのダンス営業規制は終戦直後、売買春の温床とされた『ダンスホール』を規制するために始まりました。そもそもの目的は『売春防止』だったわけです。



今では、そのような営業実態はなくなっています。さらに、売春を防止するための法律は別に制定されています。



つまり、ダンス営業規制は、実質的な処罰根拠を失い、死文化しているのです」



裁判では、憲法学者や刑法学者、そして風営法が専門の社会学者などの識者が、弁護側の証人として登場。さらに、立法当時の資料なども提出し、こうした実像を明らかにしたのだという。



「NOONをはじめとするクラブは、芸術的・文化的な表現を発信し、いわゆる『クラブカルチャー』の形成と発展に貢献する場です。



その存在は、憲法上の権利である表現の自由や営業の自由により保障されるべきものでしょう。死文化したダンス規制は、こうした憲法上の権利を不当に制約するもの。つまり、憲法違反なのです」



●「男女の享楽的なダンス」とはなんなのか?


裁判のもう一つの論点が、規制対象となる「ダンス」とは何かという問題だ。



西川弁護士によると、検察側は、「風営法上のダンス」とはなにかという点について、「男女の享楽的な雰囲気の醸成、性風俗のびん乱等社会の風俗に影響をおよぼす可能性があると社会通念上認められる舞踏」だと主張している。



とても抽象的な表現で、これだけでは、実際にどんな「舞踏」が風営法の規制対象になるのか、よくわからない。そこで、具体的には何がダメなのかという話になると、内偵・摘発を担当した捜査官の間でも考えがバラバラ。そんな実態が、裁判で明らかになったという。



「ある捜査官は、大阪府警本部の資料の表に従って、『ステップは〇、腰をくねらせるだけなら△、リズムを取るだけの軽い上下運動は×』などと証言しました。



また、別の捜査官は、(何がダメかは)摘発現場にいる警察官が個別判断するものだと言いました。



なかには、『音楽に合わせて楽しくリズムに乗って踊っているような状況があれば、もうそれで享楽的』という証言までありました」



これに対して、摘発当日にいた客は「純粋に音楽を楽しんでいた」「男女が密着して踊るようなことはなかった」などと証言したという。



西川弁護士はこうした証言を踏まえて、次のように問題点を指摘する。



「本来ならば、ある行為を『犯罪』とする以上は、『どんなダンス』がダメなのか、何が『ダンスをさせる営業』にあたるのかについて、明確に決まっているべきです。ところが、実際はそうでなかったということです。



また、実際に現場で『男女間の享楽的雰囲気』があったかどうかについても、裁判で具体的な証言はなく、摘発に当たっても、ほとんど考慮されずにいたことが明らかとなりました」



●「検察官の主張は、十分に立証されていない」


いずれも、ダンスをめぐる今後の議論に大きな影響を与えそうな論点だ。この訴訟の行く末を、弁護側はどのように見ているのだろうか。



「風営法上の『ダンス』がなされていたという検察官の主張は、公判を通じて十分に立証されることはなかったと、私たちは評価しています。また、風営法のダンス営業規制自体が憲法違反であることの立証も成功しています。公判の内容を振り返れば、裁判所が無罪判決を出す可能性は十分にあるでしょう」



西川弁護士はこのように期待を込め、「ここまで来られたのは、協力してくれた方々のおかげ」と感謝の言葉を口にしていた。



日本の「ダンス文化」の行く末を占う裁判。4月25日の判決に注目だ。


(弁護士ドットコム トピックス)



【取材協力弁護士】
西川 研一(にしかわ・けんいち)弁護士
大阪弁護士会所属。「SAVE THE NOON」訴訟に関わると共に、ダンス規制法改正運動にも尽力。音楽とそれにまつわるクラブカルチャーを愛する。
事務所名:響総合法律事務所



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  • 結局頭の固い専門バカが法曹界には多いということ。現状や実態にあわない70年前の法律文を後生大事に・・未だに国親思想の少年法もそう。
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