日本の調査捕鯨が苦境に立たされている。南極海での調査捕鯨をめぐって、オランダ・ハーグにある国際司法裁判所(ICJ)が、現在の方法の捕鯨を中止するよう命じる判決を言い渡したからだ。
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日本政府は「深く失望しているが、判決に従う」とコメント。今年末より行う予定だった次回の南極海での調査捕鯨を中止し、さらに、北西太平洋で行っている調査捕鯨についても、実施はするが規模を縮小することを決めた。
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今回の裁判は、オーストラリア政府が2010年に「年間数百頭もの捕鯨は科学的ではない。実態は商業的な捕鯨だ」として、訴えをおこしたことがきっかけで始まった。今回の敗訴をうけ、日本の捕鯨やクジラ食文化はどうなってしまうのだろうか。国際法にくわしい作花知志弁護士に聞いた。
「国際司法裁判所での判決は、日本敗訴というものでした。
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ただ、国際司法裁判所の判決には、国内の裁判所の判決のような『強制的執行力』がない、という特徴があります。
つまり国際司法裁判所の判決は、敗訴した国に、強制的に従わせることができないのです」
何の処罰もされないということだろうか?
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「国際司法裁判所の判決に敗訴国が従わなければ、外交的な制裁や経済的な制裁を受けることは考えられます。ただ、法律上の力として、強制的に判決が実現されることはないのです」
つまり、今回の判決をうけて、どこかの国や組織の船が南極海に現れ、日本の調査捕鯨を強制的にストップさせる、なんてことはないわけだ。
逆に、そのような判決に、どんな意味があるのだろうか。
「強制的執行力がない点をとらえて、国際法は法なのか、という議論がされることもあります。
しかしながら、国際社会を、国内と同じように、『力が支配する世界』から『法が支配する世界』へ変えていくために、国際司法裁判所の判決が尊重されることが望ましいことは言うまでもありません」
作花弁護士はこのように述べる。日本は判決に従うべきだということだが・・・。
「今回の判決で敗訴した日本は、その後の行動によって、国際社会を『法が支配する世界』に変えていくための役割を担っているとも言えるわけです」
結論としては、日本は調査捕鯨を止めるべき、という話なのだろうか。
「今回の国際司法裁判所の判決は、現段階における日本の捕鯨(調査の計画や実施方法)は調査捕鯨とは言えない、というものでした。
したがって、日本としては、国際捕鯨条約における調査捕鯨に合致する範囲内で捕鯨を行う、という手段があります」
その範囲ならば捕鯨も可能ということなので、いきなり日本の食卓からクジラ肉が消え去るということはなさそうだが・・・。
今後の「調査捕鯨」は、どんな形で行われることになるのだろうか。作花弁護士は「現在、日本政府は判決内容を精査していると思いますので、その評価と今後の対応が注目されます」と話していた。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連裁判員本部、日弁連国際人権問題委員会、日本航空宇宙学会、国際人権法学会などに所属
事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/
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