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埼玉の県立高校につとめる女性教諭が、勤務先の学校の入学式を欠席し、代わりに自分の子どもが通う別の高校の入学式に出席していたことがわかり、波紋を呼んでいる。
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報道によると、この教諭は今年度に入学した新1年生のクラス担任。日程が重なった自分の子どもの入学式に出席する意向を学校側に伝え、休暇を認められていた。教諭は「入学式という大切な日に担任として皆さんに会うことができないことをおわびします」という文書をつくり、式の当日、副担任を通じてクラスの生徒全員に配ったという。
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このことについて、ネット上で賛否両論が巻き起こり、県教育長が校長会で注意をうながすという異例の展開を見せた。しかし、教諭はあらかじめ決められた手続きにしたがって、休暇を取得しているようにみえる。労働法的な観点でみた場合、教諭の行為は、どこか問題があるのだろうか。労働問題にくわしい波多野進弁護士に聞いた。
「教員の責任感や倫理観という道義的な観点から離れて、この教諭が勤務先の入学式当日に年次有給休暇(年休)を取得したという前提で、『法的』に問題があるかどうかを検討します」
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波多野弁護士はこう前置きをしたうえで、次のように話す。
「最高裁の判例は、『年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である』としています。
そこから考えると、自分の子どもの入学式に出席するため、勤務先の入学式当日に年休を取得したという教諭の行為は、『法的に問題ない』と考えられます」
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入学式といえば重要な節目の日だが、そんな日でも、年休を申請すれば必ず認められるものなのだろうか?
「年休取得は、基本的に認められるべきものです。
ただし例外的に、労働者の有給休暇取得が『事業の正常な運営を妨げる場合』には、使用者が取得を拒否できるという制度があります。『時季変更権』と呼ばれるものです」
今回、教諭は実際に休みをとったわけだが、時季変更権が認められる条件の「事業の正常な運営を妨げる場合」とは、いったいどういう状況なのだろうか?
「一概には言えませんが、事業の規模・内容や、その労働者の担当作業の内容・性質、代替人員確保の難しさ、労働慣行など、さまざまな事情を考慮して、『事業の正常な運営を妨げる場合』にあたるかどうかが決まることになります」
おおまかに言うと、労働者がその日に行う仕事が事業にとって不可欠なうえ、代替要員の確保が困難な場合にのみ、有休取得の拒否が認められるというルールになっているようだ。
今回については、どうだろうか?
「新1年生を学校に迎え入れる入学式に、そのクラスの担任教諭が出席するのは当然予定されていることです。
入学式は新1年生と教諭がはじめて顔合わせをし、今後の学校生活のスタートさせる極めて大切な式典で、代わりのきかないものです。そして、その業務を担当できるのは、クラス担任の教諭だと思われます。
したがって、新1年生のクラス担任の教諭が、入学式当日に出席しないことは『事業の正常な運営を妨げる場合』にあたるといえるでしょう」
波多野弁護士はこのような見解を示している。
ただ、今回は、クラス担任の女性教諭の休暇申請が認められていることからすると、そもそも学校は「時季変更権」を行使しなかったのだと考えられる。そうなると、波多野弁護士が最初に指摘したように、女性教諭はきちんとした手続きを踏んでいる以上、「法的には問題なかった」といえるのだろう。
(弁護士ドットコム トピックス)
【取材協力弁護士】
波多野 進(はたの・すすむ)弁護士
弁護士登録以来10年以上、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇や残業代にまつわる事件に数多く取り組んできている。
事務所名:同心法律事務所
事務所URL:http://doshin-law.com
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